4. 電波時計

4.1. CHU と 「Gadget Box」

CHU とは、オタワ近郊にあるカナダ短波時報局 (Canadian shortwave time station) のことであり、合衆国の WWV に類似した組織ですが、両者にはひとつだけ重要な 違いがあります。CHU は英語とフランス語で時報を提供するだけでなく、 古い "Bell 103" (300 baud) モデムトーンを使って一分間隔で時報を放送 しているという点です。このトーンはデコードが非常に容易であるため、 Bill Rossi はモデム(デコーダ)を使うまでもなく、短波ラジオとサウンドカードで 解析できることを発見しました。CHU からの信号を受信できるなら、これは 最も安上がりな電波時計として使えます。短波の受信状況は一日のうちに 何度か変化しますが、Bill によると、日に二回 (朝と夕方) 周波数を変えれば ほぼ 24 時間受信できるそうです。CHU の放送は 3.33, 7.335, および 14.670 MHz です。

詳細は Bill Rossi のウェブサイト http://www.rossi.com/chu/ をご覧ください。ソースファイルは著名なアーカイブサイトからも入手できます。 CHU の時報サービスについては、 http://www.nrc.ca/inms/time/ctse.html を見て下さい。

「Gadget Box」というプランが NTP ウェブサイトにあります。これは安価な 300 baud のモデムと適当な短波ラジオを使って CHU の時報をデコードするという ものです http://www.eecis.udel.edu/~ntp/ntp_spool/html/gadget.htm。 このプランでは専用の両面プリント基盤に関する PostScript 図を掲載しています が、基盤自体は自分で作らなければなりません (もしくは、作ってくれる人を 探す必要があります)。

ntpd には CHU レシーバ用のドライバ (type 7) が含まれて います。これは「Gadget Box」のようなモデムを使うか、もしくは Sun SPARCstation (あるいはその互換オーディオドライバを持ったマシン) のマイク 入力に直接音声を入力することで動くようになっています。

4.2. WWV と「Most Accurate Clock」

Heathkit 社の「Most Accurate Clock」というのを聞いたことがある方もいる でしょう。これは WWV の時報を受信してデコードし、オプションのシリアルポート を使ってコンピュータに接続するというものです。Heathkit は随分まえに このキットの販売を止めてしまいましたが、1995年まではこの時計の完成品版の 販売を続けていました (現在は販売していません)。(時計以外の製品を 含めた) Heathkit 社へのノスタルジアを書いたページが http://www.heathkit-museum.com にあります。Heathkit 社自体は 今も健在であり、学習用の教材を販売しています。詳しくは http://www.heathkit.com をご覧ください。

Dave Mills によると、Heathkit 社の「Most Accurate Clock」に関する特許は もうすぐ期限切れになるので、もしかするとそのクローンをシングルチップ IC として売り出す会社が出てくるかもしれないそうです。

NTP ウェブサイトには DSP プログラム (およびそれを解説した PDF ファイル) があります http://www.eecis.udel.edu/~mills/resource.htm。 これは短波ラジオと TAPR/AMSAT DSP-93 という (現在では販売していない) DSP キットを使って WWV 時報をデコードするものです。このキットは Texas Instruments の TMS320C25 DSP チップをベースにしたものです。TAPR のウェブサイト http://www.tapr.org には 自社開発の DSP プログラムに関する情報が豊富にあります。

ntpd パッケージには IRIG-B と IRIG-E タイムコードの ドライバ (type 6) も含まれています。 これは Sun SPARCstation の /dev/audio を利用するものですが、それ以外のシステムにも移植が可能だそうです。 WWV では IRIG-H タイムコードが使われています。

WWV は NIST により運営されており、ウェブサイトは http://www.boulder.nist.gov/timefreq/index.html です。 このサイトには "Special Publication 432" という文書があり、これには 時間と周波数についての記述があります。 http://www.boulder.nist.gov/timefreq/pubs/sp432/sp432.htm. WWV は 2.5, 5, 10, 15, 20 MHz で放送しています。

4.3. GPS と「Totally Accurate Clock」

GPS 信号には正確な時間も含まれていて、GPS レシーバのなかにはシリアル ポートを備えたものがあります。ntpd には各種 GPS レシーバ用のドライバが 同梱されています。1PPS 機能 ("One Pulse Per Second", これはかなり高精度 を要する場合に使われるものです) は、通常特別なインターフェイスを使って コンピュータに繋ぐ必要があります。

TAPR (Tuscon Amateur Packet Radio) には TAC-2 ("Totally Accurate Clock" の 略) というインターフェイス用のキットがあります。これはシリアルポートに 差し込んで GPS レシーバと繋ぐためのインターフェイスであり、1PPS の出力を もつ GPS レシーバならどんなものでも使えます。またこれには回路基盤に 直接載せることができるベアボードモデル (bare board model) もあります。 詳しくは http://www.tapr.org/ のウェブサイトをご覧ください。(1999年6月時点での) 値段は、GPS レシーバ抜きで 140 ドル前後です。このキットには筐体や回路基盤 取り付け用の部品は含まれていません。

(別の章で述べた) CHU 「Gadget Box」 も 1PPS 信号のインターフェイスとして 使うことができます。NTP ウェブサイトにはこれに関する説明が記載されて います http://www.eecis.udel.edu/~ntp/ntp_spool/html/pps.htm

4.4. 長波タイムシグナル: DCF77, MSF(Rugby), WWVB

長波放送局では、キャリアのオン・オフ切り替えに よってタイムシグナルを放送しています。放送局ごとに独自の コード方式を使っており、その概要は NTP ウェブサイトに掲載 されています。http://www.eecis.udel.edu/~mills/ntp/index.htm (このページの 最後のほうです)。ドイツの DCF77 では 77.5kHz、イギリスの MSF (ここは 所在地にちなんで "Rugby" とも呼ばれています) とコロラドの WWVB は どちらも 60 kHz で放送されています。

WWVB の受信感度は一定していませんが、放送出力を段階的に上げようという計画が あります。その進捗状況については NIST のウェブサイトをご覧ください http://www.boulder.nist.gov/timefreq/wwvstatus.html

シリアルポートに接続できる安価なレシーバがヨーロッパで入手可能だそうです。 ntpd にはいくつかの MSF レシーバ用のドライバが含まれて います。

合衆国の多くの会社が WWVB レシーバを組み込んだ比較的安価な時計を 販売しています (これには壁掛け用の時計もいくつか含まれています)。 しかし、著者の知る限り、コンピュータに接続できるのは 2 機種しか ありません。

Ultralink Model 320 という時計は (1999年6月時点で) 120 ドル程度ですが、 これはシリアルインターフェイスと ASCII 文字によるコマンド セットが使えるようになっています。それゆえ、プログラムを作るのは それほど難しくないはずです。これはシリアルポートから 1 mA の電源を 取ります。アンテナはコンピュータから 100 フィートまで離すことができ、 シグナルが得られない場合に備えて組み込みの内蔵クロックで時間を測定し 続けることができます。Ultralink ではベアボーン版も 80 ドル程度で 販売しています。これは "BASIC Stamp" シリーズのマイクロコントローラで 動くように設計されています。詳しくは次のウェブページをご覧ください。 http://www.ulio.com/timepr.html.

Arcron Technology は、シリアルポートをオプション装備した卓上時計を約 80 ドル で販売しています。これには Windows 用のソフトウェアも含まれています。 詳しくは次のウェブページをご覧ください。 http://www.arctime.com.