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4. ソフトウェア

4.1 カーネル

オリジナルのカーネルは IBM PC/AT 及びその互換機用ですので、そのま までは FM TOWNS では動作しません。しかし FM TOWNS への移植作業 は非常に精力的に行われており、オリジナル版とそれほど変わらない版が動 作しています。 2001 年 3 月 29 日現在、2.0 系の Linux/TOWNS カーネルは Linux/TOWNS 2.0.39-01、2.2 系は Linux/TOWNS 2.2.19-01 が、そして、最新 バージョンの 2.4 系のカーネルでは、Linux/TOWNS 2.4.2-01 が、 公開されています。

4.2 X Window System

FM TOWNS 向けの X Window System のパッケージは、X TOWNS と呼ばれてい ます。X TOWNS は、もともと、X11R5 のソースコードを元に、作成されました。 その後、Linux など、PC-UNIX 用の X サーバーとして、XFree86 が、一般 的になってきたことにより、XFree86 をもとにするようになり、X11R5 系 (XFree86 2.1) と X11R6 系 (XFree86 3.1.2) のものが移植されて利用され るようになりました。最新のものは、XFree86 3.3.6 をベースとして作成さ れています。 高解像度機(モデル MX, MA, HA, HB, HC)を含め、内蔵 VRAM がサポート されています。最近の TOWNS版サーバ X TOWNS では、16色 / 256色 / 32768色 / 1677万色のサーバ(1677万色は高解像度機のみ)がひとつに統合 されており、設定を変えて起動することにより様々な画面モードで動作します。 TOWNS 標準の VRAM を使った X サーバーの他に、Windows アクセラレータ カードも使用可能になっていて、八戸ファーム社から発売された HV1-T(HyperView) 用のサーバや、FMT-3631 用サーバもあります。

一部の FM TOWNS (Fresh E, ES, ET, FS, FT, モデル HA, HB, HC)に標 準で内蔵されている Windows アクセラレータ(Cirrus 社 GD5430:Fresh 系 / GD5434:H* 系)を使ったサーバも公開されています。

4.3 svgalib

IBM PC/AT の DOS で利用されているグラフィック環境を実現するための ライブラリです。オリジナルは IBM PC/AT 用なのですが、 FM TOWNS 用には svgalib-1.2.10 が移植されています。 著名なゲームソフトウェアであ る「DOOM」にはこの svgalib を利用した版があり、Linux/TOWNS 上でも動 作します。

4.4 Linux/TOWNS 用ソフトウェア

内蔵 PCM 音源用録音再生ツール、Standard MIDI ファイル(SMF)の演奏、 MIDI 出力、ファイルビューワ、高速 / 互換モード切り換え、ソフトウェア 電源 OFF、FM TOWNS 機種判別、svgalib 版 JPEG ビューワ、コンソール の表示コード (S-JIS/EUC) 切り換えコマンド等々があります。 また DOS 環境から Linux/TOWNS を起動するツールもあります。 X Window System のソフトフェアとしては、CD プレーヤ、PCM サンプリング ツール、TV 表示(要ビデオカード)などがあります。

4.5 日本語環境

もともとの Linux は、日本語の表示については考えられていませんでした。 PC/AT互換機では、これを解決するために、通常、kon と言うソフトウェアを 使用します。

これに対し、Linux/TOWNS は、標準コンソールが、日本語表示に対応して います。このため kon を用いなくても日本語表示する事が可能です(kon は、PC/AT互換機のハードの仕様に依存しているので、TOWNS では、動作し ません)。 TOWNS の標準コンソールは、EUC/シフトJISコードへ対応しています。切替 えは、キー操作または、kanjimode コマンド、ioctl() によって行います。

なお、フレームバッファコンソールという Linux 標準のフレームバッファ デバイス(これとは、別に TOWNS 独自のフレームバッファデバイスが、存在 します)を使用したコンソールでは、そのままでは、日本語表示できません。

こちらを使用している場合、jfbterm というツールで日本語表示に対応する ことが、可能です(ただし、8 bpp への対応が必要なため Linux/TOWNS 2.4.0test1 or 2.2.16pre15-01 以降が必要です)。

上記のように、Linux/TOWNS は、標準で日本語表示が可能ですが、それだけ では、日本語を扱う環境として十分では、ありません。

Linux は、もともとは、英語圏の環境向きでした。しかし有志による日本語化 のプロジェクト(JE) によりの追加パッケージの形で日本語が使用できる環境が 実現されました。このプロジェクトは、その後、 PJE (Project Japanese Extensions) として引き継がれましたが、現在は、日本語化の役割は、各ディストリビュ ーションへと移っています。

JE/PJE などの活動成果として、必要なソフトウェアはたいてい、日本語化され ており、また日本語で記された文書が豊富に作成されています。 Slackware をベースとした Linux/TOWNS の環境では、この JE や PJE で、 日本語化されたソフトが、ほぼ、そのまま動作します。

PJE をインストールする際は、kon など、TOWNS で必要ない物も含まれて いますので、この部分は、インストールしないようにしましょう。

4.6 TOWNS で使用できるディストリビューション

FM TOWNS は、初期段階(JE1 の頃)は、SLS(SoftLanding Linux System) で、動いていました。その頃は、他に一種類しかディストリビューション は、存在していませんでした。

最近の Linux ブームで、(特に商用の)ディストリビューションが増え ましたが、TOWNS では、非商用のディストリビューションへの対応が中心 となっています。

Slackware をベースとした Linux/TOWNS パッケージ

最近の Slackware とは言えませんが、Slackware-3.1 をベースとした Linux/TOWNS としては、Linux Japan Vol.2 に付属していたものが、最新 です。これとほぼ同等な物として、『RUN RUN Linux 第2版』、『Linux入門』 が、存在します。なお、Slackware-3.5 を収録している『RUN RUN Linux 第3版』 では、Linux/TOWNS パッケージは、収録されていません。ご注意ください。 もともとの The Slackware Linux Project では、日本語化されていませんでしたが、TOWNS 用のインストーラは、 大部分が、日本語化されて、一部パッケージも日本語に対応しています。

厳密な、パッケージ管理と言う思想ではないので、ソースをコンパイル して利用する方に向いています。

これだけでは、日本語化は不十分なので、日本語追加パッケージ(JE、 または、PJE)などと組み合わせて使用します。

なお、Slackware-7.x では、glibc2 化されているので、これらの Slackware 用の TOWNS パッケージを用いての TOWNS 対応は、難しい でしょう。

Debian/TOWNS パッケージ

Debian GNU/Linux は Linux カーネルと GNU プロジェクトに由来する 多くの基本ツールをベースに構成されるフリーなディストリビューションです。 再インストール不要と言われる強力なパッケージ管理、パッケージ数の多さ、 オープンな開発環境などが、大きな特徴と言われています。

Debian GNU/Linux は、 Debian Project という国際的なボランティア団体がメンテナンスしていますが、 日本人のメンバーも多数参加して、日本語への対応を行っています。 現在では、この Debian GNU/Linux だけで、 日本語環境の構築が可能になっています。

この他、日本での活動として、 Debian JP Project があり、Debian に関する文書の日本語訳やメーリングリストの運営などが 行われています。

Debian GNU/Linux 1.x は、libc5 系で、Debian GNU/Linux 2.0 以降は、 glibc2 系です。

TOWNS への対応は Debian GNU/Linux 1.3.1 版の頃からなされており、 現在は、Debian GNU/Linux 2.2(potato) 版に対応した Debian/TOWNS がインストーラを含めて公開されています。

Plamo/TOWNS パッケージ

Plamo Linux は Slackware と PJE の流れをくむ 日本語化されたディストリビューションです。 こじまさんを中心としてとりまとめられ、 Plamo Linux のホームページ にて公開されています。

Slackware をベースとした Linux/TOWNS では、 1次と2次のインストールに別れていましたが、Plamo/TOWNS では、 一回でインストールできます。

Slackware 同様、厳密な、パッケージ管理と言う思想ではないので、 ソースをコンパイルして利用する方に向いていています。

Plamo-1.4.x は、libc5 系で、Plamo-2.0 以降は、glibc2 系です。

Vine Linux を TOWNS で動かす

RPM によるパッケージ管理を行うディストリビューションです。 PJE のメンバー有志を中心とした Project Vine にて作成されています。 もちろん、日本語化されています。詳しくは、 Vine Linuxのページを 参照してください。

この Vine Linux を TOWNS で動かすための試みが、実現しつつあります。 Vine Linux 1.1 の TOWNS 版が動作しており、2.1 は対応中となっています。

4.7 日本語ドキュメント

日本語文書を整備する JF プロジェクト( Linux JF (Japanese FAQ) Project )により、多くの文書が、翻訳されたり、独自に作成されています。 もともと FAQ, HOWTO などの文書を翻訳する事を目的とした JF とは、 別に、日本語オンラインマニュアルパッケージの作成、配布を行なっている プロジェクトも存在します。

  • JM Project Linux の日本語マニュアルを作成するためのプロジェクト。
  • X Japanese Documentation Project X Window System 関連のマニュアルは、PC UNIX で、共通に使えるため 共同で日本語マニュアルを作成するためのプロジェクトです。

4.8 その他のソフトウェア

文書処理系では TeX, エディタでは vi, emacs, mule 等、かな漢字変換 サーバでは、wnn, canna, sj3 が動作します。 最近流行のインターネットに関するソフトも動作します。ppp, slip, plip, PPxP といったドライバや、WWW クライアントである NCSA Mosaic や Netscape、メール・ニュースシステムとしての uucp, sendmail, mnews, inn など、色々なソフトが動きます。 また IBM PC の DOS 環境をエミュレートする dosemu や、Macintosh ソ フトの動作環境をエミュレートする Executor も動きます。IBM PC/AT互換機 自体をエミュレートする VMware も一部に制限を受けるものの動作するよう です。これにより、通常は、FM TOWNS で、動作しない OS も、動作する事が 可能です。


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