Wearable-HOWTO. Lionel, trollhunter Bouchpan-Lerust-Juery v0.0.9 November 2000 日本語訳 長岡昭平 nagaoka@jttk.zaq.ne.jp 翻訳年月日: 2001 年 8 月 15 日 コンピュータ社会の主要な流れの 1 つがノーマディズム(訳注:コンピュータ 環境をすべて携えたまま移動すること - Nomadism)です。現在たいていの人 は、ラップトップコンピュータさえあれば仕事はできるので、これまでのとこ ろ敢えてその先へ進もうとはしませんでした。その先、つまりコンピュータと 共に生活する、言葉をかえれば、コンピュータそのものを身につける段階、そ れがウェアラブルです。 ______________________________________________________________________ 目次 1. 緒言 2. ウェアラブルとはなにか 3. 提言 3.1 なぜウェアラブルなのか 3.2 ウェアラブルという概念、それは「革命」ではなくて単なる「進化」 3.3 ウェアラブルのユーザーは優位に立てる 3.4 ウェアラブルという概念は「忍びよる脅威」 3.5 ウェアラブルコンピューティング - 先端産業 4. 使用されている CPU 4.1 PDA 仕様のウェアラブル 4.2 PC/104 およびラップトップ仕様のウェアラブル 4.2.1 PC/104 とはなにか 4.2.2 PC/104+ とはなにか 4.3 トランスメタのプロセッサ、Crusoe 4.4 その他 5. 電源 6. OS 7. Sulawesi プロジェクト 7.1 背景 7.2 Sulawesi のアーキテクチャ 7.2.1 入力レベル 7.2.2 コアレベル 7.2.3 出力レベル 7.3 センテンス(自然言語で構成された文)の翻訳 7.4 まとめ 8. もっぱら CLI だけ 8.1 CLI とは 8.2 なぜここで CLI の話になるのか 8.3 テキストモードでできること 8.4 ユーティリティ類 8.4.1 シェルとスクリプト言語 8.4.2 sed と awk について 8.4.3 ユーティリティ類の重複 8.5 エイリアスとスクリプト 9. 入力 9.1 キーボードの種類 9.1.1 ミニキーボード 9.1.2 片手操作キーボード(One hand keyboard) 10. オーディオ出力 11. 映像出力 11.1 へッドダウン表示装置 11.1.1 腕時計型 11.1.1.1 市販の製品 11.1.1.2 腕時計型コンピュータ 11.1.2 PDA タイプ 11.2 へッドアップ表示装置 11.2.1 阻害感のある表示装置 11.2.1.1 LED を使った簡単な装置 11.2.1.2 Sony GLASSTRON 11.2.1.3 M1 11.2.1.4 VRD ( 仮想網膜表示装置 ) 11.2.2 阻害感のない表示装置 12. 通信 13. ウェアラブルの入手 13.1 市販の製品 13.2 DIY(自作) 14. PalmPilot とそのクローン ( IBM、 HandSpring、 TRG ) - ウェアラブルの新種 14.1 パーム ファミリー 14.2 PDA で動作する Linux 15. ウェアラブルの携帯方法 16. ウェアラブルの利用 16.1 軍隊の現状 16.2 病院において 16.3 消防士とともに 16.4 障害者用ウェアラブル 17. ボーグ ( 機械生命体 ) 的生活 18. ナノテクノロジー - 一歩先へ 19. 情報源 19.1 非商用 19.2 商用 19.3 読み物 20. 今後の課題 21. 改訂履歴 22. 謝辞 23. 著作権、免責条項、商標 24. 日本語訳について ______________________________________________________________________ 1. 緒言 著者はウェアラブルコンピューティングにおけるグル(専門家)ではありませ ん。 PDA というよりはむしろウェアラブルに近いパームトップの HP95LX お よび HP200LX を、数年間ただ単に使った後 (DOS5 に感謝、コンピュータサイ エンスセメスタの課題を HP200LX で turbo pascal を使って通学途上の地下 鉄内でこなすことができました)、パーム Palm IIIx と Linux が稼働する ラップトップとともに過ごしている著者にとってつぎの課題は、ウェアラブル な Linux を持つことです。そこで一年以上の間ウェアラブルに関する様々な 資料を読み、ウェアラブルのハードウェアに関するメーリングリストにもすこ し関わりました。ウェアラブルな概念に関心を持つ人がますます増えて来るの を見て、その人たちのためにこの HOWTO を書き始めることにしました (これ を書いている時点での著者のウェアラブルな環境は Toshiba 430CDT ラップ トップ、twiddler キーボード、emacspeak 音声出力機能、ビデオカメラ用 バッテリです)。 いずれにしても "軍隊の現状" の節を意外に思う人がいるかもしれないので、 著者の立場を説明しておきます。著者は、この HOWTO をジャーナリストおよ び科学者の両方の立場で書こうとしています。このことはつまりジャーナリス トとしてはできる限りたくさんの情報に目を通し、科学者としては中立であり たいということです。米国陸軍は装置一式を 30,000 セット以上も購入しよう としているので、このユーザーグループは無視することができません。この文 書は長期にわたる作業の出発点です。関心をお持ちの(確認できる) 情報があ れば、遠慮なく連絡してください。 2. ウェアラブルとはなにか さて、その名前の示すように、ウェアラブルとは身につけることを想定した、 いわゆる装着型コンピュータです。実際にはこの定義を満たすウェアラブルは ほとんどありません。もっと実用的な観点に立つとウェアラブルとは、移動中 の使用に関しては電源供給だけに依存するコンピュータと定義できます (詳し くは電源の章を参照してください)。この定義によれば PDA、パームコンピュ ータ、カスタマイズしたラップトップもまたウェアラブルです。ウェアラブル コンピューティングは新しい分野なので、ウェアラブルコンピュータについて の標準の定義はありません。しかしSteve Mann 教授の定義がそれに近いかも 知れません。著者にとってはペースメーカーのような医療機器もウェアラブル コンピュータですが、これは教授の定義 とは異なります。 (実のところ教 授はウェアラブルコンピューティングの先駆者の一人です。) Wearcomp の ウェブサイトにも FAQ があっ て、ウェアラブルの定義を試みています。 著者はウェアラブルの専門家ではなく、単にノーマディックコンピューティン グに強い関心があって、その実装に関して、技術的な観点からの研究を行うと ともに、ノーマディックコンピューティングによる日常生活の変革およびそれ と密接に結び付くことによる相乗作用の観点からの研究を行っています。 この文章は LINUX DOCUMENTATION PROJECT http://www.linuxdoc.org/HOWTO に含まれています。 この文書の最新版は HTMLフォーマットで http://infonomade.linuxfr.org/Wearable-HOWTO.html あるいは http://www.thewearables.com/mirrors/Wearable-HOWTO/Wearable-HOWTO.html から入手できます。ポストスクリプトフォーマットなら http://www.thewearables.com/mirrors/Wearable-HOWTO/Wearable- HOWTO.ps.gz から検索可能です。 この文書のミラーの作成または翻訳を望むときは著者(下記)に連絡してくださ い。 Lionel, Trollhunter Bouchpan-Lerust-Juery ま たは 3. 提言 なぜウェアラブルを作らなければならないかと考える人や、購買責任者に自分 のアイデアを売りたい人がいるかも知れません。その人たちのためのアイデア がいくつかあります。 3.1. なぜウェアラブルなのか なぜなら自分自身で試してみたいから、または人とコンピュータの相互作用は 次世代のウィンドウマネージャを設計する次元のこととは違うから、あるいは enhanced reality (エンハンスト・リアリティ) は自分自身を革新する決定的 な要素であると感じるからです。 3.2. ウェアラブルという概念、それは「革命」ではなくて単なる「進化」 革命的な、またはそう呼ばれる製品に不安を感じる人もいます。そういう人に とっては気の休まる話をしますと、ウェアラブルは革命的な概念に見えるかも 知れませんが、実際はコンピュータハードウェアの進化にすぎません。 それは、こういうことです。まずはじめにメインフレームがあり、次いでデス クトップコンピュータが出てきて、人々が事務所でコンピュータとともに働け るようになり、さらにそれはパーソナルコンピュータとなって自宅での仕事を 可能にしました。その後、ポータブル PC がでて、電源のあるところならホテ ルの部屋でもどこでも仕事ができるようになりました(そう、Osborne ポータ ブルパーソナルコンピュータまたは IBM PC コンバーティブルは、はっきり 言ってラップトップではありませんでした)。同時に Sharp PC1500、 Canon X07、 Casio PB100 などいくつかのポケットコンピュータが市場に現れまし た。PC1500 はだんだん存在感が薄れてきて、X07 は 消滅したが LCD を残 し、他のものとともにそれらの遺産でラップトップが出現します。ラップトッ プが主流になるにつれその寸法はだんだん小さくなり、乗り物のなかでも図書 館のなかでも使えるようになりました。そして HP95LX のようなパームトップ PC および PDA が出現して(現時点で最も成功しているのは PalmPilot のファ ミリーとそのクローンです)、移動中でも仕事ができるようになり、ウェアラ ブルはこの小型化の動きのすぐ次の段階と言えます。 (ラップトップと Linux についてさらに詳しく知りたいなら Laptop-HOWTO を 見てください。最新版は Werner Heuser の Homepage にあります) 3.3. ウェアラブルのユーザーは優位に立てる 現在の競争社会においては、他の企業より優位に立てるということは非常に重 要なことです。航空機を修理する企業を例にとると、ウェアラブルを使用する 技術者たちは、仕事をする間、設計図を要求して時間を浪費することなく、随 意に設計図およびテクニカルデータを入手できて、航空機をより早く修理する ことができます。あなたの仕事の分野においても類題があるかもしれません。 3.4. ウェアラブルという概念は「忍びよる脅威」 製品や技術の中には、初めて市場に現れたときには、控え目に言っても完全と は言い難いものもありました。これは忍びよる脅威と言うべきもので、 Clayton Christensen 著 "The innovator's dilemma" (邦題 『イノベーショ ンのジレンマ - 技術革新が巨大企業を滅ぼす時』) または Andy Grove 著 "Only the paranoid survives" (邦題 『インテル戦略転換』) を読むと、企 業が一つの製品を当てにしたり、お山の大将的な製品を所有していると新製 品/新技術を見過ごして、崩壊してしまうことがあるのがわかります。新製 品/新技術は、当初は扱いにくくて市場の隙間に存在するだけでしたが、やが てそれが市場を乗っ取りました。 3.5. ウェアラブルコンピューティング - 先端産業 プロジェクトに投資しようとする人たちは、必ずしも技術の詳しい話を好むわ けではないので、別の論理を展開しなければなりません。そうでないと大事な プロジェクトがゴミ箱(/dev/null)行きになってしまいます。AP Sloan 著 "My years with General Motors" (邦題 『GMとともに』) の第2章を再読する と、ウェアラブル産業が、20世紀初頭における米国の自動車産業の変貌と同 じような変化をしようとしているのは明らかです。自動車産業は、いくつかの 小規模製造業者の道楽から大量販売産業に変わりました。自動車産業が変貌す るには 30 年ほどかかりましたが、ウェアラブル産業では、5 年も経たないう ちにこのような変貌をとげるに違いありません。この製品に投資しないなら必 ず他の誰かが投資します。 4. 使用されている CPU 4.1. PDA 仕様のウェアラブル 通常は非 Intel CPU を使っています。(HP95/100/200LX を除いて) PalmPilot - ウェアラブルの新品種 の章を参照。 4.2. PC/104 およびラップトップ仕様のウェアラブル これらのデバイスには、通常 Intel または Intel 互換 CPU が使われていま す。 Cyrix Media GX CPU 仕様のモデルさえあります。 4.2.1. PC/104 とはなにか PC/104 は 組込みシステムを積み重ねで構成するような PC に対する工業規格 です。ボードの設置面積は 4"x4" で、見ての通りウェアラブル化計画のため には良い基板です。 4.2.2. PC/104+ とはなにか PC/104+ は PCI バス対応の PC/104 規格です。 PC-104 FAQ を参照。 4.3. トランスメタのプロセッサ、Crusoe トランスメタは最速のチップの販売ではなく、実際のところ、プロセッサの省 電力とウェアラブル化計画にとっての一番よい選択をすることに焦点をあわせ ているようです。さらに、このチップ用の Phoenix の BIOS がリリースされ て、そのマザーボードがまもなく使えるようになります。 4.4. その他 昨年、Alpha 仕様の Multia は、100ドル程度で売られたものがありました が、知る限りでは、これらのデバイスの一つでウェアラブルをなんとか作った と言う話は聞きません。 5. 電源 バッテリを使うなら多くの選択肢があります。ただし酸性液を充填したバッテ リは健康障害を引き起こすので、この用途では決して使わないように注意して ください。 バッテリに関して主な 4 つの情報源は以下の通りです。 o The Sanyo batteries o ビデオカメラ用バッテリに関しては、以下のウェブサイトおよびその他の 製造業者のウェブサイトを閲覧してください。 o Canon o Hitachi o JVC batteries o Panasonic o Sony batteries o 趣味の模型製造業者には以下のところがあります。 o Graupner o Robbe o Tamiya o Radioshack 6. OS PDA 仕様のウェアラブルの持ち主にとっては、OS に関してほとんど選択の余 地はなくて、たいていの場合 PDA 製造業者の OS でやっていくほかはありま せん。知る限りでは Psion series 5 に Linux をのせるのは本流ではありま せん。WindStone という商用の OS は、主に PalmPilot およびその互換機向 けで ARM 仕様の コンピュータへの移植の計画もあります。これは OSK が製作しています。 Mips based PDA については、中の幾つかは NetBSD が走るようです。(これは多くのプラット フォーム上で稼働する UNIX タイプ *BSD ファミリーの一つです。) これら PC 派生品を使用したものの選択肢は Microsoft 製品または Linux の ようですが、Microsoft 製品は、はっきり言えば最善の選択とはいえず、 Debian GNU/Linux が優れています( POSIX .4 に準拠したカーネルは一般的用 途には向かないと思います)。 もう一つの競合者は QNX ですが、これは工業向けに傾 いており、趣味または研究向けには最善の選択とは言えません。 7. Sulawesi プロジェクト Sulawesi - ユビキタスコンピューティング(遍在コンピュータ処理)のための インテリジェント ユーザーインタフェース システム 7.1. 背景 数年前まではウェアラブルコンピュータはたった一人の人により、その人のた めだけに構築されるシステムでした。その器械は所有者個人の好みに合うよう にカスタマイズしてあり、どれか一つの入出力装置を使って多様な双方向技術 を実現しました。これまでのところこれらの器械に使用されているインタフェ ースは、現存するデスクトップ ユーザーインタフェースシステムと、斬新な 入出力装置の混成物です。 モバイル/ユビキタス環境において使用される、人とコンピュータのインタ フェースの理想的な形の一つは、音声認識、身ぶり、マシンビジョン、および 他の情報チャネルを使用して、ユーザーの言うことに耳をそば立たせて、彼が 何をして欲しいのかを理解し、彼の要求を自動的に実行して、最も適切な時 に、適切な形式で、結果を返してくれる形態でしょう。ユーザーの呼吸数、心 拍数、および運動をモニタできる器械なら、たとえば「私が寝入ったなら<ユ ーザーを指し示す> ライトを消してください」と頼めるかもしれません。モバ イル装置またはユビキタス環境との、話し言葉や身ぶりによるこのような対話 形式は、多態性およびインテリジェント ユーザーインタフェースの部類に該 当します。 Sulawesi とは多態性に対応する基本的な開発を可能にする枠組み です。 7.2. Sulawesi のアーキテクチャ Sulawesi システムの設計は 3 つの異なった要素から成り立っています。 o 入力レベル - 様々なセンサから取得した生のデータを集めます。 o コアレベル - 自然言語処理モジュールおよびサービスエージェント機能を 備えます。 o 出力レベル - サービスエージェントから返された結果をどのように表出す るかを決定します。 Sulawesi の API を使ってプログラムすれば、サードパーティが入力モ ジュール、サービスモジュールおよび出力モジュールを新規に作成し、そ れらを統合することができます。 7.2.1. 入力レベル システムは well defined API(すべてが正確に定義されている API)を通して 実世界の情報を取り込みます。現時点で実装されているのは、キーボード入 力、ネットワークからの入力、音声認識による入力、ビデオカメラ入力、 GPS入力、および赤外線入力です。入力ではデータの前処理は行わず、単に未 処理のデータをコアシステムに提供して、システムの内部においてサービスモ ジュールがそれを解釈します。 7.2.2. コアレベル システムのコア部分には基礎的な自然言語プロセッサが含まれており、これに よりセンテンス (sentence: 自然言語で構成された文) を解釈します。このプ ロセッサはセンテンスから、呼び出すべきサービスおよび出力を表出する方法 という 2 つの情報を抽出して、それを一連のコマンドに変換します。サービ スマネージャは具体化(instantiation)とサービスの監視をします。またコマ ンドに対しシステム障害があった場合なんらかの復元処理をするようチェック ポイントを設けておきます。サービスは、それができる場合には、 (出力)形 態に依存しない出力を生成して、処理のため出力レベルに送ります。 7.2.3. 出力レベル 出力レベルでは、形態に依存しない結果をサービスから受取り、それをどう表 出するかを決定します。その決定には、ユーザーが何を求めたか、およびユー ザーの現在の状況/環境をシステムがどう把握しているかの 2 つの判定基準が あります。 ユーザーがある情報を求めるときは、それを視覚的にどう表出して欲しいかも 中に含まれています。ユーザーが高速で移動中であると、システムが(入力セ ンサを経由して)感知したら、結果を前面のスクリーンに表示することはユー ザーの注意力をそらしかねないとシステムは判断します。(車を運転中にそう なったときを思い浮かべてみてください)..このような場合、システムはユー ザーの要求を無視して、もっと適切な表出方法、例えば音声による伝達、に向 け直すでしょう。 7.3. センテンス(自然言語で構成された文)の翻訳 音声を認識するとき、人はセンテンスのすべての単語を理解するわけではあり ません。時には聞き漏らしたり、気が散ってセンテンスの全体を聞き取れな かったりします。人はセンテンスの中の聞き漏らした単語を、その周りの他の 単語から推定して何を言ったかを理解します。いつもうまくいくとは限りませ んが、大抵のばあい会話を十分に理解できます。この種のセンテンス解読法は 半自然言語処理法と呼ばれており、少数の基本的な規則でもって実装されてい ます。下の例では、人が理解できるセンテンスを、どのようにシステムが理解 できるコマンドに変換するかを示しています - o could you show me what the time is o I would like you to tell me the time このセンテンスは実際上、ユーザーに対し同じ情報を中継する結果になる といえます。器械に対する要求は、時刻を調べて適切な出力チャネルに送 信せよということであり、結果というのは、ユーザーがいま何時かを知る ことです。細かく点検すると、センテンスのほとんどのデータを捨て去っ ても、残った情報から要求を推定することができるのがわかります。 o show time o tell time 上記の例でいえば、センテンス中の単語(データ)数で各々 1/4 および 2/9 になっていますが、情報の中身はほとんど100%損なわれていないといえる でしょう。 実装されているシステムでは、センテンスを処理、解釈することができます。 自動生成のサービスルックアップテーブルおよび言語変換テーブルにより、半 自然言語が処理されます。 サービス名は(ファイルシステムの制約により)固有なので、単純な仕組みによ り、センテンス中の 'time' などのサービスを特定することができます。言語 をあらかじめ、すべて定義してハードコードしておくのは実際的ではなく、ほ とんど不可能です。またそのようなシステムだと多様な状況に対して簡単に対 応できないでしょう。ルックアップテーブルを使用することで、小さくまと まった効率的な方法により、好みにあったシステムにカスタマイズできるの で、センテンスを理解させるためにコードを再プログラムまたは再コンパイル することはありません。システムはルックアップテーブルを参照して、'show' や 'tell'などの単語がセンテンスの中でどんな意味を持つかを理解し、結果 をどの出力に生成するかを決めます。 ルックアップファイル例 |say|speak| |tell|speak| |read|speak| |show|text| |display|text| |EOF| ルックアップテーブルの一番上の見出しは、センテンスの中ではじめて "say" が出てきたら、サービスの結果を "speak" の出力に生成することを示してい ます。 ルックアップテーブルを使用することで、センテンスの運用は本質的に制限さ れます。システムが理解できるセンテンスを作るためには、以下の規則を守ら ねばなりません。 7.4. まとめ このシステムにより「暗くなったら明かりを消してくれませんか」というよう なセンテンスが使えるようになります。システムは、このセンテンスを解釈し て「照明」サービスを呼び出し、明かりを ON/OFF する照明調節装置を使って 出力を生成します。ここで強調しておかなければならないことが2つありま す。1つ目は器械サイドで自然文に近いセンテンスから意味を推定することで す。これはユーザーが器械に慣れる必要があるとか、複雑なコマンドを覚える とか、ユーザーインタフェースを操作する必要があるということではありませ ん。2つ目は実世界においてある条件が満たされた時に、要求された課題を実 行するということです。「暗くなったら」ということは、コンピュータが現在 の光の状態を感知して、ある閾値を下回ったと解釈したとき反応し、照明調節 出力に信号を送るということです。 Sulawesi システムによりこのような対話形式を柔軟にこなすことができます. しかし、このシステムは照明回路を制御する基礎的な機構は持っていません。 それはプログラムしなければならない部分です。 オンライン文書およびダウンロードはここです - http://wearables.essex.ac.uk/sulawesi/ 8. もっぱら CLI だけ 8.1. CLI とは CLI とは Comand Line Interface の略です。Linux を X 抜きでインストール したときは CLI モードでコンピュータを動かすことになります。「勘弁して よ」と悲鳴をあげるかもしれませんが、コンピュータの方は「うん それのほ うが CPU もメモリも多く使えていいよ」と言うでしょう。 8.2. なぜここで CLI の話になるのか ウェアラブルの中には、グラフィックチップ、ディスク、およびメモリ容量な らびにバッテリ寿命に問題を抱えているものもあります。テキストモードで動 かすなら、バッテリが節約できるし,ディスクアクセスも少なくなり、同様に 多くのメモリと CPU サイクルの節約にもなります。また、グラフィックイン タフェースをインストールする必要がないなら、ディスクスペースをすこし節 約することになります。その結果、データ用のスペースが増えます。しかしテ キストモードではなにもできないじゃないか、と思うかもしれませんが、すこ し考え方を変えれば、テキストモードとグラフィックモードで同じことができ るのです。 8.3. テキストモードでできること 入出力の通路を利用して、その間を情報伝達するプログラムが、ほとんどない ということを考慮することが必要です。こういった環境では、何かするには全 部の指を使わなければなりません。マウスさえ使いません。 X では、エディ タ (vi, Emacs, Jed など)、ゲーム(もっともウェアラブル自体ゲームみたい なものですが)、ビューア/ブラウザ ( ?less, ?more, lynx, links など)、 ファイルマネージャ ( mc など) などいろいろ使えます。 CLI はかっこいい のだが、コマンドの設定やオプションをすべて覚えるのは難しいと思っている 人もいます。学習曲線は実際に急勾配ですが、覚えてしまえば、よりはやく働 けるし、速ければ速いほどウェアラブルにとって良いことです。個人の仕事を 加速する例を見てみましょう。 8.4. ユーティリティ類 8.4.1. シェルとスクリプト言語 強力なシェルが UNIX の基盤です。 シェルを使うことで Microsoft の貧弱な バッチ言語に比べて多くのことができます。 UNIX は強力なシェル (tcsh, ksh, bash など) を数多く備えています。ただし著者は sh を使っています。 これは古くて他に比べて特徴もあまりありませんが、どの UNIX 類にも搭載さ れています。sh にはよく使われる機能/コマンド (echo, test)があります。 なぜそのことに言及するかというと、 GNU も echo と test のプログラムを 持っており、もしこれをはずせたら、まあ多いとは言えませんが、約 20k の ディスクスペースの節約になります。 sh のバージョンの中には、すごく経済 的なものがあります。シェルスクリプトは、小さなプログラム言語で、繰り返 しは (for, while)、ユーザーインタラクションは (read)、I/O (< >)です。 スクリプトを学ぶには、 man sh とタイプすればマニュアルが表示されま す(または tcsh ですが、すこし複雑です)。 馬鹿げたスクリプトの例 for i in * .[^.]*; do echo $i; done (簡単に ls ) 8.4.2. sed と awk について UNIX の世界では awk と sed はよく知られています。これらのプログラムは 汎用性があり、いろいろなことに使えます。 GNU には sed や awk に代わる ユーティリティ類 (dd、cut、 seqなど) があります。なぜ dd が出てくるの かと思われる向きには - dd には、気の利いたちょっとした機能が付いていて、大文字/小文字の変換で いえば - あるディレクトリに大文字のファイルネームがあって、それを小文字に変えた いとします。awk では次のようにします。- for i in *; do mv "$i" "`echo $i | awk '{print tolower($0)}'`"; done sed では大文字を、一つ一つ小文字に変換します。 dd では簡単で、次のよう にすればよいでしょう。 - for i in *; do mv "$i" "`echo $i | dd conv=lcase`"; done cut はテキストの縦列をプリントするプログラムです。1行の中の異なった縦 列をプリントしたいときは cut が使えます。 cut はこの種のジョブ専用のコ マンドで、速く効率的に仕上げたいなら awk よりベターです。同じことが shell の内部コマンドでもできます。(IFS 変数を割り当てればできます) awk、 cut 、 sh での例を下に示します。単に login : identity のフィール ドだけを示します。 o awk: awk -F: '{ print $1" : "$5}' /etc/passwd o cut: while read line; do echo "`echo $line | cut -d: -f 1` : `echo $line | cut -d: -f 5`"; done < /etc/passwd o sh: IFS=':'; while read a b c d e f; do echo "$a : $e"; done < /etc/passwd; IFS=' ' 通常は awk を覚える必要はありません。 awk を知らなくても、どんなことで もできます。 (もっとも、ときには awk のほうが簡単なことがあります) sed の欠点は、一時ファイルで作業しなければならないことです。ディスク容 量を節約してコマンドラインでファイルを編集したければ ex があります。こ れは vi のスクリプトバージョンです。 sed も使えますが必ずしも必要では ありません。 8.4.3. ユーティリティ類の重複 ディスク容量が肝心なら、ほかのプログラムでも同じことができるようなもの は削除することもできます。たとえば - dd があるなら catはいらないし、vi があるなら ed は必要ありません。(ほかの例があれば教えてください) 8.5. エイリアスとスクリプト スクリプトの方がエイリアスより強力です。しかしスクリプトはディスク容量 を消費し、動かすたびにロードされます。エイリアスはメモリを消費しますが CLI モードならひとりでメモリ全てを使えるわけです。エイリアスはディスク ではなくメモリから読み込まれるので、スクリプトより速いのです。普通、 シェルにはエイリアスやスクリプトに代る関数があります。関数にはスクリプ トと同じ機能がありますが、メモリだけしか使いません。エイリアスと関数に ついて知りたければ Man ページを見てください。 9. 入力 9.1. キーボードの種類 9.1.1. ミニキーボード これらのデバイスは普通、前腕や手首に装着されます。 この設計思想の代表的なものは The WristPC のキーボードと Phoenix Group Inc.の Arm mount micro keyboard です。 9.1.2. 片手操作キーボード(One hand keyboard) この設計思想ではキーボードを見る必要がないのでベストだというのが著者の 意見です。つまり人と対応しなければならないときタイピングが邪魔をしない ことや、人に受け入れられるにはウェアラブルの装着が目立つようでは駄目な ことなどによります。 この設計思想の原型にはTwiddler and Twiddler2 とそのクローンがあります。 Twiddler を使ってみると、はじめはすこしまごつくかも知れません。まずマ ニュアルを読んでください(キーボードや PS/2マウスのアダプタをつながない と電源が入らないので動きません)。最初は参照カード (reference card) の 体裁に混乱するかも知れません。Twiddler は裏向きで使うので、操作ボタン を押す順序は右から左になりますが、参照カードには裏から見たボタン配置で はなく、正面からのものが記載されているからです。この段階を通過すると、 すぐに使い方に慣れます。著者はとても快適に使っています。組込みマウスも 自然な使い勝手です。 10. オーディオ出力 出力がそれほど多くないシステムや、特定のイベントに対応した信号を送るた めなら、オーディオ出力が使えます。たいていのラップトップには Sound Blaster 互換のサウンドカードが付いているし PC-104のオンボードサウンド カードも多数販売されています。またサウンドモジュールを購入しても良いで しょう。次の段階はテキスト出力を text_to_speak プログラムへ転送するこ とです。 入力の多くは emacs で行うので Emacsspeak を使用 するのが良いでしょう。 11. 映像出力 11.1. へッドダウン表示装置 11.1.1. 腕時計型 11.1.1.1. 市販の製品 Seiko、Citizen、Casio などいくつかのメーカーがコンピュータに接続できる 腕時計型のものを製造しています(Seiko が 1982 年にプロトタイプの腕時計 型テレビ(白黒 LCD )を発表したのを覚えています)。 Casio は様々な腕時計を販売していますが、そのい くつかは時刻以外のものも表示でき、ウェアラブルと言ってもよいかもしれま せん。関心のあるものには - o PC Unite は赤外線でコンピュータとのデータ転送ができます。 o ATC1200-1V Forester には電子コンパスそれに温度計と気圧計が装備され ています。著者は1つ持っていましたがすばらしいハードウェアです。 o Technowear 製品には録音、IR(赤外線)リモートコントロール、データバン クなどさまざまな特性があります。 o これまで目にしたものの中でも最も興味をそそるのは GPS 腕時計です。 11.1.1.2. 腕時計型コンピュータ 1998年に S. Mann は腕時計型 ビデオ会議用コンピュータ を披露しました。これには GNU/Linux が搭載されていて、XF86 サーバーが稼 働しています。腕時計にはピンホールカメラが装備されています。控え目に 言ってもこのデバイスには感動します。このソフトウェアのいくつかは GPL 化されていてダウンロード できます。 これは 4行 LCD表示が可能でシリアルポートでラップトップに接続します(多 くの出版物やオンラインマガジンに構造が掲載されています)。 11.1.2. PDA タイプ ウェアラブルにとって PDA は、データの送信や表示用として経済的で効率的 な方法です。実際、VT100 エミュレーションプログラムとシリアルリンクをも つ PDA がターミナルとして効率的に使用されています (著者はデスクトップ 用ターミナルとして HP200LX を使って kermit を動かしてうまく動いていますし、ディ スプレーが壊れたときの緊急用にもなっています)。 11.2. へッドアップ表示装置 阻害感のある装置かそうでないかは装着者が判断することではなくて相手の判 断にかかっています。阻害感があるのは装着者の眼を見ることができないから です。 11.2.1. 阻害感のある表示装置 11.2.1.1. LED を使った簡単な装置 点滅 LED を使用してデバイスから情報を取り出そうとする人もいます。これ は考えられる限りで最も簡単な表示方法です。1 つかまたは 1 列の点滅 LED を使用します。 11.2.1.2. Sony GLASSTRON Sony が Glasstron というデバイスを販売しています。パリ、モンパルナスの FNAC で glasstron 55 を 13999フラン、約 2333米ドル)で販売しています。 11.2.1.3. M1 M1 は Tekgear が製造していま す。 11.2.1.4. VRD ( 仮想網膜表示装置 ) Microvison が製造しているこのデバイスは、LED レ ーザーで画像を装着者の網膜に直接投影します。1999年の夏、米国海軍がハワ イでこの実験をしました。 (陸軍の現状を参照) 11.2.2. 阻害感のない表示装置 Microptical 社が、複合眼鏡表 示(Invisible Monitor)とクリップ装着表示(Clip-On Monitor)の2つの表示装 置を製造しています。 12. 通信 知る限りではたいてい無線で行われるでしょう。無線トランシーバか携帯電話 が使われます。 IBM の Personal Area Network か Bluetooth を使うと簡単にウェアラブルの LAN を構成で きるでしょう ( IBM は Bluetooth 分科会の一員でもあります)。 13. ウェアラブルの入手 13.1. 市販の製品 いくつかの会社がすぐに使えるウェアラブルを販売していて、そのリストを以 下に示します。 o Genesys Technology では HMD(へッドマウント表示装置)を使用したウェアラブルを製造してい ます。 o handsfreemobile では Mid Riff Brain という製品を販売しています。これは主として液晶タッチパッドで 構成されている装置で、ウエストバンドに固定されたポケットに収納され ています。 o Teltronics では Mentis というウェアラブル用モジュールを販売しています。 o Via は VIA II というウエストバンドに装 着するウェアラブルを販売しています。 o Xybernaut では RedHat Linux 6.1、Suse Linux、Windows 9x、Windows NT4 を サポートしている Mobile Assistant IV ( MA IV ) を販売しています。 13.2. DIY(自作) ウェアラブルコンピューティングは極めて初期の段階なので、いろいろな実験 をして仲間とそれを共有していく必要があります。このためには Linux のよ うなオープンで汎用性のある OS を使えば OS とハードウェアの両方で遊べる ので非常に面白いに違いありません。 (つまるところデスクトップはありきた りの退屈なものにすぎません)。やろうとすることに対しての技術的な判断に 確信を持てないときは、実証済の設計を使うこともできます。ネット上を探せ ばウェアラブルの仕様がいくつか見つかります。これを使えばむだな努力をす ることはないし、落とし穴にひっかかることもないでしょう (設計例はアル ファベット順です)。 o Lizzi これ は MIT の設計です。 o 英国では Vase Lab Wearable があります。これは University of Essex の Neil Newman の ものです。 o カナダでは Wearcomp が 折り紙付 きで、 University of Toronto の Steve Mann 教授によるものです。 14. PalmPilot とそのクローン ( IBM、 HandSpring、 TRG ) - ウェアラブ ルの新種 14.1. パーム ファミリー PalmPilot ファミリーとそのクローンは PDA のヒット商品です。しかしこれ は単なる PDA ではなくて、既製品では最初のウェアラブルであるということ はあまり認識されていません。携帯電話にも接続できますし、移動中に Graffiti より使いやすい入力装置、たとえばキーボード、が欲しい時パーム につなぐことのできる PS/2 キーボード( Happy Hacking cradle Specially for the Palm ) もあります。 PFU Happy Hacking ではパーム向けの PS/2 アダプタ を付属品として販売していて PS/2 キーボ ードならどれでもつなぐことができます。これはバッテリ ( 2 AA : 単3を2個) 駆動です。 twiddler を PalmPilot で使えるようにした人もいるようです。ランドナビゲ ーションが必要なら Palm Navigator というパームにつなぐことのできる電子 コンパスがあります。これは Precision Navigation で製造しています。ウェザーステーショ ン(気象観測ステーション)も販売しています。 余ったお金があって、もっと精度の高いのが欲しければ Earthmate という GPS 受信機があります。これは Precision Navigation が製造しています。ソフトウェアだけで物事を解 決したいと考えるならそれも可能です。たとえば地下鉄地図を持ち歩かないで それで動き回りたいというような特別な欲求があって、既成の解決法が望みな ら Route Expert のようなプログラムを使うこともできます。著者は日常的に これを使っていますが、パリの地下鉄ではとても役に立っています。年末には ベルリンでも試してみようと思っています(もちろんほかにもプログラムはあ りますが、著者が使っているにはこれだけです)。太陽と腕時計を使えば北の 方角は分かるとは思いますが、PalmPilot でたとえば T.J's Sun-Compass( Sun-Compass: 太陽を利用した方位磁石のようなもの)のような既成のプログラ ムを使えばもっと正確にでます (前にも述べましたがほかにもプログラムはあ りますが、著者が使っているにはこれだけです)。 PalmPilot を使う Linux ユーザーにとっては 2つの Linux ウェブサイトの存 在が最も重要です(DragonBall プロセッサは結局 68000 ファミリにすぎませ ん)。その1つは GPL化されていて、それについては uClinux を参照してください。もう1つの方は韓国の商用サ イトです。 WindStone 、これは uClinux を基に、 独自の GUI とウィジェットを持っています。 次世代のパームでは CPU 速度が今の2倍になるだろうと考えられますので、 Linux を積んでいればハードウェアに依存しない、また現在 x86 Linux ベー スのウェアラブル用に書かれた多くのプログラムを走らせることができるかも しれません。 14.2. PDA で動作する Linux Samsung が Linux を搭載した Yopy という PDA を 発表しています。 ARMLinux が動作する PDA で 32 MB RAM を持ち、ボイスレ コーダー、 mp3プレイヤー、IrDa ポート、コンパクトフラッシュスロット、 4インチ カラー TFT、それに手書き文字認識機能を装備し、シリアルインタ フェースおよび USB インタフェースを備えています。この夏には売り出され るということですが、それまで待ちましょう。 Mips based PDA info Center このサイトでは、MIPS アーキテクチャ上の NetBSD と LinuxCE に焦点をあて ています。 LinuxCE のサイトにいくつかの情報があります。 LinuxCE FAQ も読んだほうがよいでしょう。 これらの PDA を参考にして適切な PDA ウェアラブルの構築法を考えることが できるでしょう。 15. ウェアラブルの携帯方法 ウェアラブルの種類( たとえば パーム、パームトップ、ラップトップ、 PC/104など )によりますが、持ち回るのには手ごろな3方法があると思いま す。手首にぶら下げて(on tour wrist)運ぶ、バックパックに入れる、ウエス トバンドに吊り下げるなどいろいろできます。 16. ウェアラブルの利用 常識的には、最初にウェアラブルを本格的に使おうとするのはその仕事が生死 の問題であるような人々、つまり軍隊です。 16.1. 軍隊の現状 敵に対して優位に立つことは軍隊にとってきわめて重要です。このことは歴史 が示しています。さらにこの優位性を獲得するために軍隊は巨額の資金を投入 しようとします。 数年前に歩兵に対して様々な武器の部品を携帯するよう命令が出されたが、そ の部品の元は様々で、ある武器全体の一部ということではありませんでした。 これを使って最善を尽くすようにという命令でした (その様子はフランケン シュタインみたいに見えました)。このプロジェクトでは歩兵は統一的かつ補 完的な武器および装備システムを構成する中心部品です。 o オーストラリア軍 オーストラリアでは Land 125 Soldier Combat System ( 元は "Wundurra"( アボリジニの言葉で戦士を意味する))と呼ばれるプロジェク トがあり、それに関する情報は DTSO のサイトにあります。また ATSE によればこ のプロジェクトは2000年から2001年にかけてフェーズ2 の段階になりま す。 DTSO によると兵士達は域内通信装置、暗視装置、自動照準装置およびへッ ドアップ表示装置を装備する予定です。 o フランス軍 フランスには FELIN ( Fantassin a Equipement et Liaison Integrees ( 統合された装備と連係手段を携えた歩兵 ) )とよばれるプロジェクトがあ ります。 兵士の活動能力を高めるため装置類は慎重な重量制限のもとに開発されま した - 歩兵は伝統的に荷物運搬用牛馬なみに扱われていたので、 FELIN プロジェクトでは総重量を 25kg に制限しました。兵士は(遮蔽物の陰から 発砲できるように)無線装置、コンピュータ、テレビ用カメラをその武器に 装備しています。表示装置は単眼式へッドマウントディスプレイです。 o 英国軍 FIST ( Future Integrated Soldier Technology ) プロジェクト - 兵士が へッドアップ(へルメット表示)かへッドダウン(手首表示)のどちらかでパ ームトップを経由して、もし必要なら地図も使って情報にアクセスできる かどうかの初期テストがソールズベリー平原において実施されました。 その結果、以下の教訓が得られました ( L'armement 67号 1999年9月の記 事より )。 o 「移動中に」兵士が情報にアクセスできなければ、戦術情報を供与して も兵士の遂行能力が強化される見通しはない。 o 昼夜ともへルメット表示が好まれた。 FIST におけるディジタル化試行は2000年6月と11月にソールズベリー平原 において実施されます。6月の試行では情報の流れ具合に取り組み、 11月 の試行では情報を強化することにより「作戦のテンポ」が増加したかどう かを検証します。 o 米国軍 o Land warrior (陸上戦闘員) プログラム このシステムは協調して働く 5 つのサブシステムから成っています。 o Motorola の、多機能 GPS 受信機が特徴の、ペンティアム仕様 C/RS (Computer/Radio Subsystem) o Gentex の PCIE (Protective Clothing and Individual Equipment Subsystem : 防護服と個人装備サブシステム) o Raytheon の武器サブシステム o Raytheon のソフトウェアサブシステム o Honeywell の IHAS (Integrated Helmet Assembly Subsystem: 多機 能へルメットアセンブリサブシステム) IHAS とそれに加えて電子化地図および戦術情報を介して、分隊の各メ ンバーの位置は捕捉できます。兵士はすべて多機能 GPS とビデオ記録 装置を携えています。暗視装置と自動照準装置(deported sighting)も もちろんです。テストは2000年を通じて行われます。Land warrior プ ログラムについては http://www.sbccom.army.mil/programs/lw/index.htm を参照してく ださい ( FAQと写真もついています )。著者の知る限りこのプロジェク トはウェアラブルな概念にとって最大のテストになるでしょう。陸軍は 余備品も入れて 34000 セットも購入する予定です。 o 米国海軍 1999年の夏には米国海軍がハワイで仮想網膜表示装置(VRD)の実験をし たというニュースがいちどきに入ってきました。その時の説明では、戦 艦の内部は、大量の CRT に占拠されていて必要な空間が足りないか ら、乗組員が VRD を装着することも考えられるというものでした。 もちろん、まったく邪魔にならない、高度に特殊化されたユニットが ウェアラブルとして採用されたに違いありませんが、憶測するだけで確 証はありません。 16.2. 病院において Microvison の VRD が オハイオ州デイトンの Wallace Kettering Neuroscience Institute に神経外科向け用途として引き 渡されました 。これはウェアラブルの 完全な特徴を備えてはいませんが、医療分野におけるウェアラブルの採用とい う点で大きい一歩となります。 (ウェブでシミュレート画像 を見ることができます) 16.3. 消防士とともに 消防士は、煙を通して見ることができるよう赤外線テレビカメラを使用してい ます。この先数年の間にこれらの装置は小型化されるでしょう。ウェアラブル により消防士の両手は自由になって、建物の地図や多数の有益な情報にリアル タイムでアクセスできるようになるはずです。 16.4. 障害者用ウェアラブル ウェアラブルが障害者にとってたいへん助けになるだろうということはたぶん 思いつくでしょう。たとえば目の不自由な人にとっては GPS 受信機や周辺の 地図その他を備えたウェアラブルを使って、能動的に電波探知して周囲の状況 を把握できるなら立派に盲導犬の代りになるでしょう。各要素はすでに昔から あります。 この事は難しくないかも知れません - Linux 環境には音声応用関係の良い参 考文献があります。音声認識はすぐに使えます。IrDA と 無線モデムもOKで す。 GPS プログラムも同様です。目の不自由な人用に、障害物を広範囲に探 知する電子杖を開発する必要があります。大事なことを一つ言い残していまし たが、当局を納得させなければなりません。 17. ボーグ ( 機械生命体 ) 的生活 この章では人対人の反応について述べます。一般の人にとってはウェアラブル は全く新しいものなので、それを装着している人に対して普通とは違った反応 を示します。外出して PalmPilot の画面を歩きながら見たり、地下鉄内で見 ていると、次のような反応が返ってきます。 o 無反応 - 自分の世界に籠っているか、またはどうでもよいと思っている。 o 好奇心 - 著者のところに寄ってきて次のような質問をする。「これはなに か」、「なにをしているのか」、「値段はいくらしたか」 o 蔑視 - 目立ちたがり屋だと思っている。 o 敵意または恐れ - こいつはちょっとおかしい。近寄らないでおこう。 Steve Mann が雑誌 New Scientist でインタビューを受けていました。彼 はこの分野での経験が長いので、真っ先に意見を訊かれていました。次に 問題となるのは、ウェアラブルの機器はかなり高価なので、略奪者が新し いデバイスに目をつけることです。つまりすぐに盗めるし、よい値で売れ るし、または単に自分が使いたいためもあるでしょう。結論としては用心 してくださいということです。 18. ナノテクノロジー - 一歩先へ これを書いている今は過渡的な時代です。ナノテクノロジーは、コンピュータ 分野において多くのことを変革しつつある未来技術です。 ナノテクノロジーについては http://www.nanodot.org が、始めるのにはよい でしょう。 19. 情報源 19.1. 非商用 情報を集めるには最初は wear-hard@haven.org メーリングリストに加入する のがよいでしょう。表題に subscribe と書いたメールを wear-hard- request@haven.org に送ればよいのです。 このメーリングリストのアーカイブは、ミラーサイトの Wearable Central にあります。このサイトは、メーリングリスト とニュースグループ用のアーカイブセンターとして創設され、R. Paul McCarty が管理しています。 役に立つ FAQ の一つである wearcompfaq を読んでもよいし、 wearable webring の サイトを訪れてもよいでしょう(これを書いている時点ではこの webring に 35 サイトがリストされています)。 19.2. 商用 この文書のそれぞれの項で引用されている企業サイトにも情報があります。こ の文書の最初のほうでも述べたように - ここでとりあげた企業は単に参考の ためだけであり、どの製品をも推薦するものではありません。ただ手助けのた めだけです。 19.3. 読み物 ウェアラブルコンピューティングの入門書としてはサイエンスフィクションが よいかもしれません。なかでも以下の作品はいかがでしょう - o 「Diamond Age」 Neal Stephenson 著(ナノテクノロジーもたくさん含まれ ています) o 「Snow Crash」 Neal Stephenson 著 o 「Virtual Light」 Willian Gibson 著 20. 今後の課題 この項では次の改訂版での課題について触れています。寄稿をお考えなら見て おいたほうがよいかもしれません。 o 有機 LED には非常に関心があります。これを論じるべきでしょう。 o 入力/映像出力の章の拡充 o 提言の章の拡充、整理 o 「運転中において」の章の追加 o UW(アンダーウォーター) ウェアラブルは可能性がありそうなので検討して みましょう。 o プロジェクトの一覧と説明 o 製品の一覧と説明 o それからちょっとひとねむりします。 21. 改訂履歴 o 2000年11月 v 0.0.9 改訂3版 o 「ウェアラブルとはなにか」の章の URL のタイプミスを修正 o 「使用されている CPU」の章の拡充 o 「電源」の章の拡充 o 「OS」の章の改訂 o Sulawesi プロジェクトの創設者 Neill Newman の改訂にあわせて 「Sulawesi プロジェクト」の章の改訂 o Manu Coutris が記述した 「もっぱら CLI だけ」の章、加筆 o 「ナノテクノロジー - 一歩先へ」、加筆 o 2000年3月 v 0.0.7 改訂2版 o 1999年12月 v 0.0.5 初版 o 1999年11月 v 0.0.1 第1校 22. 謝辞 o とりわけ下記の方々に感謝いたします。 o Werner Heuser とその仕事 である Laptop-HOWTO に 対して o 啓発的で偏見のないウェアラブルメーリングリストの関係者 o 友人である Manu Coutris の果てしない忍耐と思いやりに対して o "Old Crocodile" Virgile に、その賢明で機知に富んだアドバイスに o ウェアラブル環境における関係者に、その議論とウェブサイトにより ウェアラブルの概念に対して確信が持てました。 o Steve Mann 教授に、その忍耐とウェアラブルコンピューティングにお ける先駆者であることに対して、また wearcompdef、 wearcompfaq、wristwatch wearable のリンクに関して感謝します。 o 「Sulawesi プロジェクト」の項は Neill Newman が記述しました。 o 「もっぱら CLI だけ」の項は Manu Coutris の記述です。 23. 著作権、免責条項、商標 ( 訳注:この文書の配布に関しては、この章の著作権表示と許可条件表示が保 存されることが条件なので、以下に原文と訳文を併記します。原文が優先さ れ、訳文は参考です ) Copyright (C) 1999-2000 by Lionel, trollhunter Bouchpan-Lerust-Juery. This document may be distributed under the terms set forth in the GNU Free Documentation Licence http://www.gnu.org/copyleft/fdl.txt . This documentation is distributed in the hope that it will be useful, but without any warranty. The information in this document is correct to the best of my knowledge, but there's a always a chance I've made some mistakes, so don't follow everything too blindly, especially if it seems wrong. Nothing here should have a detrimental effect on your computer, but just in case I take no responsibility for any damages ocurred from the use of the information contained herein. 著作権 - Copyright (C) 1999-2000 by Lionel, trollhunter Bouchpan- Lerust-Juery GNU Free Documentation License http://www.gnu.org/copyleft/fdl.txt に述べられた条件で配布されるもの とします。 役にたつことを期待して配布していますが、いかなる保証もいたしません。こ の文書の情報は私の知る限りでは正しいのですが、私がなにかミスを犯してし まう可能性も常にあります。 そういうわけで盲目的にすべてに従わないよう にしてください。とりわけなにかおかしいと感じるときはそうです。ここに書 かれていることはコンピュータに有害な影響をもたらすことはないはずです。 しかしここに含まれている 情報を使用することによって万一損害を被ったと しても私は責任を負いません。 In this document you will encounter some commercial products and brands. Theses products are cited for information purpose, it is not an endorsement from the author. The trademarks belong to their respective owners. この文書にはいくつかの市販製品とブランド名が含まれています。これらの製 品は単に情報として引用されているだけで著者の推薦を意味するものではあり ません。商標はそれぞれの所有者に属しています。 Permission is granted to copy, distribute and/or modify this document under the terms of the GNU Free Documentation License, Version 1.1 or any later version published by the Free Software Foundation; with the Invariant Sections being : この文書は、Free Software Foundation が公表している GNU Free Documentation License バージョン1.1 またはそれ以降の版に述べられた条件 に従う限り、以下の変更不可部分はそのままにコピー、配布または修正が認め られます - "Foreword", "What is a Wearable anyway ?", "Advocacy", "What CPU ?", "Power supply", "Os.", "The Sulawesi project.", "CLI only.", "Input", "Audio Output", "Visual Output", "Comms.", "How can I have my Wearable ?", "PalmPilot and its clone ( IBM, HandSpring, TRG ): a new breed of wearables.", "How to carry my wearable ?", "Applications with Wearables.", "A borg's life.", "Nanotechnology: one step beyond.", "Sources of Information.", "To do List.", "Revision History.", "Thanks and Credits.", , with the Front-Cover Texts being "title" and "abstract" , and with no Back-Cover Texts . 24. 日本語訳について 日本語訳の著作権、免責条項、商標については原文の記載に準ずるものとしま す。 翻訳につき助言を頂いたつぎの方々に感謝いたします。 o 武井 伸光さん o 松田 陽一さん o 神尾聡一郎さん o 千旦 裕司さん o 森本 淳 さん o 中谷 千絵さん 日本語訳は Linux Japanese FAQ Project が作成しました。翻訳に関するご意 見は JF プロジェクト または、長岡昭平 宛に連絡してください。 (翻訳年月日 2001 年 8 月 15 日 v0.0.9)