LAN-mini-HOWTO 堀江誠一 shorie@ibm.net v1.1r1, 16, Feb., 2001 (v1.1 1997 5, Feb., 2001) この文書は Linux/Win95/MacOSの Ethernet と TCP/IP によるネットーク設定 に必要な最低限の知識の説明を含みます。また、実際に必要な設定項目や作業 についても説明します。この文書を読むことによって、Linux を中心とした小 規模の LAN を組むことができます。文書の前半で基本的な項目のみ説明し、 残りでネットワーク構築のための作業を説明します。 ______________________________________________________________________ 目次 1. JF Project 文書管理者よりの警告 2. 責任の放棄および著作権 3. 改版履歴 4. 概要 4.1 なぜこの文書を書いたか。 4.2 構築する LAN の概要 5. LAN 5.1 LANの利点 6. ネットワークの構成 6.1 基本構成 6.2 10BASE-T Ethernet 6.3 ケーブル 6.4 ハブ 6.5 NIC 6.5.1 LinuxとNIC 6.5.2 Windows95とNIC 6.5.3 MacOSとNIC 7. TCP/IPネットワーク 7.1 TCP/IPネットワークが行うこと 7.2 IPアドレス 7.3 自由に使っていいアドレス 7.4 ルーター 7.5 サブネットマスク 7.6 DHCP 8. ドメインネーム 8.1 コンピュータの名前 8.2 Linuxの/etc/hosts 8.3 Windowsの\windows\hosts 8.4 MacOSのhosts 8.5 DNS 9. NICを組み込む 9.1 Linux 9.1.1 現在の構成を調べる 9.1.2 ISA カードの場合 9.1.3 PCI カードの場合 9.1.4 Linux の NIC ドライバを設定する 9.2 Windows95 9.3 MacOS 10. Linuxの設定 : netconfig 10.1 HOSTNAME 10.2 DOMAIN NAME 10.3 IP Address 10.4 Gateway Address 10.5 Subnet mask 10.6 Domain Name Server 10.7 Sendmail 11. Windows95の設定 : ネットワークコントロールパネル 11.1 NICドライバ 11.2 TCP/IP ドライバ(導入) 11.3 TCP/IP ドライバ(設定) 11.4 オートダイアル 12. Macintoshの設定 : Open Transport 12.1 ネットワークソフト選択 12.2 利用者モード 12.3 TCP/IP 12.4 FreePPP を使用するとき 13. ネットワーク接続の確認 13.1 ping 13.2 Linux 13.3 Windows95 13.4 MacOS 13.5 相互試験 13.6 問題解決 14. telnet 14.1 telnetとは何か 14.2 Windows95付属のtelnet 14.3 Windows95用のより良いtelnet 14.4 MacOS用のtelnet 15. ftp 15.1 ftpとは何か 15.2 ftp のコマンド 15.3 Windows95付属のftp 15.4 MacOS用のftp 16. 次の一歩 16.1 ファイル共有 16.2 samba 16.3 netatalk 16.4 X端末 16.5 DNS 16.6 DHCP 17. 補足 17.1 IP アドレスをもう少し詳しく 17.2 ネットワークとルーター 17.3 サブネットマスク 17.4 ハブ間接続 18. 終わりに 18.1 ネットワーク運用に関する文献 18.2 ソフトウェア入手先、情報入手先など 18.3 謝辞 ______________________________________________________________________ 1. JF Project 文書管理者よりの警告 この文書の旧版では「外部のネットワークに接続しない場合」に使うドメイン 名の例として、「一番いいのは架空の会社のコンピュータとして名づけるこ と」を推奨し、具体的には o t-rex.ingen.co.jp o microftxxx.luna.co.jp o ann.discovery.co.jp などの名前を挙げていました。この文書が最初に公開された当時はこれらのド メイン名はまだ利用されておらず、また「実験的に使うためのドメイン名」に ついての規則も決まっていなかったからです。 しかし、現在ではこれらのドメイン名は実際に利用されており、またこれらの 名前が勝手に使われていることによる被害も発生しているとの報告もありまし た。 現在では「常時接続」も普及していますし、携帯電話からでさえ手軽に外部 ネットワークに接続できる時代です。上記のような「もしかしたら実際に利用 されているかもしれないドメイン名」はできる限り使用を避けるべきです。 インターネットでの約束事として、例示などに使用するために予約されている ドメイン (RFC2606) というのがあるので、この文書ではその中のひとつを 使って説明します。なお、他にも以下のようなドメイン名がこの目的のために 予約されています。 トップレベル .test .example .invalid .localhost セカンドレベル .example.com .example.net .example.org 2. 責任の放棄および著作権 この文書は般若心経ではありません。が、手に入るものとしては結構いい情報 を含んでいると思います。ハードウェア等に障害が起きるようなことがあって も、一切責任を取りませんので、あしからずご了承ください。いいかえると 「この文書に含まれる情報にしたがってとった行動によって何らかの損害を 被ったとしても、原著者はいかなる責任をも負いかねます」。 この文書の著作権は、堀江誠一にあります。 この文書の配布条件は Free Software Foundation の General Public License に従います。詳細は Linux kernel の linux/COPYING を参照してく ださい。 この文書を出版・配布する場合も、特に私に連絡する必要はありません。ただ し、文書末尾に紹介する「JFの里」で必ず最新版を入手してから配布するよう にしてください。 3. 改版履歴 Ver 1.0 4.Jan.1997 o 初版公開 Ver 1.1 5.Feb.1997 o 著作権に関する、記述を変更 o 3c90x の推奨を削除 o Linux 機への導入を ISA と PCI で分割 o 冗長な記述を排除 o 誤字等の修正 Ver 1.1r1 16.May.2001 o 指摘を受け、ドメイン名設定の部分の記述を変更 o あわせて文書冒頭に警告を新規追加 4. 概要 4.1. なぜこの文書を書いたか。 Niftyserve の funix では、頻繁に「LAN をするにはどうしたらいいでしょ う」といった質問が行われます。普段は辛抱強く応対している猛者も、さすが にこれに関して一言で答えることはできず、「…というソフトがあります」ど まりです。もっとも、「LAN で何をしたいのですか」から始めなければならな い場合がほとんどで、聞いている方も漠然とつなげたいとしか考えていないよ うです。 そこで、初心者が家庭で LAN を組むときに参考にできるような文書を書いて みようと思いました。恐らく多くの人の助けになると思いますし、質問する前 に、自分が何が分からないのか理解する助けになるとおもったからです。 4.2. 構築する LAN の概要 この文書が想定するのは、趣味で構築する家庭内 LAN です。読者としては、 業務ではなく、あくまで趣味でそこそこ楽しみながら LAN を構築したいとい う人を想定しました。また、あまり LAN に関する知識を持たない方を対象と して、"HOWTO" に重きを置いた説明を行います。この文書で説明するのは o Ethernet(10 BASE-T、ハブ) o TCP / IP (IP アドレス、サブネットマスク) o telnet/ftp o Macintosh で上の資源・プログラムを利用する方法 o Windows95 で上の資源・プログラムを利用する方法 o Linux で、上の資源を提供する方法 などです。また、説明しないのは o ルーター、ゲートウェイ o ファイル共有 (samba、netatalk、cap) o ダイアルアップ接続 などです。 上の項目を見てわかるとおり、とにかく LAN を稼働させることを目的として いるので、ファイル共有までは説明しません。その代わり、telnet、ftp とい う良く知られたアプリケーションの簡単な説明を行います。この二つのアプリ ケーションを使うと、Mac や Windows95 を端末として Linux を利用で き、Linux と Mac あるいは Linux と Windows95 の間でファイルのやり取り を行えます。 このように、便利さばりばりとはいえませんが、組み上げる LAN は、守るべ き規則を守ったものにしますので、将来ファイル共有などを行うときにはすん なりと導入できるはずです。 説明するOSの版は o Linux : 2.0.x (Slackwareに固有の説明もあります) o MacOS : 7.5.3 (OpenTransport を 使用します) o Windows : 95 です。 また、ここで説明するのは最低限の知識ですので、決してTCP/IPを使用する上 で十分な知識とはいえません。他の文書によってこれらの勉強を行うよう強く すすめます。文書の紹介は、一番最後にまとめて行います。 なお、この文書のソースは sgml ですので、テキスト以外のファイル形式も JF が配布しています。読みやすいのでテキストよりも html のような形式の 文書を読まれることをお勧めします。 5. LAN 5.1. LANの利点 LANを使うと次のような利点があります。 ファイルを一個所に集められる 複数のコンピュータで作業をしているとき、「あのファイルはどのコン ピュータだったかな」と悩むことはありませんか?ネットワークでコン ピュータをつなぐとファイル保管用のコンピュータを一台にしてしまう ことができます。 いろいろな機械の良いところを使いながら作業できる 私は今でも画像処理は Mac でやるという頑固者ですが、BBS からの気 象情報収集等は Win95 機上で行っています。このように作業を分担す る場合、LAN でデータをやり取りできるというのはたいへん便利です。 実際、私はこの文書を草稿を Mac 上の Claris Works で書き、Linux 上の sgml ツールを使用して文書整形し、結果を Windows の Internet Explore でみながら、Claris Works で書き直しています。 プリンタを共有できる 一台だけプリンタを買っておけば、ネットワーク越しにいろいろなコン ピュータから印刷できます。 高速にデータを送れる 普通はLANを使うとシリアルポートやパラレルポートによる接続より早 くデータを転送できます。 配線が楽 各々のコンピュータを一対一接続すると、N台のコンピュータを接続す るにはケーブルが N*(N-1)/2 本必要です。これはたまりません。LAN にすれば、配線は断然楽になります。 なんかうれしい ばかばかしいと思いますか?趣味でコンピュータをやるときには重要で す。 ファイル共有やプリンタ共有はこの文書では触れていませんが、こういった機 能は、いったん LAN が組みあがったら、すぐ手が届くところにあります。 6. ネットワークの構成 6.1. 基本構成 ここではこの文書が扱う LAN の構成を説明します。次に 10 BASE-T Ethernetに必要なハードウェアの説明をします。LAN を使うことによりモデム よりもずっと速く、複数のコンピュータを同時につなぐことができます。この 文書で例として説明するネットワークの構成は以下の通りです。 +---------+ +----------+ +----------+ | | | | | | | linux | | Win95 | | MacOS | | ann | | betty | | clara | | | | | | | | | | | | | +---------+ +----------+ +----------+ | | | +-----+ | | +----| | | +---------------------------|ハブ | +--------------------------------------------| | +-----+ ご覧のように、3台のコンピュータがあり、それぞれの上で、Linux, Windows95, MacOS が走っています。ann, betty, clara というのは、各々の コンピュータの名前です。それぞれのコンピュータは Ethernet ケーブルを通 してハブという装置につながっています。コンピュータ3台というのは、ネッ トワークらしいネットワークの最小構成です。2台しかつながないと、たとえ れっきとした LAN でもなんかこう物足りないですよね。 コンピュータをネットワークに接続する場合、いろいろなことができます。ま た、家庭内 LAN であれば、結構いいかげんなことをしてもとりあえずは問題 なく動きます。しかし、いいかげんな経験を積んで同じ様なことを会社でやる と、周囲の人に大変な迷惑を与えます。とりあえずはこの文書を読んでおけ ば、会社で接続することになっても「人に迷惑をかけない」ですむように説明 します。基本は「管理者に従え」だけなんですが。また、そういう事抜きにし ても、自分の家にある系が国際規約にばっちりのっとっているというのは、 かっこいいと思いませんか? 6.2. 10BASE-T Ethernet Ethernet は、いわゆる LAN と呼ばれるものの一つです。ネットワークの話を するときに、Ethernet と TCP/IP が両者ともLAN として紹介されるため、多 少の混乱をきたす人がいますが、両者を LAN と呼ぶことは特に間違いではあ りません。 Ethernet は、LAN を使用するときに基本となるハードウェアより の部分を提供します。 Ethernet のことを物理的な結線のことだと考えてもあながち誤りではありま せん。その物理的な結線を利用してネットワークを構築するのが TCP/IP で す。 Ethernet と TCP/IP はこのように別ものですから、Ethernet の上で働 くのはTCP/IP に限りません。NetBEUI (Microsoft), IPX (Novell), AppleTalk (Apple) などのネットワークが、Ethernet の上で動きます。ま た、TCP/IP も Ethernet の上だけで働くわけではなく、PPP を使用してシリ アル回線経由でネットワークと接続することいった事もできます。 Ethernetの種類について説明しましょう。Ethernet は、さまざまな機能強化 と標準化を経て、現在の Ethernet になっています。現在主流なのは、10 BASE-T, 10 BASE-5, 10 BASE-2 と呼ばれる3種類です。データのやり取りの立 場から見ると三者とも同じ物でして、それ程高価ではないハードウェアを使用 して相互に接続可能です。違うのは、どのような線を使用して配線するかとい う点です。三つのうちどれを使用するかという話ですが、低価格や配線の容易 さから、家庭用としては10 BASE-T をお勧めします。他の構成でもいいのです が、この文書では、10 BASE-T のみを説明します。 10 BASE-T の"10"とは10Mbit/sという Ethernet の伝送速度をあらわします。 これはモデムの28.8kbit/s の300倍くらいの速度です。実際のファイルなどを 送る速度が300倍になることはありませんが、何十倍かにはなりますので、ず いぶん気楽にデータを遅れます。次にBASEですが、これは "BASE BAND" とい う言葉からきているとだけ 知っていれば十分です。最後の "T" は、Twisted Pair Cable (以下、対より線。ツイストペアケーブルとも呼ばれています)と いう、10 BASE-T が使用する配線材の名前からきています。対より線とは、ケ ーブルを 2本ずつの対にして撚り、その対を束ね合わせて作ったケーブルで す。このようなケーブルは細くて柔らかく、その上雑音に強くなります。ま た、安価に量産できます。 10 BASE-T を利用したEthernetでは、それぞれのコンピュータと、ハブと呼ば れる装置をケーブルで接続します。そのため、ハブからはコンピュータの数だ けのケーブルが出てきます。もうちょっとハブに接続する線が増える様な構成 方法もありますが、それはここでは触れません。 それでは、10 BASE-T で使用する器材をもう少し詳しく見ていきましょう。 6.3. ケーブル すでにお話したように、この文書で説明する 10 BASE-T では、対より線を使 用します。対より線は安価で、コンピュータやハブへの接続も簡単です。接続 にはモデムでおなじみのモジュラージャックを使用します。 電話機のモジュラージャックは6芯ですが、10 BASE-T では8芯を使用しま す。6芯と8芯は物理的な大きさが全くちがいます。したがってさし間違いが起 きることはありませんし、間違って買ってきたら使えません。モジュラー ジャックとケーブルの加工は、専用の工具を使用します。工具そのものは1, 2万円しますので、でき合いのケーブルを買うことをお勧めします。最近はい ろいろな場所で事務用品(?) としてケーブルを売っています。くれぐれも電 話用と間違えないでください。 実は10 BASE-T のケーブルには2種類あります。ストレートとクロスです。こ こで説明するネットワーク構成ではストレートケーブルしか使用しません。ス トレートケーブルの場合、店では特別な表示をしていない場合がありますが、 「クロスケーブル」とか「ハブとハブの接続用」と書いていないならば大丈夫 です。自信がなければ、店の方に「コンピュータとハブを10 BASE-Tで接続す る」と言えばわかります。 6.4. ハブ ハブとは、自転車のスポークを軸に繋ぎ止める部品です。転じて、何かを一点 に集積する場合、その点をハブと呼びます。Ethernet のハブは 10 BASE-T で だけ、使われます。10 BASE-T のケーブルは両端にしかプラグをつけられませ んので、複数のコンピュータからネットワークを使用するため、ハブ でこれ らを一点に集めて、データ交換を行うのです。別段面倒な設定などなく、利用 者はケーブルを差し込んでハブに電源を供給するだけです。 ハブ は近年大変低価格化が進みました。1万円も出すとちゃんとしたハブを買 えます。家庭用を意識してか手のひらサイズのハブが増えました。家庭内 LAN では手のひらハブで十分です。 ハブは複数の 10 BASE-T ポートをもっています。家庭用ならば 4,5 ポートも あれば十分です。将来自分がたくさんコンピュータを買うかもしれないと思っ ても、特に 8 ポートハブなんかを買うことはないでしょう(そのころには、 「ハブ間接続」というのを自分でやれるようになっているでしょうから、心配 はありません) 。使わないポートは放っておいて構いませんが、心配ならば穴 をふさぐといいでしょう。 ハブには 10 BASE-2 のポートがついているものもあります。家庭用なら 10 BASE-2 のポートはいりません。残念ながらこのポートがないからといって、 あまり安くはなりません。ハブ に 10 BASE-2 のポートがある場合、使用しな いならば単にそのポートをつながないで放っておいてください。これも心配な ら覆いでもかぶせておいてください。覆いはプラスチックのものがハブについ ているかもしれません。なければ秋葉原あたりで金属製の蓋を探すことになり ます。 「デイジーチェーン」ポートを持つハブもあります。ここで説明する構成に は、デイジーチェーンポートは不要です。このポートは、ハブ とハブを接続 する時に使用します。ハブ とハブの接続は、ネットワークの規模を拡大する ときに行いますが、詳しいことはここでは説明しません。デイジーチェーンポ ートを使うと、その隣のポートは使えなくなることもあります。これはハブの 種類によりますので、説明書を良く読んでおいてください。このポートがなく てもハブ間接続はできますので心配することはありません。 ハブ には、Ethernet の 状態を表わす LED がついているものがあります。必 須かというと、そうでもありません。が、確かに「あれ、動きが変だぞ」とい うときには便利です。LED がなくても大して安くなりませんから、最初の 1 台くらいは動作確認をしやすいよう LED 付きを買いましょう。 どのくらいの値段のハブを買うかは悩ましい問題です。大ざっぱな話しとし て、家庭用なら1万円程度で十分だと思います。私は、Planet の EH-500 とい うハブを使っています。1万円程度のハブですが、家庭でも会社でも特に問題 なく使っています。 ハブ の電源はコンピュータの電源に比べると粗末に扱われがちです。電源は しっかりとコンセントにさし、誤って抜けるようなことが無いようにしてくだ さい。LAN の障害は複数のコンピュータが同時に被害を受けるので、コンピュ ータ単体の故障よりも深刻です 6.5. NIC NIC は、Network Interface Card の略です。初期のAT互換機は、ネットワー ク機能内蔵などというものは皆無でしたので、ネットワークといえばカードと 相場が決まっていましたし、今でもそうです。 NIC にも 10 BASE-T/2/5 などに対応したものがありますが、すでに説明して いますように家庭内 LAN では10 BASE-T に対応したもので十分です。この点 で迷う必要はありません。 それでは、それぞれのコンピュータの NIC を説明しましょう。 6.5.1. LinuxとNIC Linux は非常に多くの NIC に対応しています。恐らく現状ではコンピュータ 屋さんのNIC コーナーで目をつぶってつかんだ物を買ってきても、Linux は対 応できるでしょう。しかし、それはあくまで「数々の調査と設定の後」という 条件がつきます。 ある程度のベテランや「設定も楽しみのうち」などという(私のような?)変人 には数々の設定もそれほど問題ではありません。しかし最初はあまり問題に巻 き込まれたくないというなら、やはりしっかりしたものをお勧めします。初心 者のうちはいいものを使えといいますし。 私のおすすめは 3COM の 3C509B シリーズです。3COM は NIC に関して長い経 験をもっています。また 3C509B は市場にでて時間が経っており、店頭に平積 みされるほど流通量が大きいため、製品としても枯れています。このシリーズ は ISA版で、ものによっては 10 BASE-T 以外の Ethernet にも対応してま す。 現在では PCI 機で Linux を使っている人も多いかもしれません。 3COM は PCI 版の NIC も販売しており、PCI を使いたい人は、PCI 版である 3C590 を 買う方がいいでしょう。 PCI カードを使用する利点は、もっぱら設定の容易 さにあります。 PCI バスは割り込みや IO ポーとアドレスの割り付けといっ た問題をすべて起動時に解決してしまいます。ですから、ISA のように PnP 対応云々を考える必要はありません。だまってカードを挿すだけです。逆に PCI 版を買うデメリットがあるかというと、やはり価格でしょう。3C590 は 3C509 に比べると 5 割程度は高いようです。この文書で取り上げる LAN で は、 PCI バスを使用しても速度的にはほとんど見るものはないのではないか と思います。 この文書の最初の版では、3C905 もお勧めしていました。このカードのドライ バは存在しますが、少なくとも Slackware には入っていません。したがっ て、手作業でのドライバ導入をいとわない方には、いまのところお勧めできま せん。勇み足で行き過ぎた推奨を行ったことをお詫びします。 自分で文書を読み漁る気持ちが旺盛で、問題を克服することに怖じ気づかない ならば、もっと安い NE2000 互換カードを買うのも手です。今では NE2000 互 換カードならば、3000 円強程度で手に入るようです。互換機を自分で組み立 てるのになれた人なら、このくらいの出費は失敗しても勉強のうちとして納得 できるかもしれません。NE2000 互換カードの中にはいろいろな問題を持った ものもありますが、たいていは克服可能なようですし、これらの問題はほとん どが設定に関するものですから、一度解決すれば、運用自身には支障はありま せん。 Ethernet-HOWTO を読んでみてください。各種の問題と対策があげてあ ります。 なお、私は 3C509B にしなさいとか 3C509B なら絶対安心などとはいっていま せんからあしからず。偶然、私が 3C509B を良く知っていて、気に入っている だけです。私は 3C509B が特定の状況下で問題を起こすことも知っています。 問題に直面したかって?いえ、Ethernet-HOWTO を読んだのです。ここには NIC を買う前に知っているべき事がほとんど全部書いてあります。自分が買お うとしているカードが問題を起こしそうかどうかあらかじめ調べておくといい でしょう。 Ethernet-HOWTO には、翻訳があります。入手方法などは文書の終わりで紹介 します。 6.5.2. Windows95とNIC Windows95もうんざりするほどの NIC に対応しています。と言うか、この文書 の発表直前である 97 年 1 月の時点で「AT 互換機用だけど Windows95 では 使えません」という NIC を販売している会社があったら、その反骨精神に拍 手したいところです。もちろん、売れ残りは別ですよ。皆さん売れ残りには注 意してください。 Linuxと違ってこっちの方はメーカー純正ドライバがあった りするので、やや気楽に買えるでしょう。これに関しては Windows95 対応の シールがあれば大丈夫だろうといえます。少なくとも Microsoft はそう思っ ているようです(思いたがっている?)。しかし、冒険を望まないなら 3C509B ISA版が良いと思います。お約束ですが保証はできません。あしから ず。3C509B のドライバーは始めから Windows 95 についてきますので新規に ドライバーを導入する必要はありません。 6.5.3. MacOSとNIC MacOS機の場合、現在では LocalTalk と呼ばれるネットワークインターフェー スがはじめから搭載されています。しかし、最近では Ethernet インターフェ ースも内蔵した機種が増えました。後から NIC を増設する場合でも Mac はほ とんどハードウェアのための設定をする必要がないため、作業は楽なはずで す。ただ、Performa の Ethernet Card で苦労したという話を聞きました。機 種によるかもしれません。 NICとは少し話が違いますが、Macはかなり最近までバックパネルに固有の Ethernet インターフェースをだしている機械が多くありました。外つけアダ プタ( AAUI という名前です)で数種類の Ethernet に対応するためでした。し かしながら、そういったMacの場合は外つけのアダプターを買わないと 10 BASE-T と接続できません。最近のMacは10 BASE-T のためのポートをはじめか ら持っているものもあります。古い機種の場合、自分のネットワークアダプタ ーに何が必要かよく調べてからショップで行くとよいでしょう。この場合、店 にあなたの Mac の説明書を持っていくと間違いがないと思います。ただし、 あらかじめ自分で説明書を読んでおいて、話をできるようにしておくこと。 私のMacに関していえば、Quadra650は最初から Ethernet インターフェースを 内蔵していました。外部に10 BASE-T 用のアダプタをつけて使用しています。 なお、Ethernet カードを買うなら 10 BASE-T 対応のものにしてください。 7. TCP/IPネットワーク ハードウェアの話が続きましたので、少しソフトよりの話もしておきます。こ こでは、TCP/IP ネットワークを使用する上で知っておきたい基本的な事をお 話します。 7.1. TCP/IPネットワークが行うこと ここで説明する構成では、TCP/IP ネットワークソフトは Ethernet プロトコ ルを利用して TCP/IP プロトコルを運用します。しかしながら普通はTCP/IP の設定をする場合には、Ethernet に関する知識は不要です。Ethernet に関す る設定は NIC の設定で行うか、何もしなくていいことがほとんどですので、 ここでは TCP/IP について説明します。 TCP/IP ネットワークでは、個々のコンピュータが一つずつ、一意の「IPアド レス」を持ちます。IP アドレスは住所や電話番号のようなもので、 TCP/IP ネットワークでコンピュータを指定するときには、この IP アドレスで指定し ます。 IP アドレスは一度設定されると、特別な理由がない限り変更されませ ん。ですからTCP/IP の世界ではコンピュータは IP アドレスを使って互いを 呼びあえるのです。友達の電話番号が頻繁に変わっているのでは、安心して電 話もかけられないでしょう。これは大変重要です。 TCP/IP ネットワークでは、ユーザーアプリケーションの要求にしたがって、 「指定されたデータを」「指定された場所に」送ります。当たり前だという声 が返ってきそうですが、場所の指定のために、自分の IP アドレスや相手の IP アドレスが必要になります。ですから、IP アドレスの設定は、TCP/IP の 設定作業の中でも重要なのです。これらをコンピュータに教えることが TCP/IP の設定の第一歩です。 7.2. IPアドレス IP アドレスは TCP/IP ネットワークの中で使用するコンピュータの番地で す。世界中のすべての家に別々の住所があるように、世界中のすべてのコン ピュータに別々のIP アドレスをふらなければなりません。これは大変な作業 です。違うコンピュータに同じアドレスをふると、ネットワークが正常に動か なくなります。したがって世界中のネットワーク管理者はそのような事故が起 きないように気をつけています。あなたの家では、この責任はあなたにありま す。 世界中のコンピュータに一意な IP アドレスを割り当てるために公的な機関が 存在します。 IP アドレスは4つの整数の組です。それぞれの数の区切りはピリオドで行いま す。例えば 192.168.1.1 といった感じです。 IP アドレスにはクラスという考え方があります。クラスAは、すごく大きな組 織に、クラスCは普通の組織に、クラスBは中間の組織に使用されます。家庭内 LAN だとクラス C です(家に 255 台以上コンピュータがある人は注意してく ださい)。 ネットワークとその外を区別するために、IP アドレスを二つに分けて考えま す。ネットワーク番号と、ホスト ID です。クラスCでは、左 3 組トがネット ワーク番号で、右 1 組がホスト ID です。 192.168.1.1 ~~~~~~~~~ ~ | | | +--ホスト ID +---------ネットワーク番号 家庭用の LAN や、小規模の LAN では、ネットワーク番号は一つで十分です。 したがって、すべてのコンピュータのネットワーク番号を同じにします。それ ぞれのコンピュータには、最後のホスト ID のみを変更して与えてください。 7.3. 自由に使っていいアドレス Internet に接続するには世界中のコンピュータと衝突が起きないように、公 的機関からIP アドレスをもらう必要があります。このアドレス取得は大変重 要なことで、冗談ではなく、システム管理者はこのような公的なアドレスの遵 守は最高速度遵守とは比較にならないほど厳粛なものだと考えています。 しかし、公的な配布は当然公的な手順によります。ちょっと実験や趣味で使う 上では不自由です。そこで、『外部のネットワークと接続しない』ことを前提 として、自由に使っていいアドレスが決められています。クラスCの場合、 192.168.0.0 から 192.168.255.255 は自由に使っても構いません。しかし、こんな広いアドレスを自由に使ってい ても、間違いやすいだけです。そこで、自分の家では 192.168.1.0 から 192.168.1.255 だけを使うように決めてしまえば、間違いも起こしませんし、実用上十分な広 さです。ところで、IP アドレスは 0 と 255 に特別な意味を持たせていま す。ですから実際にコンピュータに与えることが許されるのは 192.168.1.1 から 192.168.1.254 です。これでも、254 台のコンピュータに割り振れるのですから、十分ですよ ね。 繰り返しますが、上のアドレスは他のネットワークと接続しないことを前提に 使用が許可されています。このような IP アドレスを設定した機械を、外部の ネットワークに接続してはいけません。「外部の」とは、あなたの家以外をさ します。 「では、ダイアルアップも駄目なの?」と思われるかもしれません。ところ が、これはいいのです。いいのですが条件があります。家庭内 LAN からその ままデータが外部に出ていくような設定をしてはいけません。この文書に書い ている範囲の作業の後なら、単にダイアルアップの設定を行っても問題にはな りません。 会社などの組織でコンピュータをネットワークに接続するには、事前に管理者 に IP アドレスの割り当てを申し込みます。 7.4. ルーター これを読んでいる人が、趣味でルーターを使用する機会は少ないと思います。 しかし、会社のネットワークに接続するときには、管理者にルーターの IP ア ドレスを聞いておく必要があります。 また、すでにお話ししたようにルーターのないネットワークでもルーターのア ドレス設定を求められることがあります。その場合、空白にしておくか、自分 自身の IP アドレスを指示します。 7.5. サブネットマスク 自宅で LAN を組むときには理解している必要はありません。ただ、設定は必 要ですので、どのような数字をいれるのかは記憶しておいてください。 自宅で LAN を組み、外部と接続しないのなら、255.255.255.0 を設定しま す。自分の家ではいつもこの値を使うと覚えておけば間違いはないでしょう。 また、この値は、先に説明した自由に使っていいアドレス、 192.168.1.1 から 192.168.1.254 に対応するものです。 念を押しますが、会社や、他のネットワークと接続する系では、必ず管理者の 指示を仰いでください。 7.6. DHCP Windows95 や Macintosh で設定を求められる項目です。使用しないよう設定 します。 8. ドメインネーム コンピュータの名前を数字で呼ぶのは、大変苦痛です。どうせなら気のきいた 名前にしたいでしょう。しかし、LAN で多くのコンピュータを接続すると、他 のコンピュータと名前がぶつかるかもしれません。世界中のだれかが自分の好 きな名前を既に使っているとも限りません。コンピュータに名前をつけるだけ でなく、それを世界で一意にまとめるためのシステムが考案されました。ドメ インネームシステムです。 8.1. コンピュータの名前 Internet の普及ですっかりドメインネームもなじまれるようになりました。 ドメインネームは、アルファベットと数字からなる単語をピリオドで区切った ものです。たとえば、 o wuarchive.wustl.edu o garbo.uwasa.fi o www.yahoo.co.jp などです。ドメインネームシステムでは、左側に行くほど、狭い範囲をあらわ します(ドメインとは領域のこと)。重要な考え方として、最初のピリオドの左 側はコンピュータの名前で、ピリオドより右側は領域の名前であるという見方 があります。例えば garbo.uwasa.fi は、 uwasa.fi 領域の garbo という名 前のコンピュータです。右側の方が広い範囲というのは奇異に感じられます が、例えばアメリカでは住所をこういう風に書きます。 外部と接続しないならばどんな名前をつけていもいいのですが、後でいろいろ なことがわかるようになったとき、自分が馬鹿みたいに感じるのはいやなもの です。ですから、でたらめな名前だけど、規則には従っているという命名を行 いましょう。一番いいのは「インターネットでの約束事として、例示などに使 用するために予約されているドメイン名」を利用して名づけることです。その 場合は、 コンピュータ名.予約ドメイン名 (example.org など) とします。 o t-rex.example.com o microftxxx.example.net o ann.example.org など、好きにしてください。ただし、実際に利用されている可能性のあるドメ イン名はできる限り避けるようにしてください。例え外部に接続しないつもり でも、いつか問題を生じる可能性が無いとはいえません。 ドメインネームを使ってフルネームで、あるコンピュータを示す場合、そのフ ルネームを FQDN (Fully Qualified Domain Name) と呼ぶことは覚えておきま しょう。下の例は架空の秘密組織である example.org にある linux機の名前 です。 +---- FQDN | ___________________ ann.example.org ~~~ ^^^^^^^^^^^^^^^ | | | +-- ドメイン名 +------------ ドメインの中での名前 繰り返しますが、たとえ絶対に外部にネットワークを接続しないと決めていた としても、実在する組織のドメイン名を勝手に使うことは「可能な限り」避け てください。 8.2. Linuxの/etc/hosts さて、TCP/IP ではコンピュータを数字で指定しますが、人間はドメインネー ムシステムにしたがった名前で指定します。コンピュータはどちらで要求が来 た場合でも対応できるようにしなければなりません。したがって、ドメインネ ームによる名前と、数字による名前を対応させる必要があります。この対応を 取るためのデータを持つのが、Linuxでは /etc/hosts というテキストファイ ルです。このファイルでは、IP アドレスとコンピュータの名前をならべて対 応を取ります。たとえば、次のようなファイルになります。 # local host 127.0.0.1 localhost # my computers 192.168.1.1 ann.example.org # Linux 192.168.1.2 betty.example.org 192.168.1.3 clara.example.org # end of file 上の例で、#に続く文字はコメントとして無視されます。また、 127.0.0.1 の 行はおまじないなので、必ず必要です。どんなシステムでも導入時にこの行は 用意されますので消去しないでください。また、自分自身のアドレスと名前も 必ず記述します。 /etc/hosts を変更すると、システムは自動的にこれを認識します。再立ち上 げなどは不要です。 8.3. Windowsの\windows\hosts Windows95 にも、hostsファイルが必要です。これは、 c:\windows\hosts と いう名前にします。Windows95 には c:\windows\hosts.sam という例題ファイ ルがありますが、これは無視して、Linux の /etc/hosts とそっくり同じ物を 作って hosts ファイルとしてください。 \windows\hosts を変更すると、システムは自動的にこれを認識します。再立 ち上げなどは不要です。 8.4. MacOSのhosts こいつは難物という程でもないのですが、注意が必要です。 Mac の Hosts は Linux の /etc/hosts とは書式が違います。書式を例で示しましょう ; local host localhost.example.org A 127.0.0.1 localhost CNAME localhost.example.org ; my computers ann.example.org A 192.168.1.1 betty.example.org A 192.168.1.2 clara.example.org A 192.168.1.3 ; end of file ドメイン名による名前と IP アドレスの順番が Linux の hosts と入れ替わっ ています。また、名前と IP アドレスの間に A という記号があります。 加えて、localhost が Linux と違って FQDN で定義されています。皆さんが localhost を定義するときには、localhost.dsicovery.co.jp のドメイン名の 部分を自分が使用するものと取り替えます。これは、2 行どちらにもいえま す。正直申し上げて localhost の定義が必要かどうか私にはわかりません。 ずいぶん Open Transport のサイトなども漁ったのですが、満足のいく説明は ありませんでした。私は安心のために入れています。 hosts を置く場所は決まっていないのですが、これについてはあとで再度説明 します。 8.5. DNS /etc/hosts を手作業で組み込むのは、組織が大きくなると大変です。そこで DNS ( Domain Name Server)というものが開発されました。これは、ネットワ ーク上にある特定のコンピュータが他のコンピュータに名前と IP アドレスの 組み合わせを教えてくれる仕組みです。この先勉強した後に挑戦するのも面白 いと思いますが、とりあえず今は使いません。 会社でネットワークにコンピュータを接続するときには、管理者に DNS サー バーのアドレスを問い合わせてください。 9. NICを組み込む さあ、楽しい機械いじりの時間です。子どものころ、お母さんが後ろを向いて いるすきを見計らって大事なミニカーを分解したことを思い出しながらねじ回 しを握りましょう。 注意:機械に NIC を組み込む前に、ネットワーク無しの状態でちゃんと動く よう設定してください。Linux 機は DOS でも立ち上がるよう用意しておいて ください。 以下では NIC 設定の手続きを機種ごとに説明します。どの時点で NIC を挿入 するかは機種によって異なりますので、それぞれの説明を参照してください。 9.1. Linux ここから先で、Linux の割り込み番号と IO ポート番号の割り振りの調査を行 い、3C509 の割り込み番号設定と IO ポート番号設定の説明、最後に PnP の 無効化をします。これらの作業は他の ISA カードでも同様と思われます。 また、PCI 版の製品を買った人は、これらの作業をせずに挿すだけです(多 分。少なくとも私の 3C590 はそうでした)。ただ、 PCI といえども念のため にカードを挿す前に割り込み番号と IO ポート番号を控えておきましょう。こ ういう習慣はいつの日か、ひどい目にあったときに何らかの救いになります。 9.1.1. 現在の構成を調べる NIC を挿す前にあなたの Linux 機についているオプション類の IO ポートア ドレスを知る必要があります。これは、NIC と他のデバイスがぶつからないよ うにする為です。すでに Linux が働いているなら、これはたやすい作業で す。ログインして、 cat /proc/ioports を実行してください。すべてのデバイスのアドレスが表示されます。これをノ ートに書き写します。以下は私の部署の機械の例です。 0000-001f : dma1 0020-003f : pic1 0040-005f : timer 0060-0060 : kbd 0064-0064 : kbd 0070-007f : rtc 0080-009f : dma page reg 00a0-00bf : pic2 00c0-00df : dma2 00f0-00f1 : npu 00f8-00ff : npu 01f0-01f7 : ide0 0300-030f : 3C509B 0340-035f : aha152x 03bc-03be : lp 03d4-03d5 : ega+ 03f6-03f6 : ide0 03f8-03ff : serial(auto) 左の2つの数字は、デバイスが割り当てられている IO ポートアドレスの範 囲、右の名前はデバイス名です。すでに 3C509B が組み込まれているのがわか ります。当然ですが、あなたの機械ではまだ 3C509B は現れません。 次に同様に IRQ の番号を調べます。 cat /proc/interrupts これもノートに記録します。以下は私の部署の機械の例です。 0: 125984732 timer 1: 2 keyboard 2: 0 + cascade 10: 276614 3C509B 11: 3445 + aha152x 13: 0 math error 14: 1095770 + ide0 左端の数が、IRQ です。2番目の数は無視してください。右の名前はデバイス 名です。 Linux がまだ満足に動いていなければ、がんばってちゃんと動くように仕上げ てください。以上の作業が終わったら機械をシャットダウンし、 NIC を挿し ます (電源を落としてからですよ)。 9.1.2. ISA カードの場合 次に非常に大事な作業があります。3COM の 3C509B は、Plug And Play 対応 です。まだ Linux は PnP に未対応である為に、時折厄介な問題が起きます。 そこで3C509B の PnP を無効にしなければなりません(くどいようですが、PnP を無効にするのは ISA カードの場合だけです。 PCI では考えなくて結構で す。)。 3COM のカードに限らず、Linux で使用するカードは PnP を無効にした方がい いでしょう。 3C509B には、DOS の英語モードで動く設定ソフトウェアが付い てきます。これに対応するマニュアルも英語です。この二つを頼りに、PnPを 無効にしなければなりません。しかし、決して難しい英語ではありませんし、 読まなければいけないのも数ページですのでがんばって乗り切ってください (日本語マニュアルのついているものもあるようです)。また、設定ソフトウェ アを使用するために DOS で起動する必要があります。これはフロッピーから でも構いません。ただ、Linux 専用機でも保守の為に20MB程度の DOS 起動パ ーティションをハードディスクに設けておく方があとあと便利です。 この設定ソフトは、PnPの他にもいろいろなオプションをいじれますが、間 違っても Ethernet Address をいじってはいけません。 さて、ここで、先に記録した IO ポートアドレスと IRQ の登場です。説明書 と見比べて、工場出荷時の 3C509B の IO ポートアドレスと IRQ が、現在の Linux の使用済みのものとぶつかっていないか調べてください。ぶつかってい なければ、 PnP を無効にするだけでおしまいです。ぶつかっていれば、PnPを 無効にしたうえで、3C509B の IO ポートアドレスと IRQ を変更します。当 然、ぶつかっているほうだけを変更します。 以上のような設定ソフトによる割り込み番号と IO ポートアドレスの変更は 3C509B 以外でも似たり寄ったりです。ひょっとすると 設定ソフトではなく ジャンパーで設定するような NIC もまだあるかもしれません。 さて、NIC の変更が終了したら、設定ソフトをぬけて機械を再起動し、Linux を立ち上げます。 9.1.3. PCI カードの場合 くどいようですが、PCI カードの場合は、黙って挿し込むだけです。とくにカ ードのための設定ソフトを使用することはありません。 うまく行かないようなら、Ethernet-HOWTO、PCI-HOWTO、ハードウェアの取扱 説明書、この文書をよく読み直してください。 9.1.4. Linux の NIC ドライバを設定する カードの設定が終わりましたので、 Linux 側をカードに対応する作業に進み ましょう。この作業は ISA に限らず PCI カードでも必要になります。 私は Slackware しか使ったことがありませんが、2.0.x カーネルでは、だい たいネットワーク対応に作っているようです。つまり、ネットワークを使用す るために特別にカーネルを入れ替えたり、カーネルコンパイルをする必要はあ りません。 Slackware では、ネットワーク対応は、いったん Linux の基本部分の導入を 終えてから行います。そこで、最初の Slackware の導入は、ネットワークサ ポート無しで行っておいて下さい(ネットワークありでも構いませんが、設定 はこの文書を読んでからのほうが気が楽です)。Slackware 3.1 では、導入時 にどのようなカーネルを使用するか聞いてきます。しかし、特にネットワーク 云々を指定しなくても、 NIC ドライバは起動時に動的に読めるので問題無く 働きます。 さて、 NIC の設定です。 NIC ドライバを起動時に読み込むため に、/etc/rc.d/rc.modules を編集します。これが NIC に対する Linux 側の 設定となります。 Linux は、起動時にデバイスドライバーを動的に読み込む機能をもっていま す。古いカーネルでは、デバイスドライバーはカーネルのなかにコンパイル時 に埋め込まれていたのですが、モジュール機能が追加されたことによって、こ のように動的にドライバーを読み込めるようになりました。 /etc/rc.d/rc.modules は、各種のモジュールを起動するための仕掛けを記述 しています。これは modprobe と呼ばれ、指定されたデバイスがどこにあるか を見つけ、必要なパラメータを設定して起動します。これのおかげで NIC 対 応は大変楽です。作業は簡単です。まず、 # Network Device Support と書かれた行を探してください。そこから先が NIC ドライバモジュールのた めの記述の先頭です。ここでほとんどの行は # マークでコメントアウトされ ています。これは、全部のデバイスを探していると、とんでもない時間がかか るためです。これらの行は #/sbin/modprobe DEVICENAME の形式になっています。この DEVICENAME が NIC の名前ですので、自分のカ ードを探しましょう。3C509B ならば、コメントをはずすだけで大丈夫のはず です。つまり、頭の # をはずして /sbin/modprobe 3C509 と変更します。 上は 3C509B の例ですが、 NE2000 互換カードの場合、この行の後ろに IO ポ ートアドレスを指定しなければなりません(rc.modules に書いてあります)。 また、デバイス名が ne であることに注意してください。以下のようになりま す。 /sbin/modprobe ne io=0x300 このファイルを保存して、設定を終了してください。Linux を再起動してNIC が正しく認識されたか調べます。起動時にメッセージを見逃しても、 dmesg コマンドを使用すれば、起動時メッセージをログイン後に見ることができま す。正しく認識されているならば作業はおしまいです。 NIC が正しいようなら、ついでに配線の確認もしましょう。LED つきのハブを 使用しているなら、ハブの電源をいれます。このとき、Linux 機の NIC と、 ハブの LED を調べて、「キャリア検出」が行われているかどうか確認しま す。キャリア検出とは、NIC とハブの間で電気信号のやり取りが可能であるこ とを確認するための作業です。この LED がついているならば、配線はある程 度大丈夫です。 9.2. Windows95 最初は NIC を挿さずにいてください。 まず各デバイスの IO ポートアドレスと IRQ を調べるために Windows を起動 します。「コントロールパネル」の「システム」を開いて「デバイスマネー ジャ」タブを開きます。この時点で、デバイス同士の衝突がある場合、そのデ バイスドライバのアイコンにびっくりマークがつきますので、注意深く見てく ださい。 びっくりマークが出ている場合、システムの設定に問題があります。これを解 決してから先に進んでください。 ここで NIC を挿します(電源を落としてですからね)。 NIC が Windows95 対応のシール付きならば、そして BIOS が PnP が対応なら ば、さらに他の機器がすべて PnP が対応ならば、そうでない場合、ICU によ る設定が正しいならば、そうした上で Microsoft の主張が正しいなら ば、Windowsは起動時に NIC を見つけ、正しいドライバを導入します。 先ほどと同様な手順で、デバイスマネージャを見ます。衝突がないことを確認 してください。衝突があったら…全力で解決してください。あなたはお金を 払ってNIC やコンピュータや Windows を買ったのですから、メーカーに質問 するのも手です。この文書は…残念ながら PnP-HOWTO ではありません。 事が順調にすすめば、NIC の設定は終わりです。 NIC が正しいようなら、Linux 機同様に配線の確認をしましょう。ハブの電源 をいれ、Windows 機の NIC と、ハブの LED を調べて、「キャリア検出」が行 われているかどうか確認します。この LED がついているならば、配線はある 程度大丈夫です。 9.3. MacOS MacOS に関しては、NIC を使用したことがありませんので何も言えません。申 し訳ありません。Performa の特定機種に関しては、設定が難しいものもある ようです。マニュアル等を参照してください。 MacOS 機でも、Linux 機や Win95 機同様キャリア検出の確認を行いま す。Mac は機種によってはキャリア検出 LED が本体ではなく Ethernet アダ プタ側にありますので注意します。 10. Linuxの設定 : netconfig すでに NIC のためのモジュールは正しく動いていますでしょうか。 /proc/interrupts や、/proc/ioports が正しいと思われる結果を返してくる ならば、いよいよ TCP/IP の設定に入ります。Slackware の場合、ネットワー ク機能の導入は、NIC 導入後をお勧めします。理由は技術的なものではな く、setup コマンドが自動的にネットワーク設定に突っ走るので、心の準備が できていないとびっくりするだろうと考えてのことです。 ネットワーク機能の導入は setup コマンドで行います。root でログイン 後、setup コマンドを実行し、ソースを選択します。その後、ディスクセット の選択に移りますが、その際、"N" ディスクセットを選択してください。これ がネットワーク対応のためのディスクセットです。ディスクセット中の何を導 入するかについては、無指定でかまいません とりあえず Linux のお勧めだけを導入します。 setup コマンドはディスクセットの導入を終えると、例によってブートフロッ ピーを作れだの、LILO はどうするだの聞いてきます。こういった設定などは 既に終わっているはずですので今回は特にこれらの設定をする必要はありませ ん。すると、最後にネットワーク設定が現れます。 ここで間違ってネットワーク設定を終了しても大丈夫です。ネットワーク設定 はいつでもnetconfig コマンドで行えます。netconfig コマンドは、ネットワ ークに関する設定を一つずつ対話的に行っていきます。以下にはその説明を行 います。必ずしも同じ用語や順番どおりとは限りませんのでご注意を。可能な 限りnetconfigの動作を思い出していますが、目の前で再設定したわけではあ りません。動いているネットワークをいじるのはだれだって恐いのです。;-) ここでは次の例にそった設定を行います。 ______________________________________________________________________ 名前(FQDN) :ann.example.org IP アドレス:192.168.1.1 IP クラス :C ルーター :なし DNS :なし ______________________________________________________________________ 10.1. HOSTNAME HOSTNAME はあなたの Linux 機がネットワークの中で何と呼ばれているのかを 示します。何でも好きな名前をつけてかまいませんが、英数字だけにします。 また、発音可能な名前が良いでしょう。ここでは、ドメイン名を含みませんの で、例に従うと ann のように一語の名前になります。ピリオドをつけてはいけません。大文字でも 小文字でもかまいませんが、Unix 文化圏では「大文字は品がない」と考えら れていることは知っていていも良いでしょう。 10.2. DOMAIN NAME DOMAIN NAME は、Linux 機が所属するネットワークの名前です。ここの例では example.org となります。大文字小文字を問いません。ここで Linux は「あなたのコン ピュータはループバックしか行いませんか? 」と聞いてきます。ここは、"N" と答えます。 "Y"と答えると、外部と通信できません。 10.3. IP Address IP アドレスはあなたが Linux 機にふりたいアドレスをそのまま書きます。例 では 192.168.1.1 です。 10.4. Gateway Address ルーターのことです。ルーターは今回使用しません。ここには、自分自身のア ドレスを書いておきます。 192.168.1.1 10.5. Subnet mask クラスCである事を指定します。ここに書き込むのは、 255.255.255.0 です。家庭内 LAN では、サブネットマスクはこの値だと覚えておくとよいで しょう。 10.6. Domain Name Server DNSサーバーは使用しません。使用しないと設定してください。 10.7. Sendmail Sendmailに関する設定が出てくるかもしれません。その場合は、/etc/hostsだ けによると設定してください。 以上ですべての設定が終わりました。すでに説明したように /etc/hosts を作 成してLinux を再起動してください。 再起動後、root でログインすると、これまで darkstar だったプロンプトが ann になっています。 11. Windows95の設定 : ネットワークコントロールパネル Windows95 になってから、ネットワークコントロールパネルが提供され、すべ ての NIC ドライバ、上位プロトコルドライバが集中的に管理できるようにな りました。おかげで問題解決も 3.1 のころに比べると格段に楽になっていま す。もっともとんまな PnP がたまに事態を収拾不能にすることもあります が。とにかく、以前よりずっと楽なので、一つ一つ作業を確実にやれ ば、TCP/IP の設定はさほど問題なく行えるはずです。とりあえず素行をただ して祈りでもあげておきましょう(信心深い方ですか?)。 ここでは次の例にそった設定を行います。 ______________________________________________________________________ 名前(FQDN) :betty.example.org IP アドレス:192.168.1.3 IP クラス :C ルーター :なし DNS :なし ______________________________________________________________________ 11.1. NICドライバ ネットワークコントロールパネルを開いてください。すでに NIC の導入は終 わっているので「現在のネットワーク構成」の中に NIC の名前が見えるはず です。 11.2. TCP/IP ドライバ(導入) さて、TCP/IP ドライバを持ってこなければなりません。まずは導入からで す。 TCP/IP ドライバは Windows といっしょに配布されています。 すでに導入されている可能性もありますので、まずそれを確認しましょう。 ネットワークコントロールパネルの「現在のネットワーク構成」に "TCP/IP -> XXXXX" という表示を探してください(あるいは、"TCP/IP")。XXXXXはあな たの NIC の名前です。この表示があれば、 TCP/IP ドライバは既に導入され ていますので、TCP/IPの設定に移ります。 TCP/IP ドライバを導入するには、ネットワークコントロールパネルの「ネッ トワークの設定」タブを表示した状態で、「追加」ボタンを押します。新しい ダイアログが表示されますので「インストールネットワーク構成ファイル」か ら、「プロトコル」を選択し「追加ボタン」を押します。 ここで「ネットワークプロトコルの選択」ダイアログが表示されます。「製造 元」からMicrosoft を選んでください。さらに「ネットワークプロトコル」か ら TCP/IP を選びます。「OK」ボタンを押し、指示にしたがってドライバを導 入します。 ドライバの導入が終わったら、Windows を再起動し、もう一度ネットワークコ ントロールパネルを開きます。「現在のネットワーク構成」に "TCP/IP -> XXXXX" という表示が現れます(あるいは TCP/IP)。これが TCP/IP ドライバで あり、XXXXX はあなたの NIC の名前です。 11.3. TCP/IP ドライバ(設定) 次はTCP/IPの設定です。TCP/IP ドライバを選択し、「プロパティ」ボタンを 押します。そうすると、「TCP/IP のプロパティ」ダイアログが開きます。こ こでネットワークの設定を行います。 設定は右側のタブから行います。 「IP アドレス」タブを選びます。「IP アドレスを指定」ラジオボタンを選ん で、 IP アドレスとサブネットマスクを設定します。値はそれぞれ 192.168.1.3 255.255.255.0 です。 「Wins」タブは無視します。 「ゲートウェイ」タブは、空欄でかまいません。 「DNS」は「使わない」を選択します。なお、すでにダイアルアップネットワ ークを使用している人は、DNS に何らかの設定がされているはずです。その場 合は、変更しないでください。 残りの二つのタブは無視します。 11.4. オートダイアル ダイアルアップ接続をすでに利用している場合は、自動的にプロバイダーに接 続されるよう、「オートダイアル」が設定されていることがあります。これを 切らないといけません。切らない場合、LAN を使用する度に Windows95 がダ イアルアップを行おうとします。その場合、ESC キーを押すと、LAN を使用で きます。 コントロールパネルの「インターネット」を開くと、「オートダイアル」タブ が現れます。「オートダイアルを使う」のチェックをはずしてください。 しめくくりとして、c:\windows\hosts を準備してください。 12. Macintoshの設定 : Open Transport Open Transport は、MacOS から種々のネットワークを利用するための仕組で す。 Open Transport は設定が容易で、設定変更後も再起動しなくていいなど の利点があります。 最近では、Open Transport もすっかり安定し、68K Mac でも動きます。Open Transport を使用すれば、AppleTalk、TCP/IP をすっきりと管理できますの で、いまではこれを使ったほうが便利です。 ここでは次の例にそった設定を行います。 ______________________________________________________________________ 名前(FQDN) :clara.example.org IP アドレス:192.168.1.2 IP クラス :C ルーター :なし DNS :なし ______________________________________________________________________ 12.1. ネットワークソフト選択 なによりも Open Transport を使えるようにしなければなりません。漢字 Talk 7.5.3 を使っているなら、起動ディスクに「Apple エクストラ」という フォルダーがあります。そのなかの「ネットワークソフト選択」というアプリ ケーションを起動してください。ウインドウが現われたら、Open Transport を選びます。 再起動してコントロールパネルから「TCP/IP」を選んでください。TCP/IP 設 定のウインドウが現われます。 12.2. 利用者モード 不注意による誤操作からネットワークソフトを守るため、OpenTransport の設 定はパスワードで保護されています。TCP/IP ウインドウが現われたら、編集 メニューの「利用者モード」を選んでください。利用者モードダイアログが現 われます。「情報を管理」ラジオボタンを選ぶと、最初の一回だけはパスワー ドを設定するよう求められます。二回目からはパスワードをいれるよう求めら れます。正しいパスワードをいれると、「情報を管理」に設定されます。これ で OK ボタンを押すと、TCP/IPの設定ができるようになります。 12.3. TCP/IP TCP/IP ウインドウの一番上には、「経由先」ポップアップメニューがありま す。これを「Ethernet」にします。そのほかはここでは無視してください。 まず、「経由先」横の「802.3を使用」のチェックがはずれている事を確認し てください。チェックがついているならば、はずしてください。 次に枠線のなかの「設定方法」を「手動」にします。 その下の IP アドレスを「192.168.1.2」に、サブネットマスクを 「255.255.255.0」にルーターアドレスを「192.168.1.2」に設定します。 ネームサーバーや、ドメイン関係の設定は空欄で結構です。 つぎに「Hostsファイルの選択」ボタンを押します。MacOS は Hosts がどこに あってもいいという困った設計なのですが、ここは昔を懐かしんで、システム フォルダーにHostsを置きましょう。Hostsは SimpleText で作成しておきま す。書式はすでに説明したとおりです。 最後にこれまで設定した項目の「鍵マーク」をすべてクリックして閉じてくだ さい。そのあと利用者モードを「基本情報のみ指定」に変更すると、手違いで 設定が変わることから保護できます。 以上で設定は終了です。 12.4. FreePPP を使用するとき FreePPP を使用してダイアルアップ接続を利用する場合は、 LAN を使用する 場合とダイアルアップ接続を行う場合で TCP/IP の設定を一部変更します。変 更といっても、ダイアログボックスの「経由先」指定を FreePPP か Ethernet に変更するだけです。この変更は、アプリケーション起動前に行います。切り 替える場合でも再起動は必要ありません。 13. ネットワーク接続の確認 ネットワークの設定が終わったら接続を確認します。すべてのコンピュータを 再起動してください。 13.1. ping ping コマンドは、ネットワーク中の特定のコンピュータに信号を送り、答え が返ってくるか確認するためのものです。 「沈黙の艦隊」では潜水艦が相手位置を確認する為にソナーを一発撃つことを ピンと呼んでいました。あるいは先輩によると「ping を撃つと pong が返っ てくる」そうです。 13.2. Linux Linux にログインし、次のコマンドを実行してください。 ping ann.example.org これは、自分自身に信号を送っています。結果として PING ann.example.org (192.168.1.1): 56 data bytes 64 bytes from 192.168.1.1: icmp_seq=0 ttl=255 time=1.4 ms 64 bytes from 192.168.1.1: icmp_seq=1 ttl=255 time=1.5 ms 64 bytes from 192.168.1.1: icmp_seq=2 ttl=255 time=1.5 ms 64 bytes from 192.168.1.1: icmp_seq=3 ttl=255 time=1.5 ms 64 bytes from 192.168.1.1: icmp_seq=4 ttl=255 time=1.5 ms 64 bytes from 192.168.1.1: icmp_seq=5 ttl=255 time=1.5 ms 64 bytes from 192.168.1.1: icmp_seq=6 ttl=255 time=1.5 ms などという表示が Control-C を押すまで続きます。これは、指定した機械に 接続できているか調べているのです。自分に接続できているのは当たり前と思 うかもしれませんが、ここでうまく行かなければ、TCP/IP か Ethernet に関 する設定が間違っているのです。ここまでうまく行けば設定はある程度あって いることがわかります。 13.3. Windows95 DOS コマンドプロンプトから ping を実行します ping betty.example.org うまく行ったら、Windows に関する基本設定はあっています。 13.4. MacOS Mac には Ping は付いてこないのですが、アップルが ftp サイトで MPing というソフトを配布しています。入手して設定の試験に使用しましょう。入手 方法はこの文書の終わりに書いてあります。 MPing は GUI ソフトなので上の 2 者とは使い勝手が違います。しかし、起動 してしまえば、すぐに使い方は分かります。私としては Verbose モードをお 勧めする程度しか、ここに書くことはありません。それとて、必須ではありま せんし。とにかく、ここでも自分自身に対して Ping を撃ってみましょう。う まく行けば、設定はある程度正しいと考えられます。 13.5. 相互試験 これまでの自分に対する Ping が正しく動くなら、いよいよそれぞれの機械同 士で Ping を撃ち合いましょう。例えば、Win95 機から ping ann.example.org ping clara.example.org のように、Linux 機と MacOS 機に撃ちます。 13.6. 問題解決 ping を撃って返事がないときにはどうしましょう。近所に敵艦がないのは喜 ばしいですが、ネットワークがつながらないのは困ります。 ハブ に LED がついているのなら、ping を撃ったときに LED が瞬くかどうか 調べてください。瞬かないならば、撃った方に問題があります。瞬くならば、 o 自 hosts に問題がある o 相手に問題がある などが考えられます。一つの手として、 ping 192.168.1.2 のように、直接アドレスを指定する方法もあります。これでうまく行くなら ば、 ping を撃った側の hosts ファイルに問題があると思われますので、そ れを確認してください。 また、自分に撃った ping は返ってきても、他の機械に撃ったものが返って来 ないことがあります。このような時は、相手の設定やケーブル、ハブを疑いま しょう。 すべての機械の間で ping が正しく結果を返すようになれば、設定はすべて終 了です。 14. telnet ネットワークの設定が終わると、Linux では自動的に telnet と ftp が使え るようになります。 14.1. telnetとは何か はじめから複数の人が同時に使用することを前提に開発された Unix では、シ リアル回線に端末装置をつないで作業を行うことができました。TSS と呼ばれ たこのシステムは、数十人の人が同時に一台のコンピュータを使用するとい う、パソコン世代には考えにくい環境です。それでも、 TSS 以前は、パンチ カードの束をもって列に並んでコンピュータ様を使う順番が来るのを待ってい たので、これはこれで便利でした。また、モデムを使うと遠隔地(例えば自分 の研究室)からメインフレームやミニコンを使えるのも重宝されました (研究 室にコンピュータなんかあるわけなかった時代です)。 ネットワークの開発に携わっていた人たちが、複数のコンピュータを接続した とき、「ネットワークごしに使う端末ソフト」がすぐ開発されました。これを 使えば、高速のネットワークを介して、遠方のコンピュータを使用できます。 TCP/IP 上では、この様な端末は telnet と呼ばれます。厳密にいうと、 telnet は、TCP/IP の更に上で働く端末プロトコルです。現在では、いろいろ なコンピュータ上で動く非常に多くの端末ソフトが telnet プロトコルを利用 できるよう開発されて。おかげで linux を大変気軽に遠隔操作(古い!)でき ます。 X 端末を、家庭で使用できる時代に、telnet の様なキャラクタ端末を使う利 点は何でしょうか。当たり前の話ですが、いつも telnet を使用しているな ら、Linux 機に CRT をつながなくて済みます。我が家では Linux はファイル サーバーとして使用しているだけですので、何も X 端末を走らせる必要はあ りません。結局 Linux の操作はすべて telnet 経由ですので、普段は CRT ど ころか キーボードも触らない始末です。何台もコンピュータを買い込むと配 偶者からの圧力が大きくなりそうですが、中古のラップトップ機に Linux を 導入し、telnet で使用するようにすれば、こっそり使うことができます。本 体は机の下にテープで留めるとか。 グラフィックス処理をしないならば、telnet は十分使いでがあります。ふつ うの GUI 端末ソフトは複数の telnet 画面を開けますので、それぞれの画面 にログインして、使用できます。emacs を使っていれば、キャラクタ画面もさ ほど苦しくはありません。 最後になりますが、「telnet が使える」というとき、二つの意味がありま す。一つは、そのコンピュータ上の端末ソフトが telnet を利用して他のコン ピュータを使用できる場合です。もう一つは、そのコンピュータを他のコン ピュータから telnet 経由で操作できる場合です。Linux は両方できます が、Windows や Mac は普通は端末として利用できるだけです。 蛇足ですが、私は端末ソフトを使用する場合、黒地に緑のキャラクターを表示 させることが多いです。単なる郷愁ですが。 14.2. Windows95付属のtelnet Windows95 には、はじめから telnet.exe という端末ソフトが付いてきます。 ちゃんとしたソフトですから取っ掛かりには十分でしょう。ただし、画面サイ ズやキーの割り当てに不満があります。 使用するには、DOS のコマンドプロンプトから、 telnet ann.example.org のように入力します。 14.3. Windows95用のより良いtelnet TERATERM PRO は、Win32 対応のターミナルソフトです。このフリーウェアは telnet プロトコルに対応しており、高速で大変快適に使用できます。 利点として、 o ウィンドウサイズを変更すると、縦横のキャラクタ数が変わる。したがっ て、80*25 以外の大きさに自由に変更できる。 o うえの操作を行うと、emacs や、less が自動的に追従するので、操作が ぐっと快適になる。 o キーの割り当てが、emacs を使用するときに便利。 などがあります。おすすめの一本です。私はもうこれ無しではいられませ ん。 14.4. MacOS用のtelnet MacOSようには NSCA telnet を日本語化したソフトがあります。これも画面サ イズ変更でキャラクタ数を変えられるので便利です。 以上の端末ソフトはインターネット雑誌の付録 CD-ROM などにも集録されてい ます。 15. ftp ftp も基本的なネットワークが動き出した段階で使用できるソフトウェアで す。 15.1. ftpとは何か Niftyserve のような BBS を通信ソフトで利用する場合、主に二つの操作があ ります。一つは会議室の表示のような利用方法で、これにあたる機能が telnet であるといえます。もう一つの機能は「ファイル転送」で、アップロ ードやダウンロードのことです。 ftp は ファイル転送のためのプロトコルです。そもそもこれは File Transfer Protocol の略です。telnet と同じく、プロトコルと同じ名前のコ マンドが用意されていることが多くあります。 telnet と違って、ftp には気をつけなければならない点がいくつかありま す。一つはログイン権限です。普通の設定では、パソコンから ftp を使う場 合、 root でログインすることはできません。これはセキュリティーの観点か ら設けられている制限です。普通はこれが問題になることはありません。一般 ユーザーでログインすればいいのですから。たまに管理用のファイルを PC 側 から転送するときに困るくらいです。その場合も一般ユーザーとして ftp を 使用し、別ウィンドウで telnet を root として使用すれば解決できます。一 般ユーザー権限で転送したファイルを root としてログインした shell のコ マンドで希望するところにコピーするのです。 ftp のもう一つの注意点は、転送モードです。ftp には ascii 転送モード と、binary 転送モードがあります。binary 転送モードは与えられたファイル を忠実にすべてのビットが等しくなるよう転送するのに対し、ascii モードで は、行末の改行を、転送先のコンピュータにあわせて修正します。このような 処理が必要なのは、行末に使用する文字がOSによって異なるためです。 すでに経験なさっている人もいるかと思いますが、Unix で書いたテキストは たとえ英語だけであっても、Windows のメモ帳で開いてもきれいに読めませ ん。これは、改行文字が異なる為で、ワードパッドのように、自動的に改行文 字を正してくれるソフトでなければ、読むことができないのです。 したがって、転送したいファイルの内容に応じて、binary モードと ascii モ ードを切り替える必要があります。 15.2. ftp のコマンド ftp は、telnet と違っていくつかのコマンドを覚える必要があります。以下 に基本的なコマンドを列挙します。なお、当然ですが、 GUI ベースの ftp ク ライアントソフトは、コマンドを覚えなくてもよいものがあります。 ? ? コマンドは、コマンドの一覧を表示します。 cd cd コマンドは、現在のディレクトリーを変更します。現在のディレク トリーとは、 ftp サーバー(この文書で説明している LAN では Linux)のディレクトリーです。このコマンドを使用して、Linux のファ イルシステムを渡り歩きます。 ls ls コマンドは現在のディレクトリの内容を一覧表示します。 put と mput put コマンドは、ローカル(あなた側)からリモート(Linux 側)へファイ ルを転送します。mput コマンドは複数(multiple)のファイルをローカ ルからリモートへ転送します。ファイル名にワイルドカードも使えま す。 get と mget get コマンドは、リモートからローカルへファイルを転送します。mget コマンドは、複数ファイルをリモートからローカルへ転送します。ファ イル名にワイルドカードも使えます。 ascii ascii コマンドは、転送モードを ascii 転送モードに変更します。こ のコマンドは、put、 get 両者に有効です。 bin bin コマンドは、転送モードを ascii 転送モードに変更します。この コマンドは、put、 get 両者に有効です。 prompt prompt コマンドは、mget と mput が複数ファイルを転送するときに 1 ファイル後とに転送の可否の問い合わせを行うかどうかを指定しま す。 quit quit コマンドは、ftp を終了します。 15.3. Windows95付属のftp Windows 95 には、ftp がはじめからついています。DOS コマンドプロンプト で ftp と打ち込んでください。プロンプトが出ますので、 open ann.example.org と打つと、 Linux へのログインのためのプロンプトが現れます。終了するに は close quit と、コマンドをうちます。 15.4. MacOS用のftp MacOS 用には以前から fetch というよく知られたソフトがあります。これは フリーのソフトとして配布されていましたが、最新版はシェアウエアとなって います。fetch は GUI ベースの優れたソフトで、最近の版はドラッグ & ド ロップにも対応しているようです。 16. 次の一歩 どうでしたか?たいていの人はこれでネットワークが稼動しはじめたと思いま す。まだの人は多分なにか設定を間違えているのでしょう。かっかしないでコ ーヒーでも飲んで休むと、あっさり間違いが見つかったりします。それでもだ めなら一週間ほど寝かせてみると、自分の誤りも見つけやすくなります。 さて、端末を使って Windows 95 から Linux を使えるようになりました。 ファイル転送もできるようになりました。で、次は? 焦る気持ちも分かります。この先、だんだんと手をかけることは増えてきま す。本も読まなければなりません。HOWTO 文書もどんどん読まないといけない でしょう。実はそうやって、先へ先へと自分の力で進めるのが Linux の面白 いところです。きっと何年もの間没頭できるほどやることはあるのですが、い くつか面白そうな話しを挙げてみましょうか。 16.1. ファイル共有 やっぱり何といっても興味深いのはファイル共有でしょう。 MacOS を使って いる人は 1992 年頃から漢字Talk 7.0 がファイル共有を標準で提供してくれ ています。 Windows を使用している人も英語版なら Windows for Workgroup から、日本語版なら NT からファイル共有ができるようになりました。 ファイル共有は、あるコンピュータのファイルやディレクトリーを、まるで他 のコンピュータのディスクの上にあるように見せる仕掛けです。たとえ ば、Linux の /pub ディレクトリを Windows95 の p: ドライブのように使用 できます。こうすれば、いったん ftp でファイルを読み込まなくても普通の Windows アプリケーションで Linux 上のファイルを読み書きできます。 Linux ではどうなのでしょうか?できます!Linux のディレクトリを Windows 95 のネットワークドライブとして見せるソフトがあります。それだけじゃな く、Linux のディレクトリを MacOS のネットワークボリュームとして見せる ソフトもあります。この二つを組み合わせれば、 Linux を軸にして MacOS と Win95 の間でデータのやり取りを簡単に行えます。 「そんなの Windows NT Server でもできるよ。」はい、よくご存知ですね。 そんなによくご存知なら、Windows NT Server のお値段もご存知ですね。 Linux にはフリーウェアのネットワークファイルサーバーソフトがありま す。Windows 95 / NT 用には samba、MacOS 用には netatalk です。このどち らも、Linux を印刷サーバーにすることができます。 16.2. samba samba はオーストラリアで開発されたネットワークファイルサーバーソフトで す。 samba を使えば、samba が走っている機械のファイルシステム を、Windows 95 や、Windows NT から使用することができます。Windows 側で は特別なソフトを導入する必要はありません。95 なら、「Microsoft ネット ワーククライアント」という、紛らわしいことこの上ない名前のクライアント サービスをネットワークコントロールパネルから導入するだけです。そうし て、このクライアントサービスは、Microsoft の純正品であり、Win95 にはは じめから付いてきます。おまけに NIC を導入した段階で、気を利かしてハー ドウェアウィザードが勝手に導入してしまいます。 samba は、実に快適なソフトです。設定のための HOWTO 文書類がいくつか翻 訳されており、英語が苦手な人でも割合気安く導入できます。また、私は利用 していませんが、Linux プリンタを Windows から使用することができます。 samba は最近の Linux の配布 CD-ROM にも入っていることがあります。ま た、そうでない場合も、インターネット経由で ftp を使用してソースコード を入手できます。 16.3. netatalk netatalk はアメリカで開発されたネットワークファイルサーバーソフトで す。 netatalk を使えば、netatalk が走っている機械のファイルシステム を、MacOS から使用することができます。MacOS 側では特別なソフトを導入す る必要はありません。すでに述べた Open Transport 設定をさらに行うだけで す。samba は、Mac のファイルのリソースフォークをLinux の隠しファイルと して処理してくれるほか、Unix が作ったファイルの拡張子から Mac 向けに type/creator 情報まで追加してくれます。 netatalk も HOWTO 文書が翻訳されていますので、導入に関して特に難しい点 はありません。また、ちょっと前まで、netatalk を利用して Linux 上に作っ た Mac のフォルダーが samba 経由で利用している Win95 から見えないこと があるという問題がありましたが、これは samba 側が漢字ファイル名の処理 方法のオプションを増やしたため解決しました。詳しくは netatalk-HOWTO の 日本語版をご覧ください。 netatalk と同様のソフトとして、cap というのもあります。 16.4. X端末 ほとんどの皆さんは、Linux の導入が終わるとごく当たり前に X を導入する ようです。ウィンドウもバンバン開けるし、マウスは使えるはワークステー ション気分ですし、いい事ずくめです。ですから、みんなネットワークより先 に X を…なんで「次の一歩」かって? もともと X 端末はクライアントサーバー式のグラフィック環境なんです。め ちゃ速の計算サーバーを中心に、利用者の相手などという些末の事は遅い端末 計算機に任せようというのが発想です。ですから、X のサーバーは、クライア ント(計算サーバー)から離れていてもいいのです。そう、ネットワークでの運 用ですね。 こたつに潜り込んでノートパソコン上の X 端末を操作しながら、隣の部屋の ペンティアム機でカーネルビルドなどどうでしょう。 私は、会社の HP 製計測器が X クライアントになると知ったとき、あまりの 嬉しさにオフィス中にネットワークをひくことを計画しました。 (そして実現 しました) 16.5. DNS DNS は、この文書で徹底的に無視したソフトです。DNS は、Domain Name Server の略で、この文書では hosts ファイルでちまちま定義した IP アドレ スとコンピュータの名前の関連づけをサーバーコンピュータで行うソフトで す。そうして、他のコンピュータはこのサーバーに問い合わせを行うのです。 Unix で育った他のいくつかのソフトウェア同様、 DNS も今やネットワークに 不可欠なソフトウェアになっています。一般利用者が DNS の存在に気づくこ とはめったになく、それゆえ、sendmail 同様、名前ばかりが普及して、実際 に何を行っているのかを知っている人は少ないです。 DNS の設定は面倒なため、家庭内 LAN ではあまり使用する気もおきないかも しれません。しかし、Windows 95 も MacOS も DNS クライアントとしての機 能をちゃんと持っていますので、次なる目標として面白いかと思います。DNS の設定に関しては、いくつかの本で触れられていますし、最近ではパソコン雑 誌の PC Unix 特集でも設定に関して説明が載ることがあります。 16.6. DHCP DHCP (Dynamic Host Configuration Protocol) は、ネットワーク上のコン ピュータの IP アドレスまでも、一台のサーバーが割り振ってしまえるプロト コルです。このプロトコルは、以前から Unix で使用されていた bootp とい うプロトコルの拡張版です。日本の WIDE プロジェクトが実装した DHCP サー バーがありましたが、Linux 上には移植されていませんでした。しかし、最近 になって bootp デーモンを拡張した DHCP が Linux 用に公開されています。 この仕掛けも家庭内 LAN では必要ありませんし、サーバーが常にクライアン トより早く立ち上がっていなければならないという非常に厳しい運用上の制限 があります(私のサーバーはAm5x85 133MHz なので、必ずしもクライアント機 である P5-133 より早く立ち上がっているわけではありません)。しかし、挑 戦課題としては面白いと思います。 17. 補足 17.1. IP アドレスをもう少し詳しく IP アドレスは 4 つの整数からなる、等と書きましたが、実際には 32bit の ビット列です。ただ、これでは設定時などに間違いやすいので、表記するとき には 8 ビットづつ 4 バイトに分け、それぞれのバイトを整数表示していま す。このため、 4 つの整数をピリオドで区切った値が通常 IP アドレスとし て通っているのです。 IP アドレスに A, B, C のクラスわけがあることは既に説明しました。A, B, C とだんだん規模が小さなネットワーク向けになるのでしたね。クラス C で は、左側の 3 つの数(つまり左側 3 バイト)がネットワーク番号で、右側の1 つの数(右 1 バイト)がホスト ID でした。 クラス A: 10.1.1.1 ~~ ~^^^^ | | | +--ホスト ID +---------ネットワーク番号 クラス B: 172.16.1.1 ~~~~~~ ^^^ | | | +--ホスト ID +------ネットワーク番号 クラス C: 192.168.1.1 ~~~~~~~~~ ^ | | | +--ホスト ID +---------ネットワーク番号 一見してわかるように、クラス A は、一つのネットワーク中に多くのホスト ID (つまりコンピュータそのもの)をもつことができます。そのかわり、クラ ス A ネットワークはほんのわずかしかこの世に存在できません。逆にクラス C ネットワークは同じネットワークの中にたかだか 254 程度しかコンピュー タを接続できませんが、沢山のクラス C ネットワークを作ることができま す。 詳細は避けますが、IP アドレスにとって、0 や 255 は特別な数です。ですか ら、いくら使用が許されているからといって 192.168.255.1 の様なアドレス は使わないでください。 また、この他にも使用を控えたほうがいい番号などもあるのですが、そういっ たアドレスは、クラス C を使う上では無関係です。家庭内 LAN アドレスとし て 192.168.1.1 から 192.168.1.254 がすすめられるのは、安全が確保されているからという理由があるのです。 17.2. ネットワークとルーター すごく大きなネットワークを考えましょう。例えば接続されているコンピュー タの数が 1千万台を超えるような単一のクラス A TCP/IP ネットワークです。 電気的な話しを別にすればこの様なネットワークは可能です。しかし非常に大 きな問題が起きます。 このネットワークは単一のネットワークですから、ネットワーク中のあるコン ピュータが信号を送信すると、すべてのコンピュータが受信します。各々のコ ンピュータは IP アドレスをみて、自分宛でなければ、その信号を廃棄しま す。ところが、非常に多くのコンピュータがあるのですから、廃棄する回数が ものすごく多くなってしまいます。その上、Ethernet をはじめとする多くの ネットワークではネットワーク内部であるコンピュータが送信していると、他 のコンピュータは送信できません。結果的にネットワークの速度が低下してし まいます。おまけに、ネットワークに障害が起きると全部に影響が及びます。 この様な事態を解決するには「分割して統治せよ」というのが最上の方法で す。単一の大きなネットワークの代りに複数の小さなネットワークを考えま しょう。各々のコンピュータの送信データは、そのコンピュータが所属する ネットワークにだけ送信されます。また、ネットワークの外にあるコンピュー タと通信するときだけ、送信データを互いのネットワークに流します。この様 にすると、最初にあげた問題はすべて解決します。 残る問題は、どうやって二つのネットワークを接続し、外に出す出すべきデー タと一つのネットワークに閉じ込めるデータを分別するかです。 ルーターはこのネットワークの接続とデータの分別を行う装置です。ルータに は複数のネットワークを接続するためのポートがあります。また、どのネット ワークにデータを流すにはどうすればいいかを知っており、信号の分別と他 ネットワークへの再送信を行います。ただし、信号を他のネットワークに流す には、そのデータがルーターに向けて送信される必要があります。 外部のネットワークに向けたデータをルーターに送るのはデータを送ろうとす るコンピュータの責任です。 TCP/IP を設定するときにルーターアドレスを指 定するのはこのためです。送りもとのコンピュータは、データの行き先の IP アドレスと自アドレスのネットワーク番号を比較して、違っていればルータに 送信します。 17.3. サブネットマスク ルーターを使用するとネットワークの管理をしやすくなるため、みんなが小規 模のネットワークを使用するようになります。すると、また弊害が起きてきま す。例えば、クラス C ネットワーク一つで間に合う場合でも、クラス C ネットワークを 20 位持とうとするかもしれません。これではクラス C の ネットワークはあっという間になくなってしまうでしょう。また、ある会社に データを送る場合、ルーターは宛先の会社の各々の小さなネットワークに送る 方法を知らなければなりませんから、管理データがどんどん大きくなります。 これを解決するために考えだされたのがサブネットです。サブネットは一つの ネットワークをネットワーク内部では複数のネットワークとして扱う方法で す。ネットワーク内部では複数ネットワークに見えますから、各々のネットワ ークではトラフィックの削減などが行えます。また、外部からはあくまで単一 のネットワークですから、データの送り方の管理が小さな管理領域で行えま す。 サブネットを作るにはサブネットマスクを使用します。本文で「サブネットマ スクは家庭内 LAN では常に 255.255.255.0 だと覚えましょう」と書きました が、これはクラス C ネットワークではサブネットなしの状態です。このマス クを例えば、255.255.255.192 とすると、マスクの自分の最後の 8 ビットが 11000000 なので使用しているクラス C の単一のネットワーク番号の下に外か らは見えないサブネットが 4 つできることになります。 サブネットは外からは見えませんが、ネットワーク内部では各々が独立した ネットワークに見えます。ですから、サブネットどうしの接続にはルーターが 必要です。 17.4. ハブ間接続 家庭内 LAN も、軌道に乗ってくると少し規模を拡大したくなるかもしれませ ん。たとえばサーバーは1階において2階の2部屋からもサーバーを利用できる ようにしたい等々。この場合、2階まで2本の10 BASE-T ケーブルを引いてもい いのですが、どうもかっこ悪いといわざるをえません。ただでさえ家人に白い 目で見られているのに…。 このような場合、2階まで 1本のケーブルをひいて、2階から2本に分けるのが きれいなやり方です。2本に分けるにはハブを使います。言葉をかえれば1階 と2階のハブの間を1本のケーブルで接続します。そこでハブ間接続について考 えましょう。 本文で、「この文書の LAN ではストレートケーブルしか使用しない」と説明 しました。10 BASE-T ストレートケーブルはハブとコンピュータの間を接続す るためのケーブルです。ハブとハブの間はストレートケーブルでは接続できま せん。このような接続をすると、二つのハブの送信線どうし、受信線どうしが 結線されてしまい、送受信ができません。正しくハブ間で送受信を行うには、 どこかで送信と受信の線をいれかえればいいのです。この方法には 2 種類あ ります。 クロスケーブルは、ケーブル自身の結線で送信と受信を入れ替えます。この場 合、ハブの通常のポート間をクロスケーブルで接続することによって正しいハ ブ間の通信を行います。 ハブ間接続のもう一つの方法は、デイジーチェーンポートを使用する方法で す。デイジーチェーンポートは、ハブ内部で送受信の結線を入れ替えていま す。したがって、片方のハブの普通のポートと他方のハブのデイジーチェーン ポートをストレートケーブルで接続すると、ハブ間の接続をうまく行えます。 くれぐれもデイジーチェーンポートの間をストレートケーブルでつなぐなどと いうことがないよう、注意してください。 ハブによっては非常に多い段数のハブのデイジーチェーン接続を保証している ようですが、あまり高級なハブを使わないのならハブ 3 段くらいの接続にと どめる方がいいでしょう。どうしてももっと多いハブを使用したい場合は、複 数のハブを一つのハブで束ねるやり方もあります。これは、主ハブに複数のハ ブが接続されていて、それらのハブにコンピュータを接続するような使い方で す。こうすればうまく行きますが、この様に規模の大きなシステムになると、 それぞれの部品の信頼性や、管理などが重要になってきます。 18. 終わりに 18.1. ネットワーク運用に関する文献 私が日頃読んでいる本を紹介します。なお、後述の JF の里には Linux 関係 書籍のオンライン書評/投票結果が公表されています。書籍を買う前に他の読 者の声も聞いて見ましょう! Running Linux 導入からネットワーク構築まで 本当の Unix 初心者向けに Unix コマンドの説明からはじめている入門 書です。ただし、手取り足とりといった雰囲気ではありません。 HOWTO 文書群と組み合わせて読むといいと思います。内容は一般的で網羅的で す。分厚い本で、6283 円という値段に後込みする方もいらっしゃいま すが、胸に手を当てて考えてください。忘年会費はどの位でしたか?酒 なんてゲロ吐いて終わりですけど、本は手元に財産として残りますよ。 オーム社。 Linux ネットワーク管理 こっちはぐっとネットワークよりの本です。ネットワークがらみの設定 は Unix 毎に方言がありますので、こういう Linux に特化した本は助 かります。基礎がわかっている人はこちらの方がいいでしょう。オーム 社。 18.2. ソフトウェア入手先、情報入手先など Linux Documentation Project (LDP) LDP は Linux の文書整備のための中心的なプロジェクトです。このプ ロジェクトからは数々の有用な文書が生まれています。 http://sunsite.unc.edu/mdw/ からは、常に最新の文書が入手(あるい は検索)可能です。また、最新のプロジェクトへのリンクもあり、非常 に有用なホームページです。 JFの里 http://epsenewsc.gee.kyoto-u.ac.jp/JF/JF.html は、HOWTO 文書など の翻訳や、Linux 関係の日本語文書の整備活動をしている JF のホーム ページです。ここで、活動内容などを知ることができるほか、日本語版 ドキュメントの最新版を入手することもできます。 JF のミラー ftp:" /ftp.iij.ad.jp/pub/linux-j/JF には、上記 WEB サイトの FTP のミラーがあります。このミラーは Niftyserve の ftp から簡単にア クセスできますので、Internet に接続できない方はこちらから入手す るといいでしょう。 TeraTermProのバイナリ http://www.vector.co.jp のホームページから、「Windows95」、「通 信ソフト」、「通信ソフト、RS-232Cドライバ」とボタンを押していき ます。 MPing のバイナリ ftp://ftpdev.info.apple.com/Developer_Services/Tool_Chest/ Networking_-_Communications/MacTCP/MPing_1.1.sit.hqx sambaのWEBサイト http://samba.canberra.edu.au/pub/samba/ samba のミラー ftp サイト o ftp://nimbus.anu.edu.au/pub/tridge/samba/ o ftp://ftp.gbnet.net/pub/samba/ o ftp://ftp.micro.caltech.edu:/pub/samba/ o ftp://ftp.demon.co.uk:/pub/mirrors/samba/ o ftp://ftp.uni-trier.de/pub/unix/network/samba/ o ftp://CAIR-archive.kaist.ac.kr/pub/samba/ o ftp://choc.satech.net.au/pub/samba/ o ftp://sunsite.mff.cuni.cz/Net/Protocols/Samba/ o ftp://ftp.cs.ucr.edu/pub/software/samba/ o ftp://ftp.ua.pt/pub/misc/samba/ o ftp://ring.asahi-net.or.jp/archives/net/samba/ o ftp://ring.aist.go.jp/archives/net/samba/ o ftp://despair.capecod.net/pub/Samba/ o ftp://samba.anu.edu.au/pub/samba/ netatalk の WEB サイト http://www.umich.edu/ rsug/netatalk/ netatalk のソースコード ftp://terminator.rs.itd.umich.edu/unix/netatalk /netatalk-1.3.3.tar.Z 18.3. 謝辞 最後になりましたが、本文書を作成するにあたって、多くの助言を JF-ML の 皆さんからいただきました。ありがとうございます。 また、Paul Gortmaker 氏からは著作権記述に関する文体を「盗む」許可をい ただきました。ありがとうございます。