ビットマップとは点の集合です。ビットマップフォントもまったく同じように表現できます――点の集合ということですね。それゆえに出力デバイスとは切っても切れぬ関係にあって、特定の解像度で利用することしかできません。75 dpi のビットマップスクリーンフォントは、1200 dpi のプリンタで印刷しようと、やはり 75 dpi なのです。
ビットマップフォントは二種類に大別できます。ひとつはビットマッププリンタフォントで、dvips の作成する pk フォントはその一例です。もうひとつは X やコンソールが利用するビットマップスクリーンフォントで、通常は bdf ないし pcf の拡張子がついています。後者は文字のサイズを変更できず、印刷にも適していないため、そういう短所が問題とならない端末画面やコンソール、あるいはテキストエディタで使用するのが一番です。
Type1 は Adobe が開発したフォント規格で、Adobe の PostScript 規格に準拠しています。よって Linux との相性もよく、X や Ghostscript が対応しています。PostScript フォントといえば、昔から UNIX で印刷するときの定番フォントですね。
UNIX 向けの Type1 フォントは、afm(adobe font metric)ファイルとアウトラインファイルのセットで配布されるのが普通です。後者はたいてい pfb(printer font binary)ないし pfa(printer font ascii)の形式を取ります。afm ファイルにはメトリクス情報が記録してあり、アウトラインファイルにはすべてのグリフが含まれているという仕組みです。
Type1 フォントの配布形式は、フォントを使用するプラットフォームによって異なることもあります。例えば Windows 向けの PostScript フォントは、メトリックファイルの形式として pfm を使うことが珍しくありません。
このフォントの配布形式は Type1 の場合と同様で、メトリクス情報を含む afm ファイルと pfa ファイルがセットになっています。ただ、PostScript 規格に準拠しているとはいえ、X が対応していないフォントなので、用途は限定されてしまいます。
Apple が開発したフォントです。この形式を Microsoft にも使用させることで、Apple はまんまと Adobe の握るフォント市場に食いこみました。TrueType フォントの場合、メトリクス情報と形態の情報はひとつのファイル(たいてい拡張子 ttf のついたもの)に含まれています。最近はこのフォントを X で利用するためのフォントサーバが開発されていますし、PostScript と Ghostscript はしばらく前から対応ずみです。そのため、Linux で TrueType フォントを利用する機会はいよいよ増えています。
実は TrueType フォントと似たようなもので、付加されたヘッダーによって PostScript フォントへの変換を可能にしてあるという違いしかありません。Ghostscript や SAMBA をはじめ、たいていのアプリケーションではユーザーの目に触れない形で使用されます。もっとも、PostScript プリンタをお使いなら、必要上あえて Type42 フォントのファイルを作成するケースもあることでしょう。
それぞれの推進派が長年にわたって対立しているとはいえ、Type1 フォントと TrueType フォントには多くの共通点があります。両者はいずれも拡大や縮小の可能なアウトラインフォントです。Type1 フォントの文字は(二次スプライン曲線ではなく)三次ベジェ曲線で描かれます。この方式は TrueType フォントの曲線もすべて表現できますから、理屈の上では多少なりとも優位に立っているわけです。もっとも、実際にはほとんど違いがありません。
ヒンティング処理に優れているという点では、TrueType フォントに分がありそうです(Type1 にもヒンティング機能はあるものの、TrueType ほど充実していない)。しかし、この機能がものを言うのは、コンソール画面のような低解像度の出力デバイスを利用するときだけです(600 dpi のプリンタなら、たとえ極小フォントを扱う場合であろうと、ヒンティング機能の向上が目に見えるほどの効果をあげることはない)。また、きちんとヒンティング処理をほどこされた TrueType フォントがまれであることからも、同フォントの優位性には疑問符がつきます。ヒンティング機能を実現するソフトウェアのパッケージは、大半の弱小デザイン会社の予算をオーバーしているのです。きちんと処理されたフォントを作成できるのは、Monotype のようなごくひと握りの大手ベンダーにかぎられます。
結論を述べてしまうと、TrueType と Type1 の違いは普及度とアプリケーションの対応状況にあるのです。Windows 向けの TrueType フォントが広く普及した結果、Web ページの中には特定の TrueType フォントが利用できることを前提として作られたものもあります。また、Windows のアプリケーションに付属してくるという理由から、多数の TrueType フォントを抱えているユーザーも少なくありません。その一方で Linux のアプリケーションはどうかといえば、Type1 には対応していても TrueType への対応は今ひとつというものがほとんどです。さらに、たいていの大手フォントベンダーは今なお大半のフォントを Type1 形式で配布しています。Adobe などは TrueType フォントをほとんど出荷していません。そこで筆者としては、とにかくお使いのアプリケーションで利用できるフォントを選ぶこと、そしてフォント形式の変換はなるべく避けることをお勧めします(形式の変換には犠牲がつきものですからね)。
文書整形システム TeX の一部として Donald E. Knuth が開発したものです。メタフォントは(PostScript と同じく)グラフィクスプログラミング言語で、フォントのみにとどまらない幅広い用途があり、非常に優れた数々の長所を備えています。ごく自然にフォントのサイズを変更できることも、重要な点のひとつでしょう。メタフォントの一種である Computer Modern を例に取れば、20 ポイントのものと 10 ポイントのものでは形状が異なります。小さなフォントは大きなフォントより幅を広く取るほうが望ましいからです(そうしておけば、大きなフォントはより美しく、小さなフォントはより読みやすくなる)。
拡張子は mf となるのが普通です。また、メタフォントは出力デバイスに合わせてビットマップフォントを生成します。作業に時間をかけるだけあって、できあがるフォントは質の高いものになりますが、WYSIWYG 流の組版には必ずしも適していません。
フォントというものは、数種類の異なる書体をセットにした形で配布されるのが普通です。例えばボールド(太字)やイタリック(斜体)、ボールドイタリックといった書体なら、大半のフォントに含まれています。フォントによってはスモールキャップやデミボールドもあることでしょう。あるフォントとその仲間で構成されるグループのことを書体の「ファミリー(フォントファミリー)」といいます。Garamond ファミリーの場合なら、Garamond のほかに Garamond イタリック、Garamond ボールド、Garamond ボールドイタリック、Garamond デミボールド、Garamond デミボールドイタリックという家族構成です。これが Adobe の Garamond Expert だと、さらに Garamond スモールキャップと Garamond 見出しキャピタルも加わります。