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3. 提言

なぜウェアラブルを作らなければならないかと考える人や、購買責任者に自分の アイデアを売りたい人がいるかも知れません。その人たちのためのアイデアが いくつかあります。

3.1 なぜウェアラブルなのか

なぜなら自分自身で試してみたいから、または人とコンピュータの相互作用は 次世代のウィンドウマネージャを設計する次元のこととは違うから、あるいは enhanced reality (エンハンスト・リアリティ) は自分自身を 革新する決定的な要素であると感じるからです。

3.2 ウェアラブルという概念、それは「革命」ではなくて単なる「進化」

革命的な、またはそう呼ばれる製品に不安を感じる人もいます。 そういう人にとっては気の休まる話をしますと、 ウェアラブルは革命的な概念に見えるかも知れませんが、 実際はコンピュータハードウェアの進化にすぎません。

それは、こういうことです。まずはじめに メインフレームがあり、次いでデスクトップコンピュータが出てきて、人々が 事務所でコンピュータとともに働けるようになり、さらにそれはパーソナルコンピュータ となって自宅での仕事を可能にしました。その後、ポータブル PC がでて、電源のある ところならホテルの部屋でもどこでも仕事ができるようになりました(そう、Osborne ポータブルパーソナルコンピュータまたは IBM PC コンバーティブルは、はっきり言って ラップトップではありませんでした)。同時に Sharp PC1500、 Canon X07、 Casio PB100 などいくつかのポケットコンピュータが市場に現れました。PC1500 はだんだん存在感が 薄れてきて、X07 は 消滅したが LCD を残し、他のものとともにそれらの遺産で ラップトップが出現します。ラップトップが主流になるにつれその寸法はだんだん 小さくなり、乗り物のなかでも図書館のなかでも使えるようになりました。 そして HP95LX のようなパームトップ PC および PDA が出現して(現時点で最も 成功しているのは PalmPilot のファミリーとそのクローンです)、移動中でも仕事が できるようになり、ウェアラブルはこの小型化の動きのすぐ次の段階と言えます。

(ラップトップと Linux についてさらに詳しく知りたいなら Laptop-HOWTO を 見てください。最新版は Werner Heuser の Homepage にあります)

3.3 ウェアラブルのユーザーは優位に立てる

現在の競争社会においては、他の企業より優位に立てるということは非常に重要な ことです。航空機を修理する企業を例にとると、ウェアラブルを使用する 技術者たちは、仕事をする間、設計図を要求して時間を浪費することなく、随意に 設計図およびテクニカルデータを入手できて、航空機をより早く修理することが できます。あなたの仕事の分野においても類題があるかもしれません。

3.4 ウェアラブルという概念は「忍びよる脅威」

製品や技術の中には、初めて市場に現れたときには、控え目に言っても完全とは言い難い ものもありました。これは忍びよる脅威と言うべきもので、 Clayton Christensen 著 "The innovator's dilemma" (邦題 『イノベーションのジレンマ - 技術革新が巨大企業を滅ぼす時』) または Andy Grove 著 "Only the paranoid survives" (邦題 『インテル戦略転換』) を読むと、企業が一つの製品を当てにしたり、お山の大将的な製品を所有して いると新製品/新技術を見過ごして、崩壊してしまうことがあるのがわかります。 新製品/新技術は、当初は扱いにくくて市場の隙間に存在するだけでしたが、やがて それが市場を乗っ取りました。

3.5 ウェアラブルコンピューティング - 先端産業

プロジェクトに投資しようとする人たちは、必ずしも技術の詳しい話を好むわけ ではないので、別の論理を展開しなければなりません。そうでないと大事な プロジェクトがゴミ箱(/dev/null)行きになってしまいます。AP Sloan 著 "My years with General Motors" (邦題 『GMとともに』) の第2章を再読すると、ウェアラブル産業が、20世紀初頭における米国の 自動車産業の変貌と同じような変化をしようとしているのは明らかです。自動車産業は、 いくつかの小規模製造業者の道楽から大量販売産業に変わりました。 自動車産業が変貌するには 30 年ほどかかりましたが、 ウェアラブル産業では、5 年も経たないうちにこのような変貌をとげるに違いありません。 この製品に投資しないなら必ず他の誰かが投資します。


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