Font HOWTO Donovan Rebbechi, elflord@panix.com 山下義之 - 日本語訳 dica@eurus.dti.ne.jp Revision History Revision v2.0 2002-07-10 Revised by: dr あらゆる Linux のフォント問題に対処する際の糸口となるよう、幅広い情報を 取りまとめた HOWTO ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Table of Contents 1. はじめに 1.1. 本文書のありか 1.2. 内容・誤字の修正に関するフィードバック 1.3. 最終更新 1.4. 著作権 1.5. 本文書の狙い 1.6. 謝辞 2. いろはの「い」――フォント概論 2.1. フォントの種類 2.2. フォントファミリー 3. いろはの「ろ」――タイポグラフィー(文字のデザイン) 3.1. 書体の分類 3.2. 合字、スモールキャップフォント、エキスパートフォント 3.3. メトリクスと形態 4. X でフォントを使う 4.1. フォントパス 4.2. Type1 フォントのインストール 4.3. TrueType フォント 4.4. xfs 5. Ghostscript でフォントを使う 5.1. Type1 フォント 5.2. TrueType フォント 5.3. Ghostscript でフォントをプレビューする 6. TrueType を Type1 に変換する 6.1. そんなことをしてどうするの? 6.2. どうやるの? 7. WYSIWYG 流の組版とフォント 7.1. 前置きと概要 7.2. Applixware 7.3. StarOffice 7.4. WordPerfect 8. Netscape 9. TeX/LaTeX 9.1. TeX/LaTeX で使用するフォントの概説 9.2. Type1 フォントを追加する 10. Linux 向けフォントを入手する 10.1. TrueType 10.2. Type1 フォントとメタフォント 11. Linux 向けの便利なフォント関連ソフト 12. フォントをめぐる倫理とライセンスの問題 13. 参考文献 13.1. フォント情報 13.2. PostScript と印刷の情報 14. 用語集 1. はじめに 1.1. 本文書のありか この文書は筆者の Web サイト に置いてあります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1.2. 内容・誤字の修正に関するフィードバック html ファイルは送らないで! せっかくいただいても、それでは手の打ちよう がありません。むしろ sgml ソースに基づいたパッチを送っていただければ幸 いです。その場合は、Font-HOWTO.sgml を修正して Font-HOWTO.sgml.new とい う名前で保存し、以下のように diff プログラムを実行してから、パッチをお 送りください。 ┌──────────────────────────────────┐ │ diff -u Font-HOWTO.sgml Font-HOWTO.sgml.new │ └──────────────────────────────────┘ これなら納得のいく修正はすぐさま簡単に反映できます。また、変更箇所をざ っとチェックして、納得がいくかどうか判断するのも簡単です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1.3. 最終更新 本バージョンは 2002 年 7 月 10 日(水)20:05:15(東部夏時間)に更新され ています。最新版は上記の Web サイトで入手してください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1.4. 著作権 Copyright (c) 2000-2002 by Donovan Rebbechi 本文書はいかなる形式であれ自由に複製および配布(販売・譲渡)していただ いて結構です。修正内容やコメントは文書の管理担当者に送付していただきた いところですが、それも義務ではありません。派生文書の作成および配布は、 以下の条件を満たしていれば認められます。 ・ LDP(Linux Documentation Project)ないし同様の組織に宛てて(sgml の ように適切な形式の)派生文書を送付し、インターネットで閲覧できるよ うにすること。LDP に送付しない場合は、文書のありかを LDP に通知する こと。 ・ 本文書と同じライセンス、もしくは GPL を派生文書に適用すること。また 、著作権に関する条項を付し、少なくとも適用されるライセンスを明記す ること。 ・ 過去の執筆者および主要な貢献者の功績をしかるべく記載すること。 翻訳以外の派生文書を作成しようと考えている方は、企画内容について現在の 管理担当者にご相談ください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1.5. 本文書の狙い ここは手短にやっつけましょう (-; この文書の目的は、過去のフォント関連文 書がカバーしていない巨大な穴を埋めることです。これまでにも Linux のフォ ントを題材とする文書は散見されましたが、総合的なものはひとつも見当たら ず、割と狭く焦点を絞ったものばかりという感がありました。そこで本文書は 、フォントの扱いという問題に画期的なアプローチをかけてみせるのではなく (目新しいネタも盛りこんではありますが)、あらゆる Linux のフォント問題 に対処する際の糸口となるよう、幅広い情報を取りまとめることに主眼を置い ています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1.6. 謝辞 数々の有益なアドバイスをくれた Rod Smith には特に感謝。彼は pfm2afm の バグを修正してくれた人物でもあります。また、参考資料として重宝した Font Deuglification HOWTO の著者 Doug Holland、StarOffice を理解するのに役立 った文書の著者 John McLaughlin、さまざまなアドバイスや建設的なコメント をくれた Linux コミュニティのみなさんにも謝意を表します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2. いろはの「い」――フォント概論 2.1. フォントの種類 2.1.1. ビットマップフォント ビットマップとは点の集合です。ビットマップフォントもまったく同じように 表現できます――点の集合ということですね。それゆえに出力デバイスとは切 っても切れぬ関係にあって、特定の解像度で利用することしかできません。75 dpi のビットマップスクリーンフォントは、1200 dpi のプリンタで印刷しよう と、やはり 75 dpi なのです。 ビットマップフォントは二種類に大別できます。ひとつはビットマッププリン タフォントで、dvips の作成する pk フォントはその一例です。もうひとつは X やコンソールが利用するビットマップスクリーンフォントで、通常は bdf な いし pcf の拡張子がついています。後者は文字のサイズを変更できず、印刷に も適していないため、そういう短所が問題とならない端末画面やコンソール、 あるいはテキストエディタで使用するのが一番です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2.1.2. Type1 フォント Type1 は Adobe が開発したフォント規格で、Adobe の PostScript 規格に準拠 しています。よって Linux との相性もよく、X や Ghostscript が対応してい ます。PostScript フォントといえば、昔から UNIX で印刷するときの定番フォ ントですね。 UNIX 向けの Type1 フォントは、afm(adobe font metric)ファイルとアウト ラインファイルのセットで配布されるのが普通です。後者はたいてい pfb( printer font binary)ないし pfa(printer font ascii)の形式を取ります。 afm ファイルにはメトリクス情報が記録してあり、アウトラインファイルには すべてのグリフが含まれているという仕組みです。 Type1 フォントの配布形式は、フォントを使用するプラットフォームによって 異なることもあります。例えば Windows 向けの PostScript フォントは、メト リックファイルの形式として pfm を使うことが珍しくありません。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2.1.3. Type3 フォント このフォントの配布形式は Type1 の場合と同様で、メトリクス情報を含む afm ファイルと pfa ファイルがセットになっています。ただ、PostScript 規格に 準拠しているとはいえ、X が対応していないフォントなので、用途は限定され てしまいます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2.1.4. TrueType フォント Apple が開発したフォントです。この形式を Microsoft にも使用させることで 、Apple はまんまと Adobe の握るフォント市場に食いこみました。TrueType フォントの場合、メトリクス情報と形態の情報はひとつのファイル(たいてい 拡張子 ttf のついたもの)に含まれています。最近はこのフォントを X で利 用するためのフォントサーバが開発されていますし、PostScript と Ghostscript はしばらく前から対応ずみです。そのため、Linux で TrueType フォントを利用する機会はいよいよ増えています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2.1.5. Type42 フォント 実は TrueType フォントと似たようなもので、付加されたヘッダーによって PostScript フォントへの変換を可能にしてあるという違いしかありません。 Ghostscript や SAMBA をはじめ、たいていのアプリケーションではユーザーの 目に触れない形で使用されます。もっとも、PostScript プリンタをお使いなら 、必要上あえて Type42 フォントのファイルを作成するケースもあることでし ょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2.1.6. Type1 vs TrueType――両者の比較 それぞれの推進派が長年にわたって対立しているとはいえ、Type1 フォントと TrueType フォントには多くの共通点があります。両者はいずれも拡大や縮小の 可能なアウトラインフォントです。Type1 フォントの文字は(二次スプライン 曲線ではなく)三次ベジェ曲線で描かれます。この方式は TrueType フォント の曲線もすべて表現できますから、理屈の上では多少なりとも優位に立ってい るわけです。もっとも、実際にはほとんど違いがありません。 ヒンティング処理に優れているという点では、TrueType フォントに分がありそ うです(Type1 にもヒンティング機能はあるものの、TrueType ほど充実してい ない)。しかし、この機能がものを言うのは、コンソール画面のような低解像 度の出力デバイスを利用するときだけです(600 dpi のプリンタなら、たとえ 極小フォントを扱う場合であろうと、ヒンティング機能の向上が目に見えるほ どの効果をあげることはない)。また、きちんとヒンティング処理をほどこさ れた TrueType フォントがまれであることからも、同フォントの優位性には疑 問符がつきます。ヒンティング機能を実現するソフトウェアのパッケージは、 大半の弱小デザイン会社の予算をオーバーしているのです。きちんと処理され たフォントを作成できるのは、Monotype のようなごくひと握りの大手ベンダー にかぎられます。 結論を述べてしまうと、TrueType と Type1 の違いは普及度とアプリケーショ ンの対応状況にあるのです。Windows 向けの TrueType フォントが広く普及し た結果、Web ページの中には特定の TrueType フォントが利用できることを前 提として作られたものもあります。また、Windows のアプリケーションに付属 してくるという理由から、多数の TrueType フォントを抱えているユーザーも 少なくありません。その一方で Linux のアプリケーションはどうかといえば、 Type1 には対応していても TrueType への対応は今ひとつというものがほとん どです。さらに、たいていの大手フォントベンダーは今なお大半のフォントを Type1 形式で配布しています。Adobe などは TrueType フォントをほとんど出 荷していません。そこで筆者としては、とにかくお使いのアプリケーションで 利用できるフォントを選ぶこと、そしてフォント形式の変換はなるべく避ける ことをお勧めします(形式の変換には犠牲がつきものですからね)。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2.1.7. メタフォント 文書整形システム TeX の一部として Donald E. Knuth が開発したものです。 メタフォントは(PostScript と同じく)グラフィクスプログラミング言語で、 フォントのみにとどまらない幅広い用途があり、非常に優れた数々の長所を備 えています。ごく自然にフォントのサイズを変更できることも、重要な点のひ とつでしょう。メタフォントの一種である Computer Modern を例に取れば、20 ポイントのものと 10 ポイントのものでは形状が異なります。小さなフォント は大きなフォントより幅を広く取るほうが望ましいからです(そうしておけば 、大きなフォントはより美しく、小さなフォントはより読みやすくなる)。 拡張子は mf となるのが普通です。また、メタフォントは出力デバイスに合わ せてビットマップフォントを生成します。作業に時間をかけるだけあって、で きあがるフォントは質の高いものになりますが、WYSIWYG 流の組版には必ずし も適していません。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2.2. フォントファミリー フォントというものは、数種類の異なる書体をセットにした形で配布されるの が普通です。例えばボールド(太字)やイタリック(斜体)、ボールドイタリ ックといった書体なら、大半のフォントに含まれています。フォントによって はスモールキャップやデミボールドもあることでしょう。あるフォントとその 仲間で構成されるグループのことを書体の「ファミリー(フォントファミリー )」といいます。Garamond ファミリーの場合なら、Garamond のほかに Garamond イタリック、Garamond ボールド、Garamond ボールドイタリック、 Garamond デミボールド、Garamond デミボールドイタリックという家族構成で す。これが Adobe の Garamond Expert だと、さらに Garamond スモールキャ ップと Garamond 見出しキャピタルも加わります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3. いろはの「ろ」――タイポグラフィー(文字のデザイン) ここではタイポグラフィーの基礎を取りあげましょう。必修事項というわけで はありませんが、興味をそそられるフォント愛好家は多いはずです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3.1. 書体の分類 3.1.1. 等幅 vs プロポーショナル フォントの分類法はいくつかあります。まずは「等幅」フォントおよびプロポ ーショナルフォントという分けかたです。等幅フォントとは個々の文字幅が等 しいフォントのことで、タイプライターで打った文章のような外見になります 。テキストエディタやコンソール画面には適しているものの、長い文書の本文 には向いていません。これと対になるのが、文字幅に差があるプロポーショナ ルフォントです。たいていはこちらを利用するのですが、等幅フォントにも使 い道はあります(例えば、マニュアル文書で例として挙げるシェルコマンドを 等幅フォントで記述する)。もっとも有名な等幅フォントは Courier でしょう 。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3.1.2. セリフ――つけるべきか省くべきか、それが問題だ。 セリフ(serif)というのは描線の先端についている小さな鉤のことです。 Times Roman のようなフォントの i を例に取るなら、縦棒の両端にある出っ張 りがセリフですね。一般的にはセリフフォントのほうがセリフなしフォントよ り読みやすいと考えられています。セリフフォントは多種多様です。 サンセリフ(sans serif)フォントはこういう鉤がついていないフォントのこ とで、それだけに見た目があっさりしています。長い書物の本文に使用される ことはまずありませんが、ある程度読みやすいサンセリフフォントであれば、 斜め読みや走り読みが当たり前の文章(Web ページ、カタログ、販促パンフレ ットなど)には適しています。また、コンピュータ画面の表示用フォントとし ても使えますし、とりわけサイズが小さいときには威力を発揮します。細部ま で凝っていないせいで、かえって表示が鮮明になるのです。Microsoft などは 、極小サイズでも画面上で読みやすいフォントとして、自社製品の Verdana を さかんに売りこんでいます。 サンセリフフォントの代表格は、Lucida Sans、MS Comic Sans、Verdana、 Myriad、Avant Garde、Arial、Century Gothic、Helvetica といったところで す。ちなみに Helvetica は一部のタイポグラファーに有害視されています。い ささか多用されすぎているため、利用を控えるようユーザーに呼びかけている タイポグラファーの著書も少なくありません。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3.1.3. 古きものと新しきもの――セリフフォントいろいろ 3.1.3.1. old style old style フォントは 15 世紀後半から伝わる由緒正しい書体を踏襲していま す。デザインは概して地味で、非常に読みやすいものばかりです。長い文書に はうってつけでしょう。「オールドスタイル」という名称はフォントのスタイ ルに由来するもので、考案された時代から命名されたわけではありません。old style の定番フォントには、Goudy Old Style をはじめとして、20 世紀に考案 されたものもあるのです。old style に分類されるフォントには次のような特 徴が見られます。 ・ くっきりと形よくデザインされたセリフ。 ・ 斜線の強弱。仮に万年筆でフォントを描くとしたら、左上 45 度の線を太 く、右上 45 度の線を細く引くこともできますね。old style フォントの 見た目は往々にしてそんな感じです。 ・ 読みやすさ。old style フォントはほぼ例外なくとても読みやすい。 ・ 微妙かつ控えめなコントラスト。太い線と細い線があるとはいえ、ウェイ ト(太さ)のコントラストは微妙であって、あからさまではない。 old style フォントの代表例は、Garamond、Goudy Old Style、Jenson、Caslon といったところです(最後のひとつについては異論もあり、transitional フォ ントとみなす人もいる)。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3.1.3.2. modern(didone とも呼ばれる) old style とは対照的なフォントです。old style に比べると概して個性が強 く、主義主張を感じさせますから、長文の組版よりは文書の味つけに役立ちま す。とはいえ、何事もはっきりと割りきれるものではありません。Computer Modern や Monotype Modern、New Century Schoolbook のように格別の読みや すさを誇る modern フォントもあるのです(ウェイトのコントラストをやわら げることで読みやすくしてある)。modern フォントは 19 世紀以降に普及した デザインをベースにしています。主な特徴は以下のとおりです。 ・ 控えめなセリフ。細い横線のみであることも多い。 ・ 縦線の強調。縦線は太く、横線は細い。 ・ 太い線と細い線を比べた場合、コントラストのはっきりしているものが多 い。 ・ ウェイトのコントラストがきついものは old style フォントほど読みやす くない。 modern フォントの代表格は Bodoni でしょう。ほかには Computer Modern や (Computer Modern の原型となった)Monotype Modern もあります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3.1.3.3. transitional transitional フォントは modern と old style の中間に位置づけられます。 読みやすさの点では old style に近いものが少なくありません。しかし、デザ インはもう少し最近のスタイルに基づいています。modern 寄りの傾向はうかが えるものの、modern よりはずっと微妙な味のあるフォントです。代表例は Times Roman、Utopia、Bulmer、Baskerville といったところ。このうち Times は old style 寄りですが、Bulmer はきわめて modern 風です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3.1.3.4. slab serif old style の洗練されたセリフや、modern の一部に見られる細いセリフとは違 って、ブロックのような太いセリフがついていることから、slab(厚板)serif の名があります。見た目はえてしてがっちりしており、かなり読みやすいもの が大半です。slab serif にはエジプトがらみの名を授かっているもの――Nile 、Egyptienne など――がいろいろとあります(実のところ、エジプトとはまっ たく無関係なのですが)。この種のフォントの強みといえば、(コピー文書や 新聞記事など)かすれがちな印刷物を読みやすく仕上げられることでしょう。 なにしろ見た目のがっちりしたフォントなのです。代表格は Clarendon や Memphis、Egyptienne といったところで、それ以外にはタイプライター用のフ ォントが数種。slab serif には等幅フォントが数多く見受けられます。逆に言 えば、等幅フォントの大半(ほぼすべて)は slab serif です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3.1.4. サンセリフ革命 意外や意外、サンセリフフォントの台頭は割と最近の出来事です。先陣を切っ て有名になったものは、いずれも 19 世紀ないし 20 世紀初頭に考案されてい ます。古くからあるのは Grotesque や Futura、Gill Sans といったところで す。この三つはそれぞれ、サンセリフフォントの種類である "grotesque" "geometric" "humanist" を代表しています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3.1.4.1. grotesque 「グロテスク」などと命名されたのは、かなりそっけないデザインが当初はい ささか衝撃的だったからです。セリフの欠如とシンプルで無駄のないデザイン が相まって、見た目はごくあっさりしています。「眼前に迫りくる」ような外 見は見出しにもってこいです。また、コミックや販促パンフレットのように本 文の分量が少ないものには、grotesque の中でも読みやすいタイプのものがし っくり来ます。grotesque は geometric ほどお上品には見えません。 geometric に比べると、ウェイトに変化がついていて描線の数も多く、(あれ ほど丸みのある弧を使わないせいで)角ばっています。大文字の G や小文字の a も geometric とは別物です。ミニマリズム的なところがあるとはいえ、無謀 なまでに前衛的な geometric ほど極端に走っているわけではありません。 grotesque の代表例としては、使われすぎの Helvetica をはじめ、Grotesque 、Arial、Franklin Gothic、Univers があります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3.1.4.2. geometric Futura は「形は機能に応じて決まる」という主張を掲げて登場しました。 geometric フォントは見るからにミニマリズム的です。主な特徴としては、均 一な線の太さ(ウェイトの欠如)が挙げられます。この一面がとりわけはっき りうかがえるのはボールド体で、grotesque や humanist のボールド体ではよ くウェイトに変化をつけてありますが、geometric ではめったに変化が見られ ません。また、デザインに見てとれる正真正銘のミニマリズムも特筆すべき点 でしょう。文字はほぼ例外なく、縦横の直線および(しばしばコンパスで描い たように見えるほど)丸みを帯びた弧で構成されています。使われている線の 数も最小限でしかありません。のちにモダンアート界を席巻するミニマリズム 思想に忠実なせいで、いかにも現代的な外見です。geometric フォントのトレ ードマークは大文字の G で、二本の描線――湾曲のきつい長めの弧と横線―― がミニマリズム流にあしらわれています。もうひとつ目立つのは小文字の a で 、縦の直線に円がひとつと、これまた二本のシンプルな線で描かれたものです (別にもうひとつある a の文字は複雑すぎるせいで使用されない)。 geometric フォントの代表例としては、Avant Garde や Futura、Century Gothic があります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3.1.4.3. humanist 名前から察しがつくかもしれませんが、humanist フォントはあまり無機質でな い外観をめざしてデザインされました。grotesque や geometric に比べれば、 セリフフォントに似た特徴の多いフォントです。見た目は「ペンで描いた」よ うだと言われています。微妙にウェイトの異なる描線をあしらってあるのが特 徴で、ことにボールド体ではその傾向が顕著です。曲線の部分は geometric よ りずっと柔軟性を備えています。しばしば humanist フォントの目印となるの は、「二階建て」になっている小文字の g で、セリフフォントの old style に使われている g と同じ形をしています。humanist は比較的 old style と相 性がいいので、文書の体裁を損ないたくなければ、一番手頃なフォントです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3.1.5. 書体の相性 書体を配置するのは容易なことではありませんから、同じページに多くの種類 を使いすぎるのは避けるほうが得策です。書体をふたつ選ぶとしたら、セリフ フォントとサンセリフフォントをひとつずつにするのが妥当でしょう。 Monotype の Typography 101 ページ では、分類別の組み合わせが論じられています。それによれば modern と geometric は相性がよく、old style と humanist もよくなじむそ うです。humanist は transitional とも釣り合います。また、slab serif は grotesque と合うし、ものによっては geometric や humanist とも調和すると か。 ここまで読めば、Monotype の基本的な方針はだいたい理解できますね。割と地 味なセリフフォントはごく普通のサンセリフフォントと組み合わせていますし 、派手なセリフフォントの modern は「アヴァンギャルド」な雰囲気の geometric と対にしているわけです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3.2. 合字、スモールキャップフォント、エキスパートフォント 3.2.1. 合字 文字間のスペース設定にはありとあらゆる問題がつきものです。例えば fi の 二文字をきちんと組むには、f と i をごく近くまで接近させる必要がある。と ころが、いざそうすると i の点は f に接触してしまうし、縦棒の上端につい ているセリフは f の横棒とぶつかってしまう――。この問題を解決するため、 フォントのセットには合字というものが収録されています。例えば fi の合字 は一文字として扱われ、fi という二文字の代わりに使用できるのです。たいて いのフォントには fi と fl の合字が含まれています。また、後述するエキス パートフォントには、ffl や ffi といった合字や、点のない i が追加されて いることもよくあります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3.2.2. スモールキャップ(スモールキャピタル)フォント スモールキャップフォントというのは、小文字の代用品となる縮小された大文 字のことです。これは強調すべき見出しを書くときに重宝します(LaTeX でよ く使われる)。スモールキャップで見出しを書くときは、各語の先頭に通常の 大文字を用い、残りの文字にスモールキャップを当てるのが一般的です(この 場合は「タイトル文字」と呼ばれる)。こうしておくと、通常の大文字を羅列 するよりずっと読みやすくなるという利点があります(組版の観点から言えば 、大文字ずくめは御法度なのです)。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3.2.3. エキスパートフォント エキスパートフォントは書体を補完するオマケのセットです。合字や装飾文字 (書体に付属する小さな飾り罫一式のようなもの)、スモールキャップフォン ト、スワッシュキャピタル(派手に飾りたてられた巻きひげ文字)などが含ま れます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3.3. メトリクスと形態 プロポーショナルフォントの字間はメトリクス情報によって定義されます。メ トリクスに含まれているのは、フォントのサイズに関する情報と「カーニング 」情報で、後者によって設定されるのがカーニングペア――特殊な字間を取る よう定められている文字の組み合わせです。例えば To という二文字を並べる 場合、字間スペースの設定として適切なのは o の一部が T の傘にもぐりこん でしまうような配置ですから、To はたいていカーニングペアに指定されている わけです。LaTeX のような文書整形プログラムが行やページの区切りを決める には、カーニング情報を読みこむ必要があります。WYSIWYG 流の組版プログラ ムでも同じことです。 フォントを定義する要素としてもうひとつ重要なのは、フォントの輪郭、すな わち形態です。フォントの形を決める各要素(一画一画の描線、強調部分など )は「グリフ」と呼ばれます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 4. X でフォントを使う X にフォントを追加する方法はさまざまです。まず、XFree86 には「フォント パス」というものがあり、フォントを探しに行く先のディレクトリや「フォン トサーバ」が列挙されています。フォントサーバというのは XFree86 でフォン トを利用するためのバックグラウンドプロセスに過ぎません。その強みは、リ モートのディスプレイにもフォントを送れることです。 最近では xfs(そのものずばり "X font server")にパッチが当てられ、 TrueType フォントの使用や単独のプログラムとしての実行が可能になりました 。パッチの当たったバージョンは RedHat 系のディストリビューションに同梱 されていますし、XFree86 4.0 以降にも収録されています。実のところ、xfs は XFree86 付属の標準フォントサーバそのもので、ソースコードは XFree86 のソースツリーに含まれています。ところが最近のディストリビューションに は、単独で走らせることの可能なバージョンが同梱されているのです。パッチ のおかげで TrueType フォントを扱えるようになった単独プログラムの X フォ ントサーバこそ、フォント対策としては現時点で最高の選択と言えるでしょう (TrueType フォントは xfsft というフォントサーバを通じて利用される)。 その長所は以下のとおり。 ・ Type1 や TrueType、ビットマップなど、さまざまなフォントに対応してい る。 ・ リモートのディスプレイにフォントを送れる。 ・ フォントパスの編集をぐっと手軽にしてくれる――xfs があれば、もはや 設定ファイルを書き換える必要はなく、chkfontpath というコマンドライ ンのユーティリティで設定できるのです。これならユーザーが楽をできる ばかりか、パッケージ作成時の安全性確保やスクリプト活用も容易になり ます。 ディストリビューションが違えば設定も違ってきますから、なんでも一概に論 じることはできません。ユーザーの環境は三つのグループに分類できます。 ・ 単独の xfs がインストールしてあり、TrueType フォントに対応するため のパッチも当ててあるケース。ここに分類されるのは、RedHat をはじめ、 Mandrake や TurboLinux といった RedHat 系のディストリビューションで す。Debian 3.0 にもパッチの当たった xfs が同梱されることになってい ます(現在テスト中)。このグループの場合は TrueType も Type1 も xfs を通じてインストールするのがもっとも賢明なやりかたでしょう。 ・ 単独の xfs はインストールしてあるが TrueType フォントには対応してい ないというケースも、ディストリビューションによってはありえます。 XFree86 で TrueType がサポートされているのは 4.0 以降のバージョンに 限られます。ここに分類されるのは Debian の安定版("potato")です。 この場合は Type1 フォントのインストールに xfs、TrueType フォントの インストールに xfstt を使うのがベストでしょう。Debian に TrueType フォントをインストールする際の詳細については、TrueType Fonts in Debian mini-HOWTO を参照してもよいでしょう。 ・ さらに xfs がインストールされていないケース。この環境で Type1 フォ ントをインストールするには、XFree86 のパスにフォントを追加してから xset を利用することになります。また、TrueType フォントのインストー ルはどうかというと、XFree86 4.x では X フォントパスへの追加という方 法を取れますが、XFree86 3.x では xfstt を使う必要があります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 4.1. フォントパス XFree86 がフォントを探しだすときは、フォントのあるディレクトリ(ないし サーバ――詳細は後述)をリストアップしたもの、すなわち「フォントパス」 をたどります。アプリケーションがフォントを要求すると、XFree86 はフォン トパスに含まれるディレクトリをひとつずつ捜索し、要求されたフォントを見 つけてくるわけです。フォントを使うにはフォントパスを設定する必要があり ます。フォントパスにディレクトリを追加するときは、以下のコマンドを実行 してください。 ┌──────────────────────────────────┐ │ xset fp+ ディレクトリのパス │ └──────────────────────────────────┘ その後は次のコマンドを入力し、利用できるフォントを X サーバに再認識させ ます。 ┌──────────────────────────────────┐ │ xset fp rehash │ └──────────────────────────────────┘ これらのコマンドは自動的に実行したいところでしょうから、自分の .xinitrc ファイルに記入してしまいましょう(X の起動法によっては .Xclients ないし .xsession に記入すべき場合もある。三ファイルのうちふたつをシンボリック リンクにしてしまい、残るひとつをリンク先にすれば、面倒が避けられて便利 )。また、コマンドを自動的に実行するには XF86Config を編集する方法もあ ります。X の起動時に /usr/share/fonts/myfonts をフォントパスに追加する なら、XF86Config に次のような記述を書き足すわけです。 ┌──────────────────────────────────┐ │ ... │ │ Section "Files" │ │ ... │ │ │ │ FontPath /usr/share/fonts/myfonts │ │ ... │ │ EndSection │ │ ... │ └──────────────────────────────────┘ XF86Config を編集する方法の利点は、設定の変更がシステム全体に反映される ことでしょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 4.2. Type1 フォントのインストール 4.2.1. type1inst の実行 X で Type1 フォントを使うには type1inst というユーティリティの助けを借 りるのが一番お手軽です。これは Perl スクリプトで、同フォントの利用に必 要なふたつのファイル、fonts.dir と fonts.scale を自動的に作成します。フ ォントのあるディレクトリに移動したら、あとは type1inst を実行するだけで す。 ┌──────────────────────────────────┐ │ cd ディレクトリのパス │ │ type1inst │ └──────────────────────────────────┘ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 4.2.2. xfs パッケージがある場合 つづいてはフォントをフォントパスに追加します。単独プログラムの xfs( Section 4.4 参照)がすでに起動している状態なら、xfs の設定ファイルを編 集してください。RedHat をお使いなら chkfontpath を実行するだけでかまい ません。コマンドの形式は「chkfontpath --add ディレクトリのパス」となり ます。 あとは xfs の再起動か、SIGHUP を送ることによる再読みこみを通じて、X で フォントを使えるようになるはずです。場合によっては xset fp rehash を実 行する必要もあります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 4.2.3. xfs パッケージがない場合 先述したとおり、新規フォントのあるディレクトリをフォントパスに追加する 必要があります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 4.3. TrueType フォント TrueType フォントを追加するには、同フォントを扱えるフォントサーバが必要 ですから、手順はやや面倒になります。こうしたフォントサーバとして挙げら れるのは xfstt と xfs です。 xfstt は TrueType 専用のフォントサーバです。設定しやすく、なかなか便利 なのですが、普及度の面では xfs に水をあけられているようですね。xfs のほ うが優れている点といえば、Type1 と TrueType の両方に対応していることで しょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 4.3.1. xfstt ダウンロードした xfstt をインストールすれば、セットアップはおしまいです 。インストールがすんだら、以下の手順に従ってください。 1. 適切なディレクトリにフォントをインストール(パッケージの付属文書に 目を通すこと)。 2. そのディレクトリに移動して xfstt --sync を実行。これによって xfstt はフォントを探しだし、fonts.dir ファイルを作成する。 3. フォントパスに「unix/:7100」の文字列を追加。 訳注:xfs との衝突を避けるため、xfstt 0.9.99 以降ではポート番号が 7100 から 7101 に変更されています。また、フォントを使うには xfstt をバックグラウンドで起動しておかなければなりません。詳しくは xfstt の付属文書をご覧ください。 ここまで来れば、追加した TrueType フォントは表示可能となり、GIMP や Netscape といったアプリケーションで利用できるようになっているはずです。 xfstt はシステムの起動時に必ず起動するよう設定しておくほうがいいかもし れません。起動ファイルがパッケージに含まれているかどうか確認してくださ い(RPM を利用しているなら、rpm -ql xfstt | grep init を実行し、/etc/ rc.d/init.d/xfstt というような名前のファイルを探せばよい)。起動用のス クリプトが見つからない場合は、/etc/rc.local にこんな感じの二行を追記す るだけで結構です。 ┌──────────────────────────────────┐ │ /usr/X11R6/bin/xfstt --sync │ │ /usr/X11R6/bin/xfstt & │ └──────────────────────────────────┘ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 4.4. xfs 最近のディストリビューションは、X 用フォントサーバの xfs を単独実行の可 能なプログラムとして同梱していることもあります。注目すべきは RedHat 系 のディストリビューションで、このようにモジュール化された xfs はコンパイ ル時から TrueType フォントに対応しています。Debian にも xfs は収録され ていますが、TrueType のサポートが組みこまれているのはテスト版("woody" )だけで、安定版("potato")は未対応です。 独立したサーバとして動かせるタイプの xfs には数々の利点がありますし、コ ンパイルの時点で TrueType のサポート機能が組みこまれていればなおさらで す。最大の長所はといえば、もはや X サーバから切り離されているため、リモ ートのディスプレイにもフォントを表示できるということでしょう。また、フ ォントパスの編集もずいぶん楽になります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 4.4.1. xfs のパス フォントサーバの xfs 自体にもフォントパスがあります。と言ったら、だから どうなんだと思われるかもしれませんね。どういうことができるかというと― ―XFree86 のフォントパスに「unix/:ポート番号」という記述を追加すること で、このフォントパスにフォントサーバ xfs を組みこめるわけです。いったん そうしてしまえば、xfs のフォントパスに含まれるフォントはすべて XFree86 で利用できるようになります。 xfs のフォントパスを定義するのは xfs の設定ファイルで、RedHat なら /etc /X11/fs/config、Debian なら /etc/X11/xfs/config に相当します。RedHat を お使いなら、直接このファイルを編集する必要はなく、chkfontpath ユーティ リティを利用できます。コマンドの書式はあっさりしたものです。 ┌──────────────────────────────────┐ │ chkfontpath --add ディレクトリのパス │ └──────────────────────────────────┘ ほかのディストリビューションの場合は、こんな具合に設定ファイルを編集す れば OK です。 ┌──────────────────────────────────┐ │ catalogue = /usr/X11R6/lib/X11/fonts/misc:unscaled, │ │ ... │ │ /usr/share/fonts/my_new_fonts/, │ │ ... │ │ /usr/share/fonts/some_other_directory │ │ # サイズを 12 ポイントにするには 12×10 │ │ default-point-size = 120 │ │ ... │ └──────────────────────────────────┘ 上記の例では /usr/share/fonts/my_new_fonts/ を xfs のフォントパスに追加 しています。注意してほしいのはディレクトリを列挙した部分の最終行にカン マがついていないことです。こうして変更したフォントパスを有効にするには 、xfs に設定を読みこませる必要がありますので、/etc/init.d/xfs reload を 実行するか、あるいは kill -HUP [pid] ないし killall -HUP xfs で SIGHUP を送ってください。代わりに xfs を再起動してもかまいませんが、その場合は X も再起動させるほうがよいでしょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 4.4.2. xfs にフォントをインストールする xfs 向けにフォントを用意するときは、以下の手順を踏むことになります。 ・ xfs がインストールされていない場合は、まずインストール。 ・ 追加するフォントをディレクトリに格納。 ・ Type1 フォントをインストールするときは、そのディレクトリで type1inst を実行してから、xfs にディレクトリを認識させる。 ・ TrueType フォントをインストールするときは(ディストリビューションに よっては xfs で TrueType を扱えないことに注意!)、新規フォントのあ るディレクトリで以下のコマンドを実行し、xfs にディレクトリを認識さ せる。 ┌────────────────────────────┐ │ ttmkfdir -o fonts.scale │ │ mkfontdir │ └────────────────────────────┘ フォント格納用に新規ディレクトリを作成した場合は、fonts.scale をコ ピーして fonts.dir の名で保存するか、あるいはシンボリックリンクを張 る必要があるかもしれない。ttmkfdir は FreeType というパッケージの付 属プログラム。 ・ この時点で新しいディレクトリを xfs のサーチパスに追加できる。RedHat 系のユーザーは chkfontpath ユーティリティを使えばよい。その他のユー ザーは xfs の設定ファイルを編集すること。 ・ xfs がインストールずみなら、どのポートで動作しているか確認すべき。 それには次のコマンドを実行する。 ┌────────────────────────────┐ │ ps ax | grep xfs │ └────────────────────────────┘ ・ 次いで XFree86 のフォントパスを確認。 ┌────────────────────────────┐ │ xset -q │ └────────────────────────────┘ ・ 「unix/:ポート番号」という感じの文字列がフォントパスに含まれている 場合、「ポート番号」はフォントサーバの動作するポートを意味しており 、すでに xfs はきちんとセットアップされていることになる。そうでない 場合は xfs を XFree86 のフォントパスに追加すること。 ┌────────────────────────────┐ │ xset fp+ unix/:ポート番号 │ │ xset fp rehash │ └────────────────────────────┘ 先述したとおり、各ユーザーの .xinitrc を編集すれば、xfs を常に XFree86 のフォントパスに組みこんでおける。システム全体でそうすると きは XF86Config ファイル(おそらく /etc/X11/XF86Config、/etc/ XF86Config、/usr/X11R6/lib/X11/XF86Config のいずれか)を編集するこ と。"Files" のセクションに FontPath "unix/:ポート番号" の一行を追記 すればよい。以下に一例を挙げておく。 ┌────────────────────────────┐ │ ... │ │ Section "Files" │ │ ... │ │ │ │ FontPath "unix/:-1" │ │ ... │ │ EndSection │ │ ... │ └────────────────────────────┘ ・ xfs がきちんとインストールしてあれば、上述の再読み込みや再起動は次 のコマンドで可能になる。 ┌────────────────────────────┐ │ /etc/rc.d/init.d/xfs restart │ └────────────────────────────┘ ・ xfs を再起動したあとは X を再起動するとよい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 5. Ghostscript でフォントを使う Ghostscript でフォントを利用するには、そのフォントに対応するファイルの ありかを Ghostscript に教えてやるだけのことです。そのためには /usr/ share/ghostscript/version/Fontmap を編集します。フォーマットはごく単純 ですから、ざっと目を通すだけですぐにも理解できるでしょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 5.1. Type1 フォント Type1 フォントは簡単に追加できます。フォントのあるディレクトリで type1inst を実行してください。type1inst は Fontmap という名前のファイル を出力します。このファイルの内容を Ghostscript が使う Fontmap ファイル の最後に追記しましょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 5.2. TrueType フォント TrueType フォントの追加はやや面倒で、まずフォント名を調べなければなりま せん。その手段としては(強引な力技ですが)、TrueType フォントを Type1 フォントに変換するプログラム ttf2pt1 を用いて、afm ファイルからフォント 名を取得するという手があります(もっと効率のいい方法があるはずなのに!  まあ、みっともないやりかたではあっても、うまくいくことは確かなのです が)。こんなふうにコマンドを実行してください。 ┌───────────────────────────────────┐ │ ttf2pt1 -A フォントのファイル名 - 2> /dev/null | grep FontName│ └───────────────────────────────────┘ そのあと、Ghostscript の Fontmap ファイルにエントリを追加します。以下は 正しい書式の一例です。 ┌──────────────────────────────────┐ │ xxx-font (/usr/share/fonts/subdirectory/xxxfont.ttf);│ └──────────────────────────────────┘ さて、これはこれでいいのですが、500 やそこらのフォントをこの方法で処理 するとなったら大変ですね。そういうときはちょっとした Perl スクリプトの 出番です。 ┌───────────────────────────────────┐ │#!/usr/bin/perl │ │# ttfontmap -- TrueType フォント用の Fontmap ファイルを生成 │ │my $directory=shift || print STDERR "Usage: ttfontmap {directory}\n"; │ │ │ │$directory=~s/\/$//; │ │ │ │for my $fontname ( glob ( "$directory/*.ttf" ) ) │ │{ │ │ open ( R, "sh -c \"ttf2pt1 -A $fontname - 2>/dev/null\" |" ); │ │ while ( ) │ │ { │ │ if ( $_ =~ /^FontName/ ) │ │ { │ │ s/^FontName\s*//; │ │ chomp; │ │ print "/" . $_ . " ($fontname);\n" ; │ │ } │ │ } │ │ close R; │ │} │ └───────────────────────────────────┘ このスクリプトはダウンロード できます。 カット & ペーストした内容を ttfontmap という名前で保存し、そのファイル をパスの通っているところ(例えば /usr/bin)に格納すれば、スクリプトのセ ットアップは完了です。以下のように実行してください。 ┌──────────────────────────────────┐ │ ttfontmap ディレクトリ > 出力ファイル名 │ └──────────────────────────────────┘ 「ディレクトリ」の部分にはフォントのあるディレクトリのパスを入力します 。作成された出力ファイルの内容を Ghostscript の Fontmap に追加すればよ いわけです。 注意:「ttfontmap ディレクトリ >> /usr/share/ghostscript/version/ Fontmap」とすればいいじゃないか、と思う方もいらっしゃることでしょう。し かし、これはお勧めできません(>> と入力すべきところを > としたらどうな ることか……)。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 5.3. Ghostscript でフォントをプレビューする Ghostscript で使えるようになったフォントはプレビューできます。 Ghostscript パッケージに含まれている prfont.ps というファイルを読みこま せる形で Ghostscript インタープリタを起動してから、 ┌──────────────────────────────────┐ │ /フォント名 DoFont │ └──────────────────────────────────┘ と入力してください(「フォント名」には見たいフォントの Ghostscript 用フ ォント名を指定)。gs を呼び出す手段はほかにもいくつかあります。一例とし て、gv のようにもっと気のきいた PostScript ビューアで見られる PostScript ファイルを作成したければ、 ┌──────────────────────────────────┐ │ gs -sDEVICE=pswrite -sOutputFile=xxxxxx.ps prfont.ps │ └──────────────────────────────────┘ とすることができます。こうしておけば、出力ファイルを印刷することもでき ます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 6. TrueType を Type1 に変換する 6.1. そんなことをしてどうするの? いや、むしろ「それをやらなくてどうするの!」と言うべきかもしれません。 Linux のユーザーといえば Windows からの乗り換え組が主流ですから、たいて いは大量の TrueType フォントを所有しているはずです。この中にはかなり質 の高いフォントがたくさんあります(例えば MS Word や Corel の製品に付属 するもの)。しかし、Linux のアプリケーションの中には、Type1 フォントな ら OK なのに TrueType フォントには未対応、というものがあるのです( StarOffice や LaTeX など)。ここで最新情報――StarOffice は TrueType フ ォントを扱えるようですが、詳細は今なお調査中。扱えるとしてもかなり高度 な技術が要求されます。残念なことではありませんか。Ghostscript は TrueType に対応していますし、TrueType 用のフォントサーバもあるのですか ら、Linux で TrueType フォントを扱う基盤はすでにできているのに……。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 6.2. どうやるの? TrueType フォントを Type1 フォントに変換するには、http:// ttf2pt1.sourceforge.net/ で ttf2pt1 を入手してください。コマンドの書式 はこんな感じになります。 ┌──────────────────────────────────┐ │ ttf2pt1 -b xxxx.ttf ファイル名 │ └──────────────────────────────────┘ 「ファイル名」は新たに作成する Type1 フォントのファイル名です(つまり自 由に命名できます。ttf2pt1 -b foo.ttf foo という具合に、ttf ファイルと同 じ名前をつけるのがいいでしょう)。 ま、フォントがひとつならこれでよし。たくさんあるなら、もっと気のきいた やりかたが必要です。単純にループで処理することもできます。 ┌──────────────────────────────────┐ │ for X in *.ttf; do ttf2pt1 -b $X ${X%%.ttf}; done │ └──────────────────────────────────┘ あるいは ttfutils パッケージをダウンロードして、ttf2type1 で変換する という手もあります。 ┌──────────────────────────────────┐ │ ttf2type1 *.ttf │ └──────────────────────────────────┘ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 7. WYSIWYG 流の組版とフォント 7.1. 前置きと概要 WYSIWYG 流の組版で使用するフォントを Linux にインストールするのは、かな り複雑な作業です。通常は三つの手順を踏むことになります。 ・ フォントを X サーバで利用できるようにする ・ フォントを Ghostscript で利用できるようにする ・ フォントを組版プログラムで利用できるようにする こうも複雑になる最大の理由は、フォントを印刷する仕組み(Ghostscript)と 画面に表示する仕組みが互いに無関係なことです。言わば Linux の右手と左手 はてんでばらばらに動いていることになります。印刷用フォントと表示用フォ ントが別のマシンに入っている場合もあり、X クライアントの利用するフォン トがすべて印刷できるとはかぎらないのですから、ちょっとやそっとのことで 一件落着とはいきません。 ありがたいことに、大半の WYSIWYG 流アプリケーションにはこの問題をうまく 解決する機能が組み込まれています。解決策の内容としては、なんらかのメカ ニズムを通じて画面表示用のフォントを印刷用フォントに関連づけることが挙 げられます(これが主題。ほかに解決すべき問題として、ボールド、イタリッ ク、ローマンといった書体をフォントの「ファミリー」としてまとめる必要も ある)。ただし、あいにく標準となるような方法はありません。標準的なフォ ント管理システムでこの問題に対処できれば、あらゆるアプリケーションが( アプリ固有の設定ではなく)システム全体に共通する設定を利用できるのです から、WYSIWYG 流の組版プログラムにフォントをインストールする手間がぐっ と省けるはずなのに……。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 7.2. Applixware Applixware にフォントをインストールする方法はふた通りあります。 Applixware「専用の」フォントサーバ、FontTastic を利用するやりかたがひと つ。そしてもうひとつは、Applixware のフォントマップを編集し、もともとシ ステムにインストールされているフォントを使うやりかたです。前者のほうが 手軽ですが、このやりかたでインストールされたフォントは 300 dpi で印刷す ることしかできない場合もあります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 7.2.1. FontTastic 楽をするには FontTastic を使うことです。以下の手順に従うだけで、新たに フォントをインストールできます。 1. root になって Applixware を起動。 2. "Tools" メニューをクリック。 3. "Font Installer" を選択。 4. ポップアップダイアログの "OK" をチェック。 5. "Catalogs" メニューをクリックして "Create" を選択。 6. 「カタログ名」のボックスにフォント名を入力。どんな名前でもかまわな い。ここでは仮に "foobar" とする。 7. カタログ操作リストから foobar のカタログを選択。 8. "Services" メニューから "Install fonts into -> FontTastic font server" を選択。 9. カタログリストのうち、foobar のカタログが選択されていることを確認し てから、"Select files" ボタンをクリック。 10. "Select files" のダイアログからインストールしたいフォントを選択。フ ァイルを選択したら "OK" を押す。例えば /usr/share/fonts/ttfonts/ デ ィレクトリの arial.ttf を選択したい場合は、"Current Directory" のダ イアログに /usr/share/fonts/ttfonts と入力し、ファイルのダイアログ ボックスで arial.ttf を選択してから "OK" をクリックする。複数のファ イルを選択することも可能だが、いずれも同じディレクトリにあるフォン トでなければならない。 11. リストを編集することも可能。その場合は、リストボックスのフォントを 確認して、削除ないし改名する。 12. 準備ができたら "Install fonts" をクリック。さらに "OK" をクリックす る。 13. "Services" メニューの "Update" を選択。しつこく表示されるダイアログ の "OK" をチェックしてから "Services" メニューを閉じる。さらに Applixware も終了。 14. おめでとう、終了です! Applixware を再起動すれば追加したフォントが 使えます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 7.2.2. システムのフォントを Applixware で使う こちらのほうが設定は複雑ですが、結果はさらに良好です。本当に重要でひん ぱんに使うフォントは、この方法で処理することをお勧めします。手順は数段 階に分けられます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 7.2.2.1. フォントを X で利用できるようにする この説明は Section 4 にあります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 7.2.2.2. フォントを Ghostscript で利用できるようにする この説明は Section 5.1 にあります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 7.2.2.3. fontmap.dir を編集する この最終段階をクリアすれば、Applixware でフォントを使えるようになります が、この作業にはとりわけ時間がかかります。fontmap.dir ファイルは、 Applixware をインストールした場所のサブディレクトリ axdata/fontmetrics にあります。この作業の基本的な目的は、スクリーンフォントとアウトライン フォントの対応関係を Applixware に教えてやることです。スクリーンフォン トが Applixware と同じマシンにインストールされているとはかぎりませんか ら、通常はかなり厄介な作業になります。 以下は fontmap.dir にフォントを追加する方法です。この例では Baskerville イタリックを追加することにします。 1. まず次の一行を追記しましょう。 ┌────────────────────────────┐ │ FontRecord = Baskerville-Normal-Italic │ └────────────────────────────┘ 実のところ、FontRecord のエントリにはどんなフォント名を記入してもか まいません。ただし、各エントリとフォントは一対一で対応する必要があ ります。というわけで、Ghostscript の使用するフォント名がお勧めです 。 2. 続いて記入するのは次の一行です。 ┌────────────────────────────┐ │ Family = Baskerville │ └────────────────────────────┘ フォントファミリーの名前としては、Applixware のフォント選択メニュー に表示されるものを入力します。ボールドやイタリック、ローマン、ボー ルドイタリックといった書体は、通常なら同じファミリーに分類されます から、フォントファミリー名とフォントは一対一の対応にならないのが普 通です。 3. ボールドやイタリック、ボールドイタリックの場合は、さらに記述を追加 します。イタリックなら ┌────────────────────────────┐ │ Slant = 1 │ └────────────────────────────┘ そしてボールドなら ┌────────────────────────────┐ │ Weight = 1 │ └────────────────────────────┘ という具合です。ボールドイタリックのときは二行とも記入します。この 例では Slant = 1 だけでかまいません。 4. さらに次のような一行を追加します。 ┌──────────────────────────────────────────┐ │ ScreenName = "-paradise-baskerville-medium-i-normal--0-0-0-0-p-0-iso8859-1" │ └──────────────────────────────────────────┘ 「スクリーンネーム」とは、X サーバが使用するフォント名のことです。 以下のコマンドを実行すれば、文字列 "bask" を含むフォント名が一気に 取得できます。 ┌────────────────────────────┐ │ xlsfonts | grep -i bask │ └────────────────────────────┘ 5. 今度はプリンタフォントの名前を記入しましょう。 ┌─────────────────────────────┐ │ PostScriptPrinterName = Baskerville-Normal-Italic │ └─────────────────────────────┘ 6. 次いでフォントメトリックファイルとアウトラインファイルの格納されて いる場所を指定する必要があります。 ┌───────────────────────────────┐ │ MetricsFile = /usr/share/fonts/misc/baskvli.afm │ │ Type1FontFileName = /usr/share/fonts/misc/baskvli.pfb │ └───────────────────────────────┘ 追加するのが TrueType フォントなら、ttf2pt1 で afm ファイルを生成で きます(代わりに ttfutils パッケージを入手して ttf2afm を使用しても よい)。 ┌────────────────────────────┐ │ ttf2pt1 -A foo.ttf - > foo.afm │ └────────────────────────────┘ それから以下のように記述してください。 ┌────────────────────────────┐ │ MetricsFile = /usr/share/fonts/misc/foo.afm │ └────────────────────────────┘ Type1FontFileName エントリは指定しないでください。この件は Ghostscript にまかせましょう。 以上です。同じファミリーに属するフォントをすべて追加すると、ファイルの 内容はこんな感じになります。 ┌──────────────────────────────────────────┐ │ FontRecord = Baskerville-Normal │ │ Family = Baskerville │ │ ScreenName = "-paradise-baskerville-medium-r-normal--0-0-0-0-p-0-iso8859-1" │ │ PostScriptPrintName = Baskerville-Normal │ │ MetricsFile = /usr/share/fonts/misc/baskvl.afm │ │ Type1FontFileName = /usr/share/fonts/misc/baskvl.pfb │ │ │ │ FontRecord = Baskerville-Normal-Italic │ │ Family = Baskerville │ │ Slant = 1 │ │ ScreenName = "-paradise-baskerville-medium-i-normal--0-0-0-0-p-0-iso8859-1" │ │ PostScriptPrintName = Baskerville-Normal-Italic │ │ MetricsFile = /usr/share/fonts/misc/baskvli.afm │ │ Type1FontFileName = /usr/share/fonts/misc/baskvli.pfb │ │ │ │ FontRecord = Baskerville-Bold │ │ Family = Baskerville │ │ Weight = 1 │ │ ScreenName = "-paradise-baskerville-bold-r-normal--0-0-0-0-p-0-iso8859-1" │ │ PostScriptPrintName = Baskerville-Bold │ │ MetricsFile = /usr/share/fonts/misc/baskvlb.afm │ │ Type1FontFileName = /usr/share/fonts/misc/baskvlb.pfb │ │ │ │ FontRecord = Baskerville-Bold-Italic │ │ Family = Baskerville │ │ Weight = 1 │ │ Slant = 1 │ │ ScreenName = "-paradise-baskerville-bold-i-normal--0-0-0-0-p-0-iso8859-1" │ │ PostScriptPrintName = Baskerville-Bold-Italic │ │ MetricsFile = /usr/share/fonts/misc/baskvlbi.afm │ │ Type1FontFileName = /usr/share/fonts/misc/baskvlbi.pfb │ └──────────────────────────────────────────┘ このファイルではさらに詳細な設定が可能です。設定時のフォーマットは、当 のファイルに記載されている「キーワード一覧(glossary)」で説明してあり ます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 7.3. StarOffice ここでは StarOffice 5.0 を取りあげましょう。StarOffice 5.1 でも手順は似 たようなものですが、ユーティリティの名が psetup ではなく spadmin になっ ています。まず特筆すべきは John McLaughlin のページ です。この問題の情報源と して優れていますし、以下に続く説明の大半は同ページにヒントを得て執筆し たものです。 筆者が StarOffice 5.0 と 5.1 の両方を使ってみたところ、5.1 では新規フォ ントの追加に伴う苦労が軽減されているという印象を受けました。TrueType フ ォントの追加が 5.0 では難航しましたが、5.1 ではいくらか容易になったよう です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 7.3.1. 事前に設定をバックアップすべし! うっかり設定をふいにしたときのため、バックアップを取っておくほうが賢明 です。フォント設定の変更は、xp3 ディレクトリ内の数ファイルに影響をおよ ぼします。xp3/psstd.fonts ファイルのバックアップは必須でしょう。筆者と しては、それだけでなく xp3 ディレクトリを丸ごと保存するようお勧めします 。バックアップファイルを作成するには、StarOffice のディレクトリへ移動し たのち、次のコマンドを使用します。 ┌──────────────────────────────────┐ │ tar cvzf xp3.tgz xp3 │ └──────────────────────────────────┘ 復元するときは、xp3 ディレクトリを削除してから、アーカイブを展開してく ださい。 ┌──────────────────────────────────┐ │ rm -rf xp3 │ │ tar xvzf xp3.tgz │ └──────────────────────────────────┘ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 7.3.2. Type1 フォントを StarOffice に追加する StarOffice に Type1 フォントを追加するのは、割と単純な作業です。お手持 ちの TrueType フォントを StarOffice 5.0 で使いたければ、まず Type1 フォ ントに変換してから、ここで説明する手順に従うのが一番でしょう。 StarOffice 5.1 をお使いなら、同じ手順で TrueType フォントをそのままイン ストールしたいところかもしれませんね(ただし、その場合はやや難易度がア ップ)。まずはお定まりのステップです――X と Ghostscript の両方でフォン トが使えるようにしてください。それがすんだら、psetup ツールでフォントを StarOffice にインストールします。手順は以下のとおり。 1. root になって psetup を実行(StarOffice 5.1 の場合は spadmin を実行 )。 2. "Add fonts" ボタンをクリック。 3. ここでもっとも手軽なのは "Initialize font paths" ボタンをクリックす ることです。これにより、X のフォントパスに含まれているフォントがす べてリストボックスに表示されます。 4. インストールしたいフォント(ボックスに表示されているはず)の格納さ れているディレクトリを選択してから "OK" をクリック。 5. "Convert all font metrics" ボタンをクリック。 以上です。作業は完了しました。StarOffice を終了してかまいません(あるい は終了するまで "OK" をクリックする)。StarOffice を再起動したときには、 追加したフォントが使えるようになっています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 7.3.3. TrueType フォントを StarOffice に追加する StarOffice に TrueType フォントを追加するのは大変ですが、不可能ではあり ません。長時間にわたって John McLaughlin のページ を熟読し、苦心を重ねた結 果、とうとう筆者は StarOffice 5.1 で TrueType フォントを使うことに成功 しました。5.0 ではうまくいきませんので注意してください。以下の手法は Ghostscript で印刷している方に適しています。 ・ まず X でフォントが使えるようにします。 ・ 次いで Ghostscript でフォントが使えるようにします。 ・ 追加したいフォントの afm ファイルが必要です。次のコマンドで作成して ください。 ┌────────────────────────────┐ │ ttf2pt1 -A foo.ttf - > foo.afm │ └────────────────────────────┘ ・ そうでなければ、ttfutils パッケージを入手して ttf2afm を使う という手もあります。こちらの利点は複数のフォントを一度に処理できる ことです。例えばこんな感じ。 ┌────────────────────────────┐ │ ttf2afm *.ttf │ └────────────────────────────┘ ・ StarOffice では、各 ttf ファイルに対応する pfb ファイルが必要です。 これは次のコマンドで作成できます。 ┌────────────────────────────┐ │ touch foo.pfb │ └────────────────────────────┘ 実はこのファイル、印刷時に使われるだけです。しかも PPD ファイルにフ ォントを追記すれば、StarOffice はそのフォントがプリンタ内にあると思 いこみますから(実際は Ghostscript の変換システムに取りこまれている )、pfb ファイルを実際に使用する必要はなくなります。とにかく pfb フ ァイルが存在していれば、フォントのインストールには事足りるようです 。 ・ ここまで来れば、spadmin を実行してフォントをインストールできます。 ・ さて、今度はプリンタの設定と対応関係にある PPD ファイルにフォントを 追加しましょう。ここで用いるフォント名というのは、StarOffice で使わ れる名前であって、Ghostscript 向けのフォント名ではありません。例え ばフォントのファイルが foobar.ttf で、対応する afm ファイルが foobar.afm なら、PPD ファイルには "foobar" というフォント名を記入し ます。こんな感じの記述になるはずです。 ┌─────────────────────────────┐ │ *Font cloistrk: Standard "(001.002)" Standard ROM │ └─────────────────────────────┘ 一方、印刷時に Ghostscript を使用しないケースでは、別の問題に対処する必 要が生じます。この場合、StarOffice をだましてプリンタ内にフォントが存在 していると思いこませるのはご法度です。プリンタの ROM にはフォントが読み こまれていませんから、gv による PostScript ファイルの表示が美しくても、 プリンタで印刷することはできません。PostScript プリンタをお使いなら、主 な相違点は以下のとおりです。 ・ PPD ファイルは編集しない。 ・ 先ほどは touch foo.pfb というコマンドで空の pfb ファイルを作成しま したが、今度は Type42 PostScript フォントを生成するために pfb ファ イルが必要になります。Type42 フォントの実体は「TrueType のプリンタ フォント」です。大半のアプリケーションでは人知れず密かに使用される ため、その存在をユーザーが意識することはありません。Type42 フォント のファイルを作成するには ttfps を使います。 ┌────────────────────────────┐ │ ttfps foo.ttf foo.pfb │ └────────────────────────────┘ 難点をいくつか。StarOffice では時として望みのスクリーンフォントを使って もらえないことがあります。ときどき xp3/psstd.fonts を確認し、意図どおり の表示用フォントが本当に使われるよう、必要に応じて同ファイルを編集する のもよいでしょう。また、StarOffice は設定上の問題を巧みに処理してくれま せん。設定に不備があれば、付属のワードプロセッサを起動することさえでき ない場合もあります。だからこそ、xp3 ディレクトリのバックアップが欠かせ ないのです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 7.3.4. 実際に起こっていること StarOffice に TrueType フォントをインストールするつもりなら、StarOffice の動作を理解しておく必要があるかもしれません。spadmin や psetup を実行 したときの流れは以下のようになります。 ・ xp3/pssoftfonts ディレクトリの pfb アウトラインファイルに対してシン ボリックリンクが張られる。 ・ xp3/fontmetrics/afm/ ディレクトリに afm ファイルがコピーされる。 ・ xp3/psstd.fonts ファイルにエントリが追加される。これは StarOffice が使用するスクリーンフォントの名称をすべて記録してあるファイルです (スクリーンフォントとアウトラインファイルの名称を対応させるのが主 要な役目)。 以上の事情があるからこそ、xp3 ディレクトリを丸ごとバックアップするに越 したことはありません。StarOffice のクリーンな設定を復元するには、それが 唯一の手軽な手段です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 7.4. WordPerfect 今のところ未着手。WordPerfect にフォントをインストールする際の情報源と しては、Rod Smith の Web ページ が決 定版です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 8. Netscape フォントという観点から見れば、もっとも悪評の高いアプリケーションかもし れません。しかし、Netscape のフォント処理のまずさは、ごく単純な処置で克 服できます。Netscape 最大の問題といえば、あまりにも小さな 75 dpi のフォ ントを使いたがることです。これを修正するには .Xdefaults ファイルで適切 な X のリソースを指定してやります。 ┌──────────────────────────────────┐ │ Netscape*documentFonts.sizeIncrement: 20 │ │ Netscape*documentFonts.xResolution*iso-8859-1: 100 │ │ Netscape*documentFonts.yResolution*iso-8859-1: 100 │ └──────────────────────────────────┘ 100 の部分は任意の数字に変更できます。筆者のようにかなり大きなフォント を好む方は、150 とでもしてください。 Netscape のフォント処理のまずさに対処しようとするとき、もうひとつ見逃せ ない奥の手といえば、Microsoft のフォントパックを入手することです。この パックの収録フォントは普及度も高く、持っている場合のメリット(および持 っていない場合のデメリット)はかなり大きいと言えます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 9. TeX/LaTeX 9.1. TeX/LaTeX で使用するフォントの概説 TeX や LaTeX にフォントを追加する手順はいささかこみいっています。しかし 、要領さえ呑みこんでしまえば簡単です(えてしてそういうものですね)。フ ォントの配布形式としては、メタフォントや Type1 フォントがあります。入手 しやすいのはだいたい Type1 形式のほうです。とはいえ、メタフォントにはは っきりとした強みがあります。 Type1 フォントや TrueType フォントの場合は 、まったく同じ形のフォントをサイズに応じて拡大ないし縮小するだけですが 、メタフォントで生成されるフォントはサイズ次第で形そのものを調整できる のです。この特徴がなぜ望ましいかといえば、小さめのフォントは幅を(比較 的)広く、大きめのフォントは狭く取るのが理想的である、ということが主な 理由として挙げられます。 ここでは Type1 フォントのみを取りあげます。入手しやすいこと、そしてイン ストールしづらいことが理由です。 まず LaTeX のフォントについて駆け足で解説しておきましょう。LaTeX が Type1 フォントを扱うときは、次のようなファイルを使うことになります。 ・ .pl -- プロパティリスト(property list)。人間が読んで理解できる形 式の TeX フォントメトリックファイル。 ・ .vpl -- 仮想プロパティリスト(virtual property list)。人間が読んで 理解できる形式の仮想フォントファイル。 ・ .fd -- フォント定義(font definition)ファイル。フォントの「ファミ リー」を定義する。 ・ .tfm -- TeX フォントメトリック(TeX font metric)ファイル。メトリク スについては用語集を参照のこと。Type1 フォントが使う .afm ファイル に相当する。フォントのメトリクスは、TeX でページをきちんとレイアウ トする際に必要。 ・ .vf -- 仮想フォント(virtual font)。エンコーディングの詳細情報を含 んでおり、インタープリタとして機能する。TeX ではフォントとして扱わ れる。一例として、foobar-exp.pfb という妙なフォントにいくつかの(例 えば 20 個の)代用文字が含まれていると仮定し、このうちの数個をある 仮想フォントが利用するケースを想定してみよう(それ以外の文字は foobar.pfb フォントから呼び出す)。そこへ dvips が「仮想フォント foo.vf に含まれている 65 番の文字をおくれ」とリクエストをよこしたと する。TeX のスキームでは常に 65 番が "a" であると、dvips は承知して いるのである。TeX の要求を受けた仮想フォント foo.vf は、Type1 フォ ント foobar.pfb に含まれている 14 番目の文字を呼び出すことになる( Type1 フォント foobar.pfb から "a" の代用文字が呼ばれることもある) 。仮想フォントの仕組みは実に柔軟で、さまざまなフォントファイルから フォントを生成できる。Adobe の「エキスパート」フォントなどを使うと きに便利。 ・ .pk -- 出力デバイスに合わせて作られるビットマップフォント。たいてい は必要に応じて(Type1 フォントやメタフォントから)生成される。概し て解像度が高く(300〜1200 程度)、プリンタへの出力用。解像度が高い ことや、各フォントのサイズごとにひとつずつ必要となることから、使用 するディスクスペースはかなり多い。よって .pk ファイルは保存されず、 キャッシュされることになっている。 ・ .mf -- メタフォントのファイル(metafont files)。メタフォントはフォ ントのデザインに広く利用されているグラフィクスプログラミング言語で (ただし画像も扱える)、TrueType や Type1 のスキームより優れた点が たくさんある。主な弱点といえば、そのふたつほど場所を選ばずに利用で きるわけではないこと。また、WYSIWYG 流の組版にもあまり向いていない 。もちろん、組版システムとして TeX を利用するなら、これはたいした欠 点とはならない。 TeX のディレクトリ構造を把握しておくのはよいことです。知っておくべき主 なディレクトリを挙げましょう。 ・ $TEXMF/fonts -- フォントを格納するメインのディレクトリ。 ・ $TEXMF/fonts/type1 -- Type1 フォントのディレクトリ。 ・ $TEXMF/fonts/type1/ベンダー名 -- 該当ベンダーの形態ファイルを格納す るディレクトリ。 ・ $TEXMF/fonts/type1/ベンダー名/フォント名 -- 該当フォントを格納する ディレクトリ。たいていはごく普通の英名がついており、TeX でフォント を命名する際の暗号めいたルールにならう必要はない。 ・ $TEXMF/fonts/afm/ベンダー名/フォント名 -- 該当ベンダーの該当フォン トを定義する afm ファイルのディレクトリ。 ・ $TEXMF/fonts/tfm/ベンダー名/フォント名 -- afm ディレクトリと同様。 ただし、こちらには tfm ファイルが格納される。 ・ $TEXMF/fonts/vf/ベンダー名/フォント名 -- 同上。ただし仮想フォントが 格納される。 ・ $TEXMF/fonts/source/ベンダー名/フォント名 -- 同上。ただしメタフォン トのファイルが格納される。 ・ $TEXMF/dvips/config/psfonts.map -- dvips 向けのフォントマップファイ ル。機能も形式も Ghostscript の Fontmap ファイルに近い。 ・ $TEXMF/tex/latex/psnfss -- フォント定義ファイルをすべて格納するディ レクトリ。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 9.2. Type1 フォントを追加する 9.2.1. フォントの命名 まずフォントに適切な名前をつけてやる必要があります。命名法については、 システムにインストールされた fontinst の付属文書を参照してください( TeTeX の関連文書を格納したディレクトリの中に fontinst のサブディレクト リがあるはず)。ごく簡潔にまとめてしまえば、フォント名の形式は FNW{V}E {n} となります。 ・ F はベンダーを示す一文字の略称(m = Monotype、p = Adobe、b = Bitstream、f = フリー)。 ・ N はフォント名を示す二文字の略称(例えば ag は "avant garde" の略) 。 ・ W はフォントのウェイト(r = レギュラー、b = ボールド、l = ライト、d = デミボールド)。 ・ V は必要に応じて文字の傾きを指定する変数(i = イタリック、o = オブ リーク)。 ・ E はエンコーディングのタイプを示す略称(ほぼ例外なく 8a、すなわち Adobe 標準エンコーディング)。 ・ n は必要に応じて字幅を指定する変数(n = 狭く)。 例えば Adobe Garamond デミボールドなら pgad8a となります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 9.2.2. TeX フォントメトリクスと仮想フォントを作成する では、以下のように fontinst を実行してください。 ┌──────────────────────────────────┐ │ latex `kpsewhich fontinst.sty` │ └──────────────────────────────────┘ 続いてプロンプトに以下の文字列を入力します。 ┌──────────────────────────────────┐ │ \latinfamily{フォント名}{}\bye │ └──────────────────────────────────┘ 「フォント名」とは、ファイル名の最初の三文字です(Adobe Garamond なら pad)。これにより、フォント記述ファイルやプロパティリストファイル、仮想 プロパティリストファイルなど、いろいろなファイルが生成されます。また、 多数の .mtx ファイルも生成されます。これも fontinst の生成したファイル ですが、ユーザーが使用する必要はありません。ここで必要なのは、プロパテ ィリストおよび仮想プロパティリストをメトリクスおよび仮想フォントに変換 することです。それには pltotf と vptovf を実行します。 ┌──────────────────────────────────┐ │ for X in *.pl; do pltotf $X; done │ │ for X in *.vpl; do vptovf $X; done │ └──────────────────────────────────┘ それがすんだら、pl・vpl・mtx の各ファイルを削除してください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 9.2.3. dvips の設定 dvips の設定ファイル psfonts.map を編集しましょう。ファイルの形式を説明 するには例を挙げるのが一番です。 ┌──────────────────────────────────┐ │ marr8r ArialMT <8r.enc をご利用くだ さい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 10.1.3. Luc の Web ページ Luc Devroye の Web ページ からリンクをたどれば、フリーのフォントを入手できる数 々のサイトに到達できます。これらのフォントの特徴といえば、かなりのもの が「本当に」フリーであることです。「海賊版フォント」ではありません。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 10.1.4. TrueType フォントのある Web サイト フォントを自由にダウンロードできる Web サイトもいくつかあります。例えば freeware connection には 、多数のアーカイブに至るリンクが張られています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 10.1.5. フォントベンダー TrueType フォントを販売しているベンダーもいくつかあります。しかし、かな り値の張るものが大半ですから、同じ金額を Type1 フォントに投資するほうが 得策でしょう。この件については Type1 フォントのセクションで補足します。 TrueType フォントを安く売っている場所といえば BuyFonts です。安いフォントを買うつもりなら、まずは倫理上の問 題について書いてあるセクションを参照してください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 10.2. Type1 フォントとメタフォント 10.2.1. Windows および Mac 向けの形式を扱う ベンダーの中には Windows や Mac のユーザーを想定してフォントを出荷する ところが少なくありません。それがときには問題となります。「Windows フォ ント」のほうはたいてい zip 形式で圧縮されているため、ごく扱いやすいもの が大半です。pfm ファイルを(pfm2afm で)afm ファイルに変換すればすみま す。 かたや Macintosh 向けフォントはといえば、.sit.bin 形式――stuffit のア ーカイブ――で配布されるのが普通なので、それほど楽には使えません。残念 ながら、最新の stuffit で作成されたアーカイブを Linux で展開するような ツールは存在しません。Executor(Mac のエミュレータ)を使うか、さもなく ば DOSEMU ないし Wine で stuffit を動かすか、ふたつにひとつでしょう。い ったん .sit.bin ファイルを展開してしまえば、あとは t1utils パッケージに 付属する t1unmac でファイル形式を変換するだけです。 あいにく一部のベンダーは Macintosh 形式(stuffit のアーカイブ)の Type1 フォントしか出荷していません。しかし、フォント博士の Luc Devroye によれば、大手ベンダーは例外なく Mac 向けと Windows 向けの Type1 フォントを用意しているそうです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 10.2.2. フリーのフォント CTAN は良質なフォントの宝庫ですし、フリーなものも たくさんあります。その大半はメタフォント形式ですが、一部は Type1 フォン トとしても入手可能です。また、Blue Sky もご覧 ください。こちらでは Type1 形式の Computer Modern フォントが入手できま す(その質の高いこと――品質と完成度の面でこれに匹敵するフォントを購入 したら、500 ドルくらいの出費になるはずです。最高級の各種フォントにも引 けを取りません)。 Luc Devroye の Web ページ からリンクをたどれば、フリーのフォントを入手できる数 々のサイトに到達できます。これらのフォントの特徴といえば、かなりのもの が「本当に」フリーであることです。「海賊版フォント」ではありません。 URW はたいていのプリンタに常駐している標準的な PostScript フォントを公 開しています。なかなかの優れものです。 Walnut Creek Archive にはフリーで 入手できるフォント数種とシェアウェアのフォントがあります。その一部は露 骨なパクリです(しかも出来は今ひとつ)。なんらかのライセンスが付属して いないフォントはおそらくパクリでしょう。また、WinSite には Type1 フォントがいくつかあります (Windows 3.x 向けページ以下にある fonts/atm のページ)。惜しむらくは、 ものによって afm ファイルの記述に誤りがあったり、カーニングペアが一切な かったりすることです(afm ファイルについては "FontName" セクションを書 き換えればよい。フォントの形態を定義したファイルの内容と同じフォント名 にすること。なお、カーニングペアの追加という問題は、言うまでもなく本文 書の守備範囲からはずれているので割愛)。 Luc Devroye の Web ページ は、多数のリン ク以外にフリーの自作フォントもそろえていますし、実に興味深いタイポグラ フィー論まで展開しています。まさに「必見サイト」です。フォントベンダー へのリンクも数多く張ってあります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 10.2.3. 商用フォント 10.2.3.1. 値段を取るか、質を取るか――わざわざ高級フォントを買う意味と は? 不思議ですね――どうして高価なフォントと安価なフォントがあるのか? 高 価なのは大半の PostScript プリンタに常駐している「標準 PostScript フォ ント」です。また、なぜ高いほうを購入しなければならないのか? 私見です が、一般のユーザーが使うぶんには(Bitstream の CD に収録されているよう な)お徳用フォントで充分でしょう。とはいうものの、「仕事」でフォントを 使う方や、筋金入りのフォントマニアにとっては、ひときわ良質なフォントが 必需品ですし、質のよいフォントといったら(Computer Modern をはじめとす る)フリーのフォントか、市販されている商用フォントのどちらかになります 。 安いフォントの長所は明白でしょう――安いことです。しかし、高級フォント にも長所はあります。 ・ 倫理上の問題:安いフォントはまず間違いなくパクリです。文字をデザイ ンするには、それなりの時間とデザイナーの経験が必要になります。単価 が 1 ドルを切るようなら、ベンダーがデザインしたフォントでないことは ほぼ確実でしょう。とてつもない数のフォントを収録した CD もパクリと 見てさしつかえありません(例外があるとすれば、何千ドルもする大手ベ ンダーのコレクション)。きちんとしたベンダーのフォントに比べて、パ クリ製品はたいてい品質の面で劣っています。 ・ 完全性:質の高いフォント(特に Adobe の製品)は、数種類の書体をセッ トにした形で配布されており、気のきいた追加フォントが完全なフォント ファミリーを構成するようになっています。ボールド、イタリック、デミ ボールドといった書体に加えて、スワッシュキャピタルやスモールキャッ プ、旧字体や合字を収録しているケースが大半です。つい最近のことです が、Adobe ではマルチプルマスター技術を開発し、ひとつのフォントファ ミリーで無限(に近い数)の書体を利用できるようにしています。 ・ 品質:フリーで入手できるフォントや安いパクリ製品の中には、カーニン グペアやまともな合字といった必須の要素を欠いているものがかなりあり ます。こういうフォントはそもそも安物のコピー品です。それに引き換え 、ひとかどのデザイナーは元のデザインを丹念に吟味し、アレンジするこ とに全力を尽くします。 ・ 信頼性:Adobe Garamond のデザイナー(Robert Slimbach)は、Claude Garamond によるオリジナル版のデザインを自ら研究しています。名の通っ たベンダーであれば、自社製品のデザインを必ず丹念に検討しているもの です。インターネットから失敬してきたものを Fontographer で加工して 一丁あがり、というような態度とは訳が違います。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 10.2.3.2. お徳用品 ・ それなりに質の高い Type1 フォントを収めた CD がほしい方は、ぜひとも Bitstream を訪れるべきです。名の知れた商 品としては、250 種のフォントを収録した CD と 500 種のフォントを 収録した CD があります(本文書執筆時の後者の価格は 50 ドル)。いず れも品質はなかなかのものですし、一般のユーザーがはじめて手を出すに はうってつけでしょう。なお、Corel の製品に使用されているフォントは (大半が)Bitstream とのライセンス契約で供与されたものです。 ・ Matchfonts にはいっそう割安なフォント があります――八種類程度の「詰め合わせ」セットが 30 ドルです。出来 のよい筆記体フォントもいくつか含まれています。いずれも利用可能な形 式で配布されているようです(Windows 向けの afm フォントは .exe 形式 のファイルですが、拡張子にだまされてはいけません――実はただの zip アーカイブです)。筆者が判断するかぎり、パクリ製品ではありません。 ・ EFF はひとつ 2 ドルで TrueType フォントを 販売しています。また、「プロの水準」にある PostScript フォントは一 書体につき 16 ドル、TrueType フォントは 12 ドルです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 10.2.3.3. 高級品 ・ Adobe の Type サイト では高品質のフォン トを入手できます。値の張るものもありますが、手頃なセットもあります ので、Type Collections のページ をご覧ください。また、Adobe が扱っている製品の中 には、市場でも最高の水準と言えるほどフォントファミリーの充実したも のがあります。例えば Garamond や Caslon 、そしてこれらのマルチプルマスター版 といったところです(Adobe の サイトに使用されている Myriad と Minion は、優れたマルチプルマスタ ーフォントの代表例)。 ・ Berthold Types Limited は大手ベンダ ーのひとつで、数々の高級品を扱っています。一部は Adobe を介して販売 されていますが、Berthold ではすべてが入手可能です。価格は Adobe と 同程度でしょう。 ・ ITC は高級フォントをいくつか開発していま す(例えば Corel の製品に同梱されているフォントの一部)。同社のフォ ントはファミリー当たり 100〜180 ドルです。形式としては Type1 と TrueType の両方があります。Mac の形式を Linux で扱うのは難しいので 、「Windows 向け」パッケージを選ぶほうがよいでしょう。 ・ Linotype は有名なベンダーで、名だ たるデザイナーの手がけたフォントを扱っています。かの Herman Zapf も そのひとりです(そう、"Zapf Chancery" の名は彼に由来しています。 Palatino も彼の作品です)。 ・ Monotype は Microsoft 製品のフォントをあ らかた開発しています。歴史もあれば評価も高いというベンダーです。 ・ Tiro Typeworks の販売するフォントは、 いささか高価ながら良質です。あらゆるタイプの合字をはじめ、スモール キャップや見出しフォントなど、各種の書体が非常に充実しています。対 応 OS の選択肢としては UNIX の名も……ちまたには「Windows または Mac 向け」という断り書きがあふれかえっていますから、これは思わぬ拾 い物といったところです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 10.2.3.4. その他のリンク ベンダーはまだまだありますので、Luc Devroye のページ からリンクをたどってみてください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 11. Linux 向けの便利なフォント関連ソフト Linux 向けのフォント関連パッケージはいろいろあります。必須のプログラム も少なくありません。 ・ chkfontpath:xfs の設定ファイルを編集するユーティリティ。 ・ DTM(Definitive Type Manager) : フォント全般の管理を担うツール。これは開発版。 ・ fontinst : LaTeX 関連のパッケージで、Type1 フォントを LaTeX にインストールする 際の手間を省くプログラム。 ・ FreeType :TrueType フォント用のライブラリ で、大半の Linux ディストリビューションに同梱されている。 ・ Ghostscript :Linux での印刷を実現 するソフト。Linux に付属しているバージョンは GNU の Ghostscript で 、Aladdin Ghostscript の最新版(古いものは GPL に準拠して公開されて いる)よりひとつ前のバージョンに相当する。 ・ pfm2afm :Windows 向けの pfm フォントメトリックファイルを Linux 用の afm メトリクスに変換するユーティリティ。CTAN で入手できるオリ ジナル版に手を加えたもので、Linux でコンパイルできるよう Rod Smith の手で修正されている。 ・ mminstance と t1utils :いずれ も Type1 フォントを扱うためのパッケージ。mminstance では Adobe のマ ルチプルマスター技術 で作成された Type1 フォントを扱う。t1utils のほうは複数の ユーティリティをセットにしたもので、Type1 フォントを別形式の Type1 フォントに変換できる。 ・ ttf2pt1 :TrueType フォントを Type1 フォントに変換するソフト。Type1 フォントを必要とするアプリケ ーションがある場合に便利。 ・ ttfps :.ttf 形式の TrueType フォントファイルを Type42 フォントのファイルに変換 できる。 ・ ttfutils :TrueType フォントを扱うユーティリティの詰め合 わせパッケージ。ttf2pt1 を必要とする。必需品とはいかないまでも便利 。 ・ type1inst :Type1 フォントのインストールに欠かせないパッケージ。インストールの手間が 大幅に省ける。 ・ xfstt :Linux 向け の TrueType フォントサーバ。これはこれで便利だが、おそらく xfs のほ うがベター。 ・ xfsft :フォント サーバ。xfs に含まれている。 ・ x-tt : ハングル文字と日本語フォントを扱うためのフォントサーバ。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 12. フォントをめぐる倫理とライセンスの問題 フォントのライセンスはとかく物議を醸しがちな問題です。フリーのフォント が大量に出回っているのは事実ですが、ライセンスが付属していないものはお そらくなんらかの「パクリ」でしょう。なおさら話をややこしくしているのは 、フォントに関する知的所有権関連諸法の内容です。アメリカの場合、基本的 にフォントファイルの著作権は保護されていますが、フォントのデザインは対 象外となっています。つまり、フォントを再配布するのは違法ですが、方眼紙 に印刷した上で描線をなぞり、また新たにデザインしてしまうという「リバー スエンジニアリング」は、法的になんら問題のない行為なのです。リバースエ ンジニアリングされたフォントはたいてい安価で入手し放題ですが、出来はよ くありません。この手のフォントは、膨大な数のフォントを収録した激安 CD で配布されることが多く、海賊版フォントも同様です。よってリバースエンジ ニアリングされたフォントと単なる海賊版を判別するのは、必ずしも容易なこ とではありません。Linux 向けにフリーのフォントをパッケージングしようと する者にとっては、実に頭の痛い状況です。 海賊版フォントのもっとも不愉快な点といえば、デザイナーの割く労力の価値 が軽視されていることかもしれません。海賊版はひとつの CD にごっそりつめ こんであるものと相場が決まっていますが、記載してしかるべきオリジナル版 デザイナーのクレジットは決して見当たりません。それに引き換え、まっとう なフォントベンダーの中には、お抱えデザイナーの名を明記しているところも いくつかありますから、立派なものです。 この問題については諸説が入り乱れています。知的所有権を支持する意見が読 みたければ、TypeRight をご覧ください。また、 Southern Software, Inc. では異なる見解が披露 されています。ただし、ここのフォントは決して購入しないように! 同社の Type1 フォント(Adobe 製品をリバースエンジニアリングした粗悪品)は、afm ファイルを含んでいないため、使いものになりません。 フォントと知的所有権をめぐる問題は、comp.fonts FAQ や Luc Devroye のホームページ でも取りあげられています。どちらの見解もさほど極 端に走らない内容です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 13. 参考文献 13.1. フォント情報 ・ Rod Smith のホームページ :Applixware お よび WordPerfect におけるフォントやプリンタの扱いがみっちり説明され ている。 ・ John McLaughlin のページ :StarOffice のフォント設定が論じられている。 ・ Jim Land のホームページ :PostScript とフォントを扱ったページへのリン クが多数ある。 ・ comp.fonts FAQ :フォントをめ ぐる FAQ の決定版。 ・ Luc Devroye のホームページ :フォン トその他に関する情報が満載されている。彼は自ら数々のフリーフォント をデザインしている人物で、ホームページには興味深いリンクや情報なら びに解説が山ほどある。 ・ Font Deuglification HOWTO :Linux における TrueType フォントを題材としている。 TrueType フォントを論じた HOWTO 文書としては文句なしにチャンピオン 。情報源として秀逸。 訳注:同文書は Hal Burgiss 氏によって改訂されており、現在は "XFree86 Font De-uglification HOWTO" の名で公開されています。 ・ TrueType Fonts in Debian mini-HOWTO :TrueType フォントを Debian にインストールす る方法が解説されている。Debian のユーザーにとっては必読の文書。また 、TrueType フォント対応版の xfs がお使いのディストリビューションに 含まれていなければ、やはり一読の価値がある。 ・ TrueType HOWTO(ドラフト版) :1998 年 6 月付の未完成品。念のため挙げておく 。 ・ TrueType for XFree86 mini-HOWTO :いささか古くなった HOWTO 文書。RedHat 5.x のみに通用す る内容。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 13.2. PostScript と印刷の情報 ・ Adobe の PostScript 関連ページ :PostScript 規格を扱ったサイトの決定版。 ・ Ghostscript のホームページ :各種情 報を掲載するほか、最新のプリンタドライバを網羅している。 ・ Jim Land のホームページ :PostScript とフォントを扱ったページへのリン クが多数ある。 ・ Christopher Browne の印刷 FAQ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 14. 用語集 ・ afm:Adobe Font Metric の略。これはフォントの幅や字間スペースの情報 を格納してあるファイルで、フォントの形態を定義するファイルと対をな す。 ・ アンチエイリアス:フォントスムージングとも呼ばれ、低解像度のデバイ ス(例えばモニター)向けにフォントを変換する技術を指す。フォントを 変換するときの問題は、フォント自体が輪郭線で描かれているのに対して 、デバイス側ではフォントを点の集合として表示すること。よって変換の 際には輪郭の内部にある画素(ピクセル)を黒く塗りつぶし、そこ以外の ドットには手をつけないことになる。が、これだけでは輪郭線上の画素に 対する処理が不充分で、境界線にある画素は灰色に仕上げるほうが望まし い。アンチエイリアスとは基本的にこれを実現する仕組み。 ・ bdf フォント:X で利用できる各種ビットマップフォント。 ・ ビットマップフォント:点の集合でできているフォント。フォントの特徴 はいずれも点の配置として記録される。したがって出力デバイスとの関わ りが深く、同じビットマップフォントを画面表示と印刷の両方に使用する ことはできない。ビットマップスクリーンフォントの例としては、X の利 用する .pcf フォントや .bdf フォントが挙げられる。ビットマッププリ ンタフォントの一例は TeX の pk フォント。 ・ didone:「modern フォント」の項を参照。 ・ dpi:Dots Per Inch(1 インチ当たりのドット数)を意味する。モニター の表示は 75〜100 dpi 程度の密度が普通だが、最近のプリンタは 300〜 1200 dpi という具合にさまざま。 ・ エキスパートフォント:フォントを補完する文字のセット。スモールキャ ップフォントや装飾文字、オマケの合字、数字のプロポーショナルフォン トなどが含まれる。Adobe のフォントにはエキスパートフォントの付属し ているものも多い。 ・ フォントサーバ:XFree86 でフォントを利用できるようにするため、バッ クグラウンドで動くプログラム。 ・ グリフ:平たく言えば「形」を意味する。アウトラインフォントの構成要 素。小文字の i を例に取れば、点や縦棒やセリフのひとつひとつがグリフ に相当する。フォントの形態はグリフで決まる。 ・ カーニング:プロポーショナルフォントの場合、字間のスペースは文字の 組み合わせ次第で変わる。フォントのメトリックファイルには、特定の二 文字を組み合わせるときのスペースに関する情報が含まれている。カーニ ングペアとはこうした組み合わせのこと。 ・ 合字:連続した文字を表現するための特殊な文字。実例を挙げて説明する のが一番だろう――fi の二文字が変換される場合、i の点は f に接触し てしまうし、左上のセリフも f の横棒とぶつかってしまいかねない。これ に対して合字の fi はひとつの文字で、ひとつの f とひとつの i を連続 して並べる代わりに使用できる。その他の合字としては fl や ffi や ffl があるが、たいていのフォントには fi と fl しか収録されていない。残 りは「エキスパートフォント」として入手可能な場合もある。 ・ メタフォント:フォントの生成に使われるグラフィクス言語。多々ある長 所の最たるものとしては、サイズの変更時に引き伸ばす必要のないフォン トを生成できることが挙げられる。つまり、メタフォントで作成した 17 ポイントの Computer Modern フォントは、10 ポイントの Computer Modern フォントをそのまま拡大したものとは形が異なるのである。Adobe のマルチプルマスター技術が登場するまで、この機能を備えているのはメ タフォントだけだった。メタフォントの強みは高品質のフォントを作成で きること。弱点はといえば、アウトラインフォントからビットマップフォ ントを生成するのに時間がかかることで、それゆえに WYSIWYG 流の組版と は相性が悪い。 ・ メトリクス(メトリック):フォントが占めるスペースの大きさを定義し た情報。フォントが収まる箱のようなものと表現できる。ページ内でフォ ントを配置する際にはこの情報が欠かせない(フォントの形そのものは問 題とされない)。よってたいていのプロポーショナルフォントは、形態に 関する情報のほかにメトリクス情報も保有している。メトリクスにはカー ニング情報も含まれる。 ・ modern フォント:19 世紀以降に考案されたデザインを基調とするフォン ト。垂直線を強調してあるため、見た目ががっしりしている。old style や transitional より強烈な「個性」や「主義主張」が特徴だが、品位や 格式もそれなりにとどめている。長文には適していないものの、文書の味 つけには有効。代表格としては Bodoni がある。 ・ old style フォント:由緒ある書体のグループ。15 世紀後半から伝わるデ ザインに基づいている。長い文書(例えば書籍)にはうってつけ。先人の デザインを踏まえたスタイルではあるが、中にはかなり新しい書体もある 。ことに Goudy Old Style は 20 世紀初頭に Goudy が考案したもの。old style の代表格としては、Goudy Old Style に加えて Garamond や Caslon がある。 ・ pcf フォント:X が利用するビットマップフォント。 ・ PostScript:ページ記述を目的とするプログラミング言語の一種。当初は 開発元である Adobe の商標だったが、今や ISO の規格でもある。変換に はインタープリタが必要。これには Ghostscript のようなコンピュータ上 のプログラムが使用されるが、一部のプリンタでも同言語の解釈は可能。 ・ セリフフォント:描線の先端に小さな鉤(セリフ)がついているフォント 。概して読みやすい。ただし、出力デバイスの解像度が低い場合は、(な にしろ細かい飾りだけに)セリフを再現するのがかなり難しく、フォント のサイズが小さければなおさら。よって低解像度のデバイスで小さなフォ ントを扱うなら、(Microsoft の Verdana のような)サンセリフフォント のほうが読みやすいこともよくある。また、セリフフォントであっても( 各種 modern フォントのように)長文向きではないものもある。 ・ サンセリフ(sans serif)フォント:セリフのついていないフォント( sans はフランス語で「〜のない」という意味)。見た目があっさりしてい て、見出しにもってこい。タイポグラフィー界の常識では、見出しのみに 使うべきとされているが、それが唯一の用途とはかぎらない。一部のサン セリフフォントは、インパクトより読みやすさを重視してデザインされて いる。斜め読みされてしまう短めの文書(例えばカタログや販促パンフレ ット)で人目を引くのによい場合もあるし、最近 Microsoft が開発した Verdana は、小さな文字を低解像度のデバイスに出力する場合でも読みや すい。有名なサンセリフフォントとしては、Lucida Sans や MS Comic Sans、Avant Garde、Arial、Verdana、Century Gothic などがある。 ・ slab serif フォント:鉤のようなセリフではなく、厚板(slab)のような セリフ(平たい線やブロックなど)がついているフォントのグループ。例 外もあるとはいえ、非常に読みやすいものが多い。セリフがシンプルでが っちりしているため、ページにめりこんでいるような印象を受ける。 Clarendon や New Century Schoolbook、そして Memphis の知名度が高い 。 ・ transitional フォント:old style フォントより最近のデザインを基調と しているフォント。読みやすいものが多い。Baskerville や Times Roman が代表格。 ・ Type1 フォント:Adobe の開発したフォントの一種。昔から X サーバのア ーキテクチャや PostScript 規格でサポートされていたため、Linux で動 くほぼすべてのアプリケーションできちんと使える。PostScript フォント の配布形態はさまざまだが、UNIX 向けのものは afm(adobe font metric )ファイルとアウトラインファイルの組み合わせが一般的。後者は通常 、.pfb(printer font binary)ファイルないし .pfa(printer font ascii)ファイル。なお、メトリックファイルにはメトリクス情報、アウト ラインファイルにはすべてのグリフが含まれている。 ・ Type3 フォント:Type1 に似たフォント。配布時の構成ファイル(afm フ ァイルおよび pfa ファイル)の拡張子も Type1 フォントに似ているが、X でサポートされていないため、このフォントに対応している Linux のアプ リケーションはあまり多くない。