Wireless Howto Roberto Arcomano berto@bertolinux.com v1.7 - August 23, 2002 日本語訳 - 木村 智明 v1.7.j - Feb 14, 2003 ワイヤレスは、高速(最大 11 Mbps)に通信するネットワークカードの新技術の 一つです。この文章では、Linux を使ったワイヤレス環境の構築方法、ワイヤ レスカードの互換性の問題、配置における要求事項など、いろいろと説明して います。この文章の最新版は、http://www.bertolinux.com にあります。 ______________________________________________________________________ 目次 1. はじめに 1.1 はじめに 1.2 Copyright 1.3 翻訳に関して 1.4 Credits/謝辞 2. 本文に入る前に 2.1 ワイヤレス とは何でしょうか? 2.2 ワイヤレスネットワークにおける最大通信距離はどの程度ですか? 2.3 ケーブルで繋がれたネットワークと、ワイヤレスネットワークとの違いは何でしょうか? 2.4 ワイヤレスネットワークを構築するには、どんな知識が必要でしょう? 2.5 なぜワイヤレスネットワークの構築をすべきなのでしょう? またそれから何を期待できるのでしょうか? 2.6 この HOWTO では、どんなワイヤレスカードに対応しているのですか? 2.7 どのくらいの費用がかかるのでしょう? 3. ワイヤレスに関する技術解説 3.1 物理層 3.2 構成 3.3 互換性 3.4 アドホック・モードとインフラストラクチャ・モード、どちらを使うべきでしょうか? 3.5 Linux Box は、アクセスポイントとして使えませんか? 4. ツール box の必要条件 4.1 ハードウェアとしての必要条件 4.2 ソフトウェアとしての必要条件 5. ワイヤレスネットワーク構築の概要 5.1 基礎的な段階 5.2 低レベルのカーネル設定 5.3 データリンク層の設定 5.4 IP の設定 5.4.1 簡単な構成例 5.4.2 ちょっと複雑な構成例 5.4.3 インターネットへのアクセス 5.4.4 ケーブルで繋がったネットワークとワイヤレスネットワークが混在している場合 6. 設定 6.1 一般的な設定情報 6.2 Proxim Symphony 6.3 Webgear Aviator 2.4 と AviatorPro 6.4 Lucent Wavelan I, II, Orinoco 製品と Cabletron 6.5 YDI 7. Wireless に関するさらなる情報 7.1 ワイヤレスに対応した Linux ディストリビューション 8. リンク集 8.1 オープンソフトウェア関係のリンク 8.2 商用関係のリンク 9. FAQ - Frequently asked questions, 良くある質問 10. 付録 A - 255.255.255.255 というネットマスクと proxy arp, ブリッジ に関して 11. 付録 B - Siemens 社 DECT Radio Modem 12. 日本語訳について ______________________________________________________________________ 1. はじめに 1.1. はじめに この文章では、ワイヤレスネットワークの構築方法やそれに伴う諸問題につい て解説しています。ワイヤレスネットワークは、ケーブルで構築されたネット ワークとは少々異なるため、うまく動かすにはちょっとしたコツが必要です。 アンテナに関する知識をもっていた方がいいですし、それを何処に設置したら よいのか? とか、ローミングに関する事など、その他諸々について知っておい た方がよいでしょう。この文章に関するご意見は、大歓迎です。 Jean Tourrilhes Wireless Howto にアクセスすれ ば、他の様々な情報が見つかるでしょう。 ご意見・ご提案は、私までメール をくださ い。 (訳注 - 日本語訳に関するご意見・ご提案は、JF に お願いします) 1.2. Copyright Copyright (C) 2000,2001,2002 Roberto Arcomano. This document is free; you can redistribute it and/or modify it under the terms of the GNU General Public License as published by the Free Software Foundation; either version 2 of the License, or (at your option) any later version. This document is distributed in the hope that it will be useful, but WITHOUT ANY WARRANTY; without even the implied warranty of MERCHANTABILITY or FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE. See the GNU General Public License for more details. You can get a copy of the GNU GPL here 1.3. 翻訳に関して もしあなたが、このドキュメントを翻訳したいと思われた場合、特に制限はあ りません。但し実際に翻訳にかかる前に、少なくとも以下の事は行ってくださ い。 1. あなたの地域の LDP サイトに、この文章の他のバージョンの訳が存在して いないかどうか確認してください。 2. 注意! TXT ファイルや HTML ファイルを編集する必要はありません。 LYX ファイルを編集してください。そうすればこのファイルから TXT, HTML, RIFF 等に変換できます。変換には、"LyX" というアプリケーションを使ってくださ い。 "LyX" は、http://www.lyx.org からダウンロー ドできます。 (訳注 - "LyX" は、標準では日本語環境に対応していません。しかしながら、 CJK-LyX のパッチを適応する 事で、対応できるようです。) 私まで翻訳の許可を問い合わせる必要はありません。もしどうしても知らせた いのでしたら、翻訳結果だけ教えてください。 翻訳して頂いた方の努力に感謝します! 1.4. Credits/謝辞 実験のための機材と機会を提供してくれた Fatamorgana Computers に感謝します。 私のドキュメントを、迅速に掲示・更新してくれた Linux Documentation Project に感謝します。 2. 本文に入る前に 2.1. ワイヤレス とは何でしょうか? ワイヤレスは、離れた位置にある複数のコンピュータを接続する際に役立つ、 新技術の一つです。この技術は、送受信周波数 2.4GHz 帯を使い、イーサネッ トに良く似たソフトウェア的なインターフェースを持ち、ハードウェアアドレ スが世界中で重複しない、ワイヤレスカードを使う事で実現できます。標準的 な送信電力は、10-20mW から 100mW 程です。 (詳しくは、IEEE802.11 または FCC/CEPT の仕様を見てください) 2.2. ワイヤレスネットワークにおける最大通信距離はどの程度ですか? ワイヤレス通信において最も重要な事は、見通しの良さです。つまり、通信し たい位置から(目や双眼鏡で)アンテナが見える必要があります。直接見えない 場合でも、アンテナとの間には、せいぜい小さな木が生えている程度にしてお く必要があります。 通信距離は、アンテナと(最終的には増幅器)その使い方に依存します。具体的 な例を挙げると、無指向性アンテナを使えば 2-300m 程度、指向性のアンテナ なら、1km は通信できるでしょう。無指向性アンテナと増幅器(200mW の出力) の組み合わせならば 2-3km、パラボラアンテナを使えば数 km は届きます。パ ラボラアンテナ又は指向性アンテナと高出力の増幅器の組み合わせならば(数 W で)、50-60km まで伸びます。 ワイヤレスカードの出力を増幅する事は、かならずしも合法ではないという 事、またこの行為は、FCC/CEPT の仕様や自国の法律を破る原因になりうると いう事を、よく理解しておいてください。 2.3. ケーブルで繋がれたネットワークと、ワイヤレスネットワークとの違い は何でしょうか? ケーブルで繋がれたネットワークは、構築するのがとても簡単です。(少なく とも基本的なところでは) 一方ワイヤレスネットワークでは、構築するのも、 上手に運営するのも、不調の原因を特定するのも、大変難しくなります。機材 の導入に関する問題、ソフトウェアのインストールに関する問題、不調原因の 特定など、ケーブルで繋がれたネットワークで発生する典型的な問題は、ワイ ヤレスネットワークでは致命的な問題になります。 1. 使用するワイヤレスカードは、適切な物を選択しなければなりません。多 くの企業から、様々な仕様・要求事項を備えたカードが販売されていま す。もし小規模の LAN/WAN 環境を構築したいのであれば、IEEE 802.11 の 仕様に則ったワイヤレスカードと、アクセスポイントを購入すべきです。 2. ワイヤレスカードの多くは、PCMCIA タイプのものです。そのため、最初に Linux 用の PCMCIA ソースをインストールする必要があります。 3. 最初は、二つの装置の間でワイヤレスネットワークの実験をしましょう。 短距離の実験からはじめて、徐々に距離を伸ばしていきましょう。 4. 様々な天候(例えば雨天など)の条件下で、テストしましょう。 5. 構築が終了したあかつきには、最高の気分を味わう事ができますよ。 もしリピーター(複数のワイヤレスカードや、ケーブル接続用カードを装着し た Linux BOX)として機能するように構築しているのなら、設定に関して様々 な問題に直面するでしょうね! 2.4. ワイヤレスネットワークを構築するには、どんな知識が必要でしょう? ワイヤレスネットワークを構築するには、いくつか必要事項があります。例え ば、 ソフトウェアに関する事 1. IP アドレスやネットマスク、ルーティングなど、一般的なネットワークの 知識が必要です。これらは、Linux NET3-4-HOWTO に詳しいです。 ``(注 1)'' 2. proxy arp、ブリッジ、proc fs などの、特殊な機能に関する知識も必要と なります。これらに関しては、Proxy-ARP-Subnet、Bridge Mini-Howto な どのドキュメントや、 Linux(2.2.x , 2.4.x) のカーネルソースにあ る、Documentation/networking/ip-sysctl.txt に詳しいです。 ``(注 1)'' 3. ワイヤレスネットワークに関する特有な知識、例えばアクセスモード (ア ドホック、インフラストラクチャやアクセスポイントなど)に関する事や、 チャンネルの概念、室外・室内の定義などの知識も必要となります。これ らワイヤレスに関する多くのドキュメントは、IEEE standard 802.11, CEPT などで見つける事ができます。 ソフトウェア以外に関する事 1. アンテナに関して、その設置方法や設置場所に関する事など、最低限の経 験が必要です。 2. 必要に応じて、複数のワイヤレスカード間で、相互干渉を起こさないよう に導入していく技術も必要です。 最後に一番必要なのは、”運”です! (注1) このドキュメントで紹介している全ての HOWTO は、http://www.tldp.org から入手する事ができま す。 (訳注 - これらドキュメントの日本語訳は、JF JF から入手できます) 2.5. なぜワイヤレスネットワークの構築をすべきなのでしょう? またそれか ら何を期待できるのでしょうか? なぜかって? それはあなたがケーブルで繋がったネットワークに満足していな いからでしょ。 ワイヤレスカードさえあれば、庭や公園、町並みを突っ切ってどこへでも行く 事ができます。 (但し、通信の相手側が見える位置でないとだめですけどね!) ワイヤレスカードで使われている上位のプロトコルは、イーサネットカードで 使われているそれと同様のものです。例えば TCP/IP は、ワイヤレス環境下で もイーサネットの様に使えます。しかし、Windows 共有アプリケーションを使 う場合は、注意が必要です。もし転送の目的で Linux を使っていると、「ip forwarder が、ブロードキャストメッセージを通してくれない」と警告される 原因になります。 (もっと詳しく知りたい人は、Net BIOS プロトコルの解説 書を見てください) このような場合は、WINS サーバーを導入して、ネット ワークブラウジングをサポートしましょう。(Samba の付属文章を読んでくだ さい) (訳注 - Samba は、UNIX マシンを Windows 系 OS のファイル、プリント・ サーバーとして機能させるための CIFS/SMB サーバソフトウェアです。詳しく は、 Samba 本部 http://www.samba.org か、 Samba 日本語版日本 Samba ユーザ会 にアクセス してください) 一つのアクセスポイントさえあれば、小規模のワイヤレス LAN/WAN 環境を構 築できますし (たいてい同時にインターネットへのアクセスまでもが可能にな ります!)、又誰でも無線でアクセスできるようになります! 国中に無線システムが整備された国を想像してみてください。 すべての国民が同時に接続する事ができて、ファイルを共有し、高速な回線の もと音楽アプリケーションや映像アプリケーションを(ケーブルで接続された ネットワークと同じ様に) 使う事ができる、そんなネットワーク環境を想像し てみてください。 これらの事は、ワイヤレスカード、ワイヤレスアクセスポイントと、リピー ターとして機能するワイヤレス Linux Box を使う事で実現可能です。 (すで にいくつかの国では、これらを実現しています) このようなリピーターの構成 方法(IP レベルではルーター、データリンク層まで見る場合はブリッジドライ バを用いる)については、 Bridge Http Link か Bridge Ftp Link を見てください) 2.6. この HOWTO では、どんなワイヤレスカードに対応しているのですか? この HOWTO では、まず一般的な設定(ワイヤレスネットワークの導入のため に)からはじめて、私が直接知っているそれぞれのカードの設定例を、その性 能を十分に発揮するためのいくつかのコツを交えながら挙げていきます。 ワイヤレスカードのリスト 1. Proxim Symphony -http://www.proxim.com 2. Webgear AviatorPRO 2.4 (PCMCIA への対応が必要です) - http://www.webgear.com 3. Lucent Wavelan I, II, Orinoco - http://www.lucent.com か http://www.orinocowireless.com 4. Cabletron - http://www.cabletron.com 5. YDI am930_isa - http://www.ydi.com 6. Siemens Radio Modem (Dect) - http://www.siemens.com 7. RadioLan (5 GHz 帯を使用) - http://www.radiolan.com これ以上のリストは、 Jean Tourrilhes Wireless Howto を見てくださ い。 Siemens Radio Modem は、 802.11 準拠のワイヤレスカードではありません。 これはシリアルを通して接続するモデムであり、実際モデムの様に動作しま す。 (1800 MHz の周波数帯で、DECT 技術を使っています) このカードの使用 方法は、``付録 B''でふれます。 RadioLan のカードは、Windows9x の環境下では 5.4GHz で動作します。また RadioLan のアクセスポイントと一緒に使うと、アクセスポイントがワイヤー で繋がれたネットワークとワイヤレスネットワークの橋渡しをしてくれます。 (私の知る限り Linux 用のドライバは提供されていません) 2.7. どのくらいの費用がかかるのでしょう? 先に示したワイヤレスカードは、とっても安いものです。これらは2−3百ド ル程度から、ブリッジとして機能する二つのワイヤレスカードを持ったアクセ スポイント(Lucent 社の製品など)で数千ドルまでです。 3. ワイヤレスに関する技術解説 この章では、ワイヤレスの基礎を理解するために、その基本技術について説明 します。 3.1. 物理層 ISO/OSI モデルの第一層には、三つの仕様があります 1. FHSS (Frequency Hopping Spread Spectrum) - 周波数ホッピング・スペク トラム拡散方式 2. DSSS (Direct Sequence Spread Spectrum) - 直接スペクトラム拡散方式 3. 赤外線方式 - この方式に関しては、この HOWTO ではふれません 3.2. 構成 構成には2種類あります 1. AdHoc mode - アドホック・モード( Independent mode - 独立モード とも 呼ばれます)では、それぞれの局が、BSS(Basic Service Set)を構成した独 立ネットワークを持ちます。またこの BSS は、いずれも共通の仕様です。 2. Infrastructure mode - インフラストラクチャ・モードでは、それぞれの ネットワーク( BSS を構成しています)は、アクセスポイントを通して互い に通信します。つまり、アクセスポイントを中心に、ESS(Extended Service Set)を構築します。またこのモードでは、局を近くのアクセスポ イントに "接続させる "ローミング機能も備えています。 アドホック・モード はとても単純な機構(拡張性も乏しいが)であり、多数の ホスト間でお互い直接通信します。制限要項は、すべてのホストがネットワー クの届く範囲内、つまり直接見えるような位置にあることです。 (これはあく までも理想です。というのは、この問題は IP 層で解決することも可能だから です。詳しくは``5.4 章''を見てください) アドホック・モード(Adhoc mode) A - - - - - C \ / | \ / | / | / \ | / \ B - - - - - D インフラストラクチャ・モードの環境下では、アクセスポイントを使います。 全てのホストは、ネットワークを共有するために、アクセスポイントに接続し ます。 インフラストラクチャ・モード(Infrastructure mode) ESS A - - - | - アクセスポイント - - アクセスポイント- | - - - D B - - - | BSS1 BSS2 | - - - E C - - - | | - - - F B と C は、D,E,F を見る事ができません。しかし、全てのホストが同じ ESS を利用する事で、通信が可能です。重要なのは、A,B,C もまた、お互いが見え ていないという事です。 加えて、室内と室外というように、広いサービス範囲と狭いサービス範囲を区 別するという課題があります。 3.3. 互換性 世界には数多くのワイヤレスカードが存在している事を、頭の隅においておい てください。全てのカードが、他の全てのカードと通信できるわけではありま せん。互いに通信するためには、以下の条件をみたす必要があります。例え ば、 1. 同じ設定モードを使う - 全てのホストをアドホック・モード にするか、 インフラストラクチャ・モードにする 2. 同じ物理層を使う - 全てのホストが DSSS または FHSS を使う 3. 同じプロトコルを使う (例えば Proxim 社は、OpenAir という他の FHSS カードと通信できない、独自なプロコトルを実装しています) 3.4. アドホック・モードとインフラストラクチャ・モード、どちらを使うべ きでしょうか? アクセスポイントはとても便利ですし、問題の発生が少なくなります。しかし ながら、ちょっとばかし高価です。理想を言えば、大規模なネットワークの運 用を目的とするのであれば、インフラストラクチャ・モードを選択すべきで しょう。ホストの数が少ないのなら、アドホック・モードを選択する事も可能 です。ホストが少ないのに、そんなにお金をかけられませんからね。 一方で、お金を多くつぎ込めば、いろいろが順調に進むであろうというのも、 また真実です。お金をけちれば、その分トラブルにもぶつかるでしょうね。 3.5. Linux Box は、アクセスポイントとして使えませんか? よい質問です! 最近、このような形態での利用が可能なハードウェアがあります。それは Prism2 というものです。 Prism2 に関する情報は、http://people.ssh.com/jkm/Prism2/ にアクセスしてください。 (訳注 - 上記サイトはhttp://hostap.epitest.fi/ に移動しているようです。また、Prism2 の chip 製造元は、Intersil http://www.intersil.com/design/prism/ です。) 4. ツール box の必要条件 4.1. ハードウェアとしての必要条件 まず Linux Box (486 かそれ以上、例えば Pentium 100MHz などの CPU と 16MByte 以上のメモリ) が必要です。その他には、ワイヤレスネットワーク カード、アンテナ(``2.2 章''参照)も必要です。ネットワークの相手側( Win9x とか WinNT などがお望みであれば)も、交信の実験を行うのに必要です ね。 4.2. ソフトウェアとしての必要条件 以下が必要となります - 1. 最新の安定版カーネルソース (2.2.x) 2. PCMCIA カードを購入したのであれば、最新の安定版 PCMCIA ソース (pcmcia-cs) 3. ワイヤレスネットワークカード用ドライバ - もし持っていなのなら、提供 メーカーかカード製造会社のウェブサイトからダウンロードできるでしょ う。それでも見つける事ができないのであれば、 JeanTourrilhes Wireless Howto で検索するこ ともできます。 どうしても見つからないのであれば、ドライバができるのを待つか、Windows 用のドライバを Linux 用のドライバへ変換するしかないでしょう。 (がん ばってください!) 以上の準備が整った後、カーネルの再コンパイルを行います。続いて PCMCIA のソースを再コンパイル(ワイヤレスカードを使うのに必要であれば)します。 そして最後に、ワイヤレスドライバを再コンパイルします。これらは一般的な 手法です。使うカードによってはステップ 3 だけで良いでしょうし、ステッ プ 1 と 3 が必要かもしれません。この辺はドライバの仕様によって違いま す。 5. ワイヤレスネットワーク構築の概要 5.1. 基礎的な段階 一旦必要なものを入手して、必要なコンパイルをすべて実行してしまったら、 基礎的なワイヤレスの設定段階へ進みましょう。 1. カーネルの低レベルの設定 - カーネルの低レベルの設定を行い、Linux の カーネルがワイヤレスカードを認識できるようにしましょう。 (低レベル とは、例えば I/O Port とか、割り込み(IRQ)とか、DMA などです) つまり カーネルから、「ワイヤレスカードを正しく認識して設定しました」とい う表示が出るように設定しなければなりません。 2. データリンク層の設定 - 各ワイヤレスカードには、データリンク層におけ る標準値を設定するためのツールが提供されています。例えば Proxim Symphony の場合、"rl2cfg" と呼ばれるツールです。これは PCMCIA カー ドでの設定とは別で、そちらは PCMCIA 設定ファイルで行います。自分の 持つ全てのワイヤレスカードに対して、互いに交信できるようにするため に、首尾一貫して設定する必要があります。 3. IP 層の設定 - ここまでくれば、ifconfig や route のコマンドを使 い、IP 関係の設定ができます。 4. 性能を十二分に発揮させつつ、競合を避けるコツ - この段階までくれば、 あなたのワイヤレスネットワークは、基本的な動作はしています。ここに 加えて、特殊な機能の設定をする必要があります。例えば proxy-arp と か、icmp echo redirect、ブリッジ、チャンネル変更などです。これらの 設定を施す事で、ネットワークを最適化し、原因究明が困難で、バンド幅 を狭くしてしまうような競合を回避します。 注意点 - ステップ 1 2 3 は、ISO/OSI 標準モデルのレベル 1 2 3 に相当し ます。一方ステップ 4 は、ネットマスクが 255.255.255.255 という状況時に 発生する問題を解決するために付け加えたものです。実際 32bit のネットマ スクは、ISO/OSI 標準を守っていないので、ネットワークに対して、ブロード キャストとマシンの IP に同じアドレスを使い、ネットワークアドレスが存在 しないような割り当てを強制することになります。 この見方には批判をする人がいるでしょう。しかし、もしあなたがワイヤレス ネットワークを設定するために標準 ISO/OSI モデルを使うのであれば、サブ ネットのために多くのアドレスが無駄になりますし(個々のサブネットにおい て、2 つの IP ナンバー(ネットワークとブロードキャスト)を捨ててしまうの で)、また柔軟な IP 割り当て(地理的な条件などで発生する) ができなくなり ます。これについては、``付録 A''で詳しく解説します。 先のステップ 2 は、ケーブル接続のネットワーク設定では出てこない事柄で す。というのは、ケーブル接続のカードでは、この部位の特別な設定はないか らです。 5.2. 低レベルのカーネル設定 Linux カーネルに限らず、ハードウェアを認識させる事は PC を管理する上で いつも頭の痛い問題です。 ワイヤレスカードは、たいてい PCMCIA 形式なので、少しばかり複雑です。ま ず第一に、カーネルから PCMCIA アダプターを認識できるようにする必要があ ります。それができれば、ワイヤレスカード用の特定ドライバのインストール に挑戦できます。 PCMCIA の設定において、以下の事をしなければなりません - 1. linux のカーネルソースをインストールします。ソースは、 http://www.kernel.org から取得して /usr/src/linux に展開しましょう。 (展開の方法がわからない人は tar と gzip の使い方をみてください) 訳注 - カーネルソースは、できるだけ国内のミラーサーバーから入手する ようにしましょう。 2. linux pcmcia のソースをインストールしましょう。ソースは、 ftp://projects.sourceforge.net/pub/pcmcia-cs から取得して /usr/src/pcmcia に展開してください。 (展開方法がわからない人は tar と gzip のマニュアルをみてください) 訳注 - カーネルのソースと同様、できるだけ国内のミラーサーバーから入 手しましょう。 3. カーネルの設定を行い、自分用のカーネルをコンパイルします。この作業 では、linux ディレクトリ (/usr/src/linux) 内にある README ファイル を読んでください。 訳注 - JF プロジェクトでは、このファイル群も日本語への翻訳を進めて います。詳しくはJF を見てください。 4. PCMCIA ソースの設定と再コンパイルを行います。ディレクトリ /usr/src/pcmcia で configure, make コマンドを使います。事前に、必要 なドライバがあるか確認してください。無い場合には、ドライバの説明に 従いインストールする必要があります。 (たいてい pcmcia のディレクト リで "tar zxvf driver.tgz" を実行すれば OK です) 準備が整った後、コ ンパイルするため "make all" を実行します。コンパイルが終わった 後、"make install" を実行し、インストールしましょう。 5. インストールを実行した後、有用な設定ファイル群は /etc/pcmcia 以下に あります。 PCMCIA では無い場合 - 1. もし必要なドライバが linux のソースに含まれているのであれば(そんな 事は 99% 無いと思いますが)、それをディレクトリにインストールし、コ ンパイルする必要があります。 この段階にまで進めば、読み込む必要のあるモジュールの名前がわかっている はずです。 PCMCIA の設定は、PCMCIA のデーモンを起動すればよいだけで す。 (RedHat ならば,"/etc/rc.d/init.d/pcmcia start")、他のディストリ ビューションの場合は、"modprobe module_name options" です。ここのオプ ションの項目で、ワイヤレスドライバが使う、ioport, irq, data-link の値 を与えます。(``5.3 章''参照) とにかく、ハードウェアがドライバから正し く認識されているかどうか確認するには、以下のようにします - 1. "tail /var/log/messages" : このコマンドで、syslog が吐き出す情報を 見る事ができます。 2. "dmesg" : このコマンドで、より詳しい情報を得る事ができます。 3. /proc ディレクトリ : このディレクトリ以下のファイル群から、ioport, デバイス, irq やドライバの情報がわかります。 5.3. データリンク層の設定 それって何 ? ケーブルで繋がれたこれまでのネットワークでは、機器間をケーブルで繋いで しまえば、データリンク層の設定をしなくとも、TCP/IP パラメータを設定す ることができました。 ワイヤレスネットワーク環境では、これとは対照的に、データリンク層の設定 が必要です。例えば、 1. 私が接続するワイヤレスネットワークは、どの種類(アドホックかインフラ ストラクチャか)でしょう? 2. どのチャンネルを使わなければならないの? 3. これから接続するネットワークのサブネット( BSSID )は何? また ESS ID は? 4. 私の通信は、encryption アルゴリズムのようなもので守られているので しょうか? もし守られているならば、Length キーは何? このように、調整が必要な設定項目はたくさんあります。理由は、ワイヤレス ネットワークの基本設計によるものです。誰か近くにいる人が、アンテナをこ ちらに向けて、正しい TCP/IP の設定をするだけで、あなたのパケットを見る ことも、サービスを使うことも出来ます。 加えてワイヤレス環境の下では、互いに混信を起こしそうな多くのワイヤレス サブネットが、同時に存在している可能性があります。 従って、下記のような設定項目があります - 1. load-time モジュールのオプション設定 - 例えば "modprobe ray_cs essid='LINUX'" 2. run-time ドライバのユーティリティの使用 - 例えば "rl2cfg eth1 master" 5.4. IP の設定 これはあなたが直面しなければならない、三番目の問題です。この問題は、ワ イヤレスネットワークがさらに大きくなってきたときに、顕在化してくるで しょう。 ワイヤレス IP ネットワークは、負荷をかけて使わないのなら、あなたの負担にもならないことを覚えておいてください。 5.4.1. 簡単な構成例 全てのホストは、互いが見えます A - - - - - C \ / | \ / | / | / \ | / \ B - - - - - D このような構成はとても単純で分かりやすく、また特殊な設定( IP レベルの 設定など) を必要としません。 それぞれのホストへの IP アドレスと、正し い汎用ネットマスクを割り当てればよいだけです。 5.4.2. ちょっと複雑な構成例 ホスト A は 直接ホスト B が見えません A <- - - - 通信\ | 不可能\ C \ | B <- - - - A と B は、C を通してのみ交信が可能です。 もしネットワークがインフラストラクチャ・モードで構成されていて、C がア クセスポイントであるならば、別に問題はありません。アドホック・モードの 場合、 "master" ホストが構成した BSS に対し、他のホストは接続する事が できます。 (「"master" ホスト」という言い方が正式なもので無い事は、十 分承知していますけどね!) これで IP レベルの完全な相互接続が実現できています。つまり A と B は、C が持つ同じインターフェースを使って通信をおこないます。もし A か ら B に ping を打とうとすると、C からたくさんの ICMP REDIRECT パケット を受信します。この理由は、 C は A に対して、"パケットの目的地が、要求 が来た所と同じネットワーク内にあるよ"という事を伝えているからです。 解決方法 - これを抑止するため、コマンドラインから "echo 0 > /proc/sys/net/ipv4/conf/ethx/send_redirects" と入力してみましょう。 ( ここの ethx は、A と B に向けた C 上のインターフェースです) 他の問題 - A と C には、どんなネットマスク値を割り振ったらよいのでしょ う? 仮に A に対して、A と C を含んだネットマスクを設定すると、ネット ワークはうまく動かないでしょう。というのは、A はゲートウェイ(この場合 C )を使う事なく、行き先の知らない MAC アドレスと共に ARP 要求を出して いるからです。 あなたは proxy arp の利用を思いつくかもしれません。しかし、proxy arp から行き先を知る事ができるのは、送り先が要求先のインターフェースとは別 のインターフェースにある時だけなので、今回のケースには該当しません!! この様な場合、とっても小さなネットマスク (Win9x ならば 255.255.255.254 を、WinNT ならば、すくなくとも 255.255.255.248) を設定する必要がありま す。またホスト A と C が同じネットアドレスを持たないように、確実に設定 する必要があります。 例 : 1. IP(ホスト A) = x.y.z.2/31, IP(ホスト B) = x.y.z.3/31 この設定では、 うまく動きません。というのは、 A はネットワークに対して B の事を尋 ねますが (ARP の要求)、 A と B が同じインターフェースに繋がっている にも関わらず(従って proxy arp は無し)、 C は要求に応答してくれませ ん。 2. IP(ホスト A) = x.y.z.1/31, IP(ホスト B) = x.y.z.2/31 この設定は動作 します。なぜなら、A は C に対して B の事を聞くからです。 ( B に対し て、C の MAC アドレスと一緒にして要求を出すので) 一般的にシステムは、ネットマスク値 255.255.255.254 という状態下におい て、最終ビットだけが違う 2 つの IP アドレスを与えることで動きます. これらすべては、TCP/IP を強制しています。しかしこれは、高いレベルの柔 軟性を得るためには、唯一の方法です。 注意点 - もしアクセスポイントを利用しているのであれば、 (ネットワーク はインフラストラクチャ・モード) すべての問題はデータリンク層で解決され てしまうので、このような問題に直面する事はありません。 (ほとんどのアク セスポイントは、ブリッジとして機能しますから...) しかしアクセスポイン トは高価です。(だいたい 1000 US$ か、それ以上) ですから、2、3 個のワイ ヤレスカード程度であれば、転送用に Pent133MHz,32MByte の RAM を積んだ 程度の PC を使うと、けっこう経済的です。 5.4.3. インターネットへのアクセス A - - - - - C - - インターネット \ / | \ / | / | / \ | / \ B - - - - - D いくつかの状況が想定されます 1. C だけが唯一、公の IP アドレスを持っています。このワイヤレスネット ワークを動かすためには、プライベートな IP アドレス(例えば 192.168.x.y)を設定し、C 上において転送やマスカレードを行うだけでよ いです。 A, B, D は、C を標準のゲートウェイとします。 2. インターネットからアクセス可能な、一般的なネットマスクを割り当てら れており、 C はこのネットワークからインターネットへ接続するための、 標準ゲートウェイです。必要なのは、C 上で転送機能を有効にする事 と、A, B, D に対して C を標準ゲートウェイとするだけです。 3. インターネットからアクセス可能な、一般的なネットマスクを割り当てら れており、加えて C は、インターネットへアクセスするための標準ゲート ウェイではない場合を考えます。この場合二つの方法があります。一つ は、ネットワークに対して、C を標準ゲートウェイとして使うように構築 することです。対称的に C に対しては、インターネットにアクセスするた めに、標準ゲートウェイを指すように仕向けなければなりません。この方 法のかわりにできる事は、C に対して proxy arp 機能を有効にする事で す。 (echo 1 > /proc/sys/net/ipv4/conf/ethx/proxy_arp ここの ethx は、標準ゲートウェイに繋がっているインターフェースです) そして C 上 の標準ゲートウェイを、インターネットへアクセスする標準ゲートウェイ を指すように設定します。 Proxy arp は TCP/IP に対して強引に振る舞い ますが、うまく機能します。 5.4.4. ケーブルで繋がったネットワークとワイヤレスネットワークが混在し ている場合 インターネット \ \ E \ / \ / ワイヤレス A - - - - - C - - F \ / \ | \ / | \ ケーブル / G | / \ | / \ B - - - - - D ここの C は、二つのネットワークの中継をしています。右側はワイヤレス ネットワークで、左側はケーブル接続のネットワークです。 加えて、インターネットへのアクセスも可能です。つまり C には、3 枚の ネットワークカードが搭載されているのです。 ホストに対して、どんな IP アドレスを割り振ったらよいのでしょう? これ には二つの解決策があります。 1. ネットワークを二つのサブネットに分割する方法 - 例えば 192.168.1.0/24 と 192.168.2.0/24 のように分割します。この解決方は 手っ取り早い方法ですが、もしインターネット IP アドレスを使っている と、多くの IP が無駄になるので拡張性に欠けます。 2. 二つ目の解決策は、C 上の二つのインターフェースに対して Proxy Arp 機 能を有効にする事です。ネットワークパラメータ(ネットアドレスや、 ネットマスク)は、ワイヤレスでもケーブル接続ネットワークでも一緒で す。しかし、 proxy-arp を有効にすることで、どの IP がケーブル接続 ネットワーク上のものか、あるいはワイヤレスネットワークなのか、選択 できるようになります。 2 つ目の解決策について検討してみましょう 例 - インターネットの公なサブネット x.y.z.0/24 を持っている場合を想定 します 各インターフェースの設定は以下のとおり 1. ifconfig eth0 x.y.z.C netmask 255.255.255.255 (ケーブル接続ネット ワーク) 2. ifconfig eth1 x.y.z.C netmask 255.255.255.255 (ワイヤレスネットワー ク) 3. ifconfig eth2 x.y.z.C netmask 255.255.255.255 (インターネットへ) eth2 上における静的な配送 1. route add IPGW dev eth2 2. route add default gw IPGW この配送経路指定では、全てのインターネットからのアドレス指定要求に対し て、自分の標準ゲートウェイを指定します。つまりお気づきのように、最初に Linux に対して何処にルーターがあるのか教える必要があり、そうすれば、標 準の要求がそこを通過するようにできます。 eth0 上における静的な配送 1. route add x.y.z.A dev eth0 2. route add x.y.z.B dev eth0 3. route add x.y.z.D dev eth0 ホスト A B D は、ケーブル接続のネットワーク上にあります。 eth1 上における静的な配送 1. route add x.y.z.E dev eth1 2. route add x.y.z.F dev eth1 3. route add x.y.z.G dev eth1 ホスト E F G は、ワイヤレスネットワークに繋がっています。 注目すべき点は、柔軟性が大変高い事です。しかし、それぞれのホスト毎に手 動で設定しなければなりませんが。 6. 設定 ここでは、安価で広く普及しているワイヤレスカードの設定方法を、いくつか の例(この例が役立てばいいのですが!)を挙げて説明します。 6.1. 一般的な設定情報 ワイヤレスカードは、一般的なイーサカードと似たインターフェースを持って います。ですから、/etc/conf.modules に加える事が必要です。以下に例を示 します - 1. "alias ethx module" ここの ethx は、あなたが自分のワイヤレスカード に割り振りたいインターフェースを指しています。 module は、カーネル モジュールの名前です。 2. "options module io=0xAAA irq=I ..." ここの 0xAAA は、ワイヤレスカー ドの I/O アドレスを示しており、 I はIRQ を示しています。もし他のパ ラメータがあるのなら、後に続けます。 以上が完了すると、ifconfig や route コマンドを使って IP レベルでのカー ド設定を行う事ができるようになります。 6.2. Proxim Symphony ネットワークの形式 : FHSS ___ アドホック・モードのみに対応し、独自に開 発した OpenAir プロトコル を使います。 ウェブサイト : http://www.proxim.com ___ この サイトで Linux、Windows9x 用のドライバと、ドキュメントをダウンロードす る必要があります。 ドライバには、コンパイルするためにソースコードが附属しています。 1. 空きディレクトリで解凍します 2. ヘルプを見るため、make と入力してみましょう 3. ドライバ rlmod.o と、そのユーティリティ rl2cfg をインストールするた め、 make modules; make modules_install を実行します。 4. ドライバを動かすために( /etc/conf.modules を編集した後 - ``6.1 章'' 参照) ifconfig コマンドを使って、インターフェースを有効にしましょう ユーティリティ rl2cfg を使うと、代表的なデータリンク層の設定値を変更で きます。 (ステップ 3 を実施してしまったら、man rl2cfg でヘルプを見る事 ができます) 1. "rl2cfg dev ethx sta" ethx のワイヤレスカードを、スレーブ局(Slave) として設定します 2. "rl2cfg dev ethx msta" ethx のワイヤレスカードを、マスター 局(Master)として設定します 3. "rl2cfg dev ethx alt" ethx のワイヤレスカードを、自動モー ド(automatic mode)に設定します 以上が、確実な動作をさせるために知っておかなければならない全てです。 6.3. Webgear Aviator 2.4 と AviatorPro ネットワークの形式 : FHSS ___ Aviator 2.4 はアドホック・モードのみに対 応し、 AviatorPro はインフラストラクチャ・モードに対応します。 これらのカードを動かすには、もう少し作業が必要です。というのは、これら のカードのソースは PCMCIA のプラグに付属しているので、コンパイルを行わ なければならないのです。 ウェブサイト : http://www.webgear.com インストール・設定方法 1. PCMCIA のソースをダウンロードし、/usr/src/pcmcia に展開します。 (``5.2 章''参照) 2. ドライバを、http://www.webgear.com からダウ ンロードし、 /usr/src/pcmcia のディレクトリで、"tar zxvf driver.tgz" と入力して展開します。 3. PCMCIA の再設定(``5.2 章''参照) 4. ファイル /etc/pcmcia/config.opts に対して、"source ./ray_cs.opts" の行を追加する必要があります。 5. 注意点 - /etc/pcmcia/ray_cs.opts のファイル中に、次の行があります。 "module "ray_cs " opts "..." ここの opts 行に対して、データリンク 層の設定を施す必要があります。 設定項目 o pc_debug=x , ここの x は、ログレベルを表します。 o net_type=x, x=0 はアドホック・モード、 x=1 はインフラストラクチャ・ モードを表します。 o essid=x, x は、 ESSID を表します。 最後に、設定項目を確認するため pc_debug > 0 を実行します。こうすると、 コンソールにデータリンク時のメッセージが表示されます。こんな感じです - "network started" : 新しいワイヤレスネットワークが構築された時 "network joined" : 新しいワイヤレスネットワークが、他のネットワークに 繋がった時 ファイル /proc/ray_cs も役立ちます。このファイルには、あなたが接続して いるサブネット上の BSSID 情報が書かれています。もしこのファイルが空な らば、他のカードからデータを受信できません。 6.4. Lucent Wavelan I, II, Orinoco 製品と Cabletron ネットワークの形式 : DSSS ___ アドホック・モードとインフラストラク チャ・モードに対応 Lucent 社の製品は、業務用途向けに作られています。 ウェブサイト : http://www.lucent.com と http://www.orinoco.net 設定は WebGear に似ています。ステップ 1 2 3 は同じです。 ファイル /etc/pcmcia/config.opts に対して追加する必要があります。 "wavelan_cs" opts " ..." は Lucent Wavelan I 用モジュールで、 "wavelan2_cs"opts " ..." は Lucent Wavelan II 又は Orinoco 用のモ ジュールです。 opts 以下で明示する項目 1. port_type=x, ここの x は、アドホック・モード(3)またはインフラストラ クチャ・モード(1)を示します。 2. channel=x, x=channel, このオプションは、アドホック・モードのみに関 係します。 3. transmit_rate=x, 通信速度の確定 - この設定をするときには、Cabletron カードとの互換性に注意してください。 注意 - 理想的には、一つの Linux Box で二枚の Lucent Wavelanx カードを 使う事は可能です。つまり、一方をアドホック・モードにして、もう一方をイ ンフラストラクチャ・モードにするような事です。しかしこのようにすると、 どちらか一方のみしか正しく動作しません。というのは、PCMCIA のサービス が開始される時、二つのカード両方に対し、同じ opts 値(アドホック・モー ドの値か、インフラストラクチャ・モードの値のどちらか)がセットされるか らです。そこで我々は、データリンク層のパラメータ、例えばアクセス・モー ドやアドホック・モードで使われるチャンネルなどを、任意に変更可能な Linux モジュール (またはユーザーモードプログラムみたいなもの) を作らな ければならないのです! 多くの場合、チャネルパラメータは、近くにある他のワイヤレス送受信との混 信を避けるために使われます。 Lucent 用のドライバは、Cabletron 社のカード http://www.cabletron.com にも使用可能です。 (訳注 - 山口さんによるレポート : Lucent のサイトは2回の企業吸収によ り、現在の Wavelan または Orinoco 関連は http://www.proxim.com/ に移っているようです。また Linux のドライバ は、 http://www.hpl.hp.com/personal/Jean_Tourrilhes/Linux/Orinoco.html に ある orinoco.cs の方が Lucent の wavelan2 よりもずっと良いと思いま す。) 6.5. YDI ネットワークの形式 : DSSS ___ アドホック・モードとインフラストラク チャ・モードに対応 YDI 社は、業務用のワイヤレスカード、アンテナ、増幅器などを扱っていま す。 ウェブサイト : http://www.ydi.com インストール方法 1. 空いたディレクトリで展開します 2. make を実行し、コンパイルします 3. make install を実行し、ドライバ am930_isa と wlanctl ユーティリティ をインストールします 一旦インストールが済んでしまえば、データリンク層設定用ユーティリティ "wlanctl" を使って手動コマンドで設定するか、シェルスクリプト "scripts/wlan" 又は "scripts/rc.wlan" を実行して、自動的にネットワーク の設定を行うか、どちらかの方法を選択する事ができます。 手動で設定する場合の、代表的な設定例を挙げます 1. "wlanctl scan ..." : すでに存在している BSS を探します 2. "wlanctl netlist" : "wlanctl scan ..." コマンドを使って探し出した 結果を表示します 3. "wlanctl bsscreate ... ssid" : ssid 値を使い、新しいネットワークを 構築します 4. "wlanctl bssjoin bssid" : bssid 値で認証されたネットワークに参加し ます 5. "wlanctl authen" と "wlanctl assoc" は、認証サービスを使って通信す る時のオプションです 7. Wireless に関するさらなる情報 7.1. ワイヤレスに対応した Linux ディストリビューション ワイヤレスに対応したディストリビューションとして FlyingLinux というの があります。このディストリビューションは、1999年の10月、 Teleinformatics KTH 社 の Telecommunication Systems Lab(通信システム研 究所)で、 MobileIPv4 をワイヤレス環境下で使う事の可能性の研究と、学生 の研究所で使うためのワイヤレスアクセス環境下における標準 DHCP の技術確 立を目標に、開発がはじまりました。 この研究結果は、 100人の生徒と先生が、2000年3月から5月までの 2G1303 プ ロジェクトの期間中、 FlyingLinux 環境の元でワイヤレスネットワークが利 用できました。 FlyingLinux は、モバイルサービスに適合させた Linux のディストリビュー ションとしては、最初のものでしょう。このディストリビューションで は、Kerberos のサポートや OpenSSH の導入など、セキュリティ面にも配慮し てあります。 FlyingLinux は、オープンソースの流れの中の一部です。我々は FlyingLinux の中に、GPL のライセンス下で開発されてきた KTH を入れました。 このワイヤレス Linux のディストリビューションは、 http://www.flyinglinux.net で見つける事が できます。 管理者 - Alberto Escudero Email , Home Page 8. リンク集 8.1. オープンソフトウェア関係のリンク o Linux-wlan project o Jean Tourrilhes Wireless Howto 8.2. 商用関係のリンク o Fatamorgana Computers o Lucent web site o YDI web site o Siemens web site 9. FAQ - Frequently asked questions, 良くある質問 Q1: BSSID と ESSID の違いはなんでしょうか? また、どんな時に ESSID が必 要になるのでしょう? A1: BSSID は、狭い領域の BSS の認証に使われる 48bit の数字です。ここで は、全てのホストが互いに(また、一つのアクセスポイントとも)交信していま す。 ESSID は、別の BSS と通信を可能にする、長さが可変な文字列のような ものであり、異なった BSS 間を、 Extended Service Set(ESS)に拡張して通 信可能にしています。それぞれの BSS に一つのアクセスポイントがあり、そ れらがすべて同じ ESSID に属している時だけ、他のホストと交信できます。 少なくとも 2つのアクセスポイントが存在するような、大きなネットワークに アクセスするような時、本当に ESSID が必要となるのです。 Q2: どんなアクセスポイントを購入したらよいでしょう? A2: あなたが見つけた中の、安いものにしましょう。というのは、重要なのは アクセスポイントとあなたが使っているカードが、同じ物理層の仕様を使って いるかどうか? という事だからです。全ての FHSS 仕様のカードには互換性が あります。また DSSS 仕様のカードも同様です。但し、Proxim RangeLan2 は、他の標準的な FHSS のカードと通信できないので注意が必要です。この カードは、OpenAir という独自のプロトコルを使っているからです。 Q3: 設定の際には、どのチャンネルを使ったらよいのですか? A3: もし複数の BSS (かつ別の会社の機器で構成されている) にアクセスでき るのなら、混信という問題が生じる可能性があります。このような場合、アク セスポイント上のチャンネルを変更するか、アドホック・モードのホスト群に 参加するようにすれば、問題を回避できます。 Q4: なぜインフラストラクチャ・モード上のホストに対して、自分でチャンネ ルの設定ができないのでしょう? A4: チャンネルは、アクセスポイントによって決定されるものだからです。 10. 付録 A- 255.255.255.255 というネットマスクと proxy arp, ブリッジ に関して この章を読む事で、ワイヤレスネットワーク環境における Linux の優位性を 知る事になるでしょう。 Linux では、インターフェース毎に特定のネットマスク値、例えば 255.255.255.255 のような値を設定することができます。この事により、eth0 にはこの値、eth1 には別の値というように、多くのインターフェースに対し て、自分が設定したい IP アドレスを自由に割り振る事が可能になります。 この事は、別段の副作用を起こしません。 加えて proxy arp の機能があります。この機能の設定は、ファイル /proc/sys/net/ipv4/conf/ethx/proxy_arp (ここの ethx は、自分のインター フェースを指します) を編集するだけです。 proxy_arp を有効にしたいのであれば、 "echo 1 > proxy_arp" とすればよ く、無効にしたいのであれば、"echo 0 > proxy_arp" とすれば、機能は停止 します。 proxy_arp とは何でしょう? 高速な proxy arp は、目的のアドレスが Linux ルーターの別のインターフェース上にある時など、ルーターから ARP 要求の 返答が早く欲しい時に役立ちます。 例 : 192.168.1.1 ---- 192.168.1.2 Linux ルーター 192.168.2.2 ---- 192.168.2.1 この例が動作するためには、以下の事が必要です proxy-arp を無効にした場合 1. 192.168.1.1 ホスト上において、192.168.1.2 をゲートウェイとして設定 します 2. 192.168.2.1 ホスト上において、192.168.2.2 をゲートウェイとして設定 します 3. どちらの端からも ping が通ります proxy-arp を有効にした場合 1. 192.168.1.1 ホスト上において 192.168.1.2 をゲートウェイとして設定し ます 2. 192.168.2.1 のホストには ゲートウェイを設定しません。その代りに、 ルーターにつながる右側のインターフェースに対して proxy_arp を有効に します 3. どちらの端からも ping が通ります 192.168.2.x 上での Proxy-arp は、 192.168.2.1 のホストから ping を打ち linux ルーターに答えさせる場合、ルーターは 192.168.1.1 のホストが在る と答えるので、ping に対して応答する事ができます。ソース元が ICMP パ ケットの送信を開始した後、Linux ルーターは 192.168.1.1 の本当のホスト に対して向け直さなければならない事を知っているのです。 ワイヤレスネットワーク環境下おける proxy arp は、 IP 転送マシンとして 機能する Linux Box を多く抱えている時や、全てのホストに対して静的な ルートナンバーを設定したくない時などに役立ちます。 ワイヤレスネットワーク環境下における Linux ブリッジの実験を行う事もで きます。 1. 最新の安定版カーネルをインストールしましょう 2. 優れたブリッジ用ユーティリティをダウンロードしましょう。場所は http link 、または ftp link にあります 管理していくためには、ブリッジ機能はできるだけシンプルにしましょう。 11. 付録 B - Siemens 社 DECT Radio Modem ウェブサイト : http://www.siemens.com まずは、この製品がどんな物か? という疑問に対する解答からですが、これら 二つの構成部品は、本物のワイヤレス PC カードとはちょっと異なり、外部デ バイスとして使うモデムに近いものです。 ホスト 1 - シリアル - RadioModem1 - - - - - RadioModem2 - シリアル - ホスト 2 ・どのように接続したらよいのでしょう? この製品の大まかな構造を理解したのなら、下記のような構成にできます ホスト 1 - シリアル - - NULL モデムケーブル - - シリアル - ホスト 2 つまり二つのホスト間を、長いシリアルケーブルで接続するような感じです。 2 つの実際にありそうな接続における設定例は、以下のようになります - 1. Linux 対 Windows 接続 - Linux には ppp コールに対して反応するデーモ ンがあります。一方 Windows には、Remote Access をベースにしたダイヤ ルアップ接続機能があります。 2. Linux 対 Linux 接続 - ここでは、(両方のホスト上で) IP アドレスをあ べこべにした状態で ppp 接続を実行する事ができます。 1 の場合 Linux 上で下記のような簡単なスクリプトを使う事ができます。 "/usr/sbin/pppd -detach lock idle 300 crtscts connect "/usr/sbin/chat -v TIMEOUT 5 AT OK AT OK AT OK AT OK" IPLINUX:IPWINDOWS /dev/ttySx 115200 disconnect "/usr/sbin/chat -v AT OK" ms-dns IPDNS" 解説 o /dev/ttySx は、あなたが使おうとするシリアルポートです o IPDNS は、DNS サーバーの IP アドレス o IPLINUX は、Linux の IP アドレス、 IPWINDOWS は、Windows の IP アド レス 上記のスクリプトは、Windows に対して、シリアルの末端にモデムが存在して いるように信じ込ませるのに必要なのです! Windows では、ダイアルアップの接続を作る必要があります。この場 合、CRT/CTS は有効、速度は 115200 にします。あと、電話を掛けるためのダ ミーの電話番号を決めます。 (Remote Access が要求してきますが、全く使わ れません) 2 つ目の例の様に、両端とも Linux Box の場合、両サイドで下記のとっても 簡単なスクリプトを実行するだけです。 "/usr/sbin/pppd passive local crtscts IPLINUX1:IPLINUX2 /dev/ttySx 115200 noauth persist" このスクリプトを実行する際には、 IPLINUX1 と IPLINUX2 を両端の LinuxBox で逆にして指定する必要があります。 注目すべき点は、あなたが望めば Linux 対 Linux の接続と Linux 対 Windows の接続は同程度であると証明できる事です。 12. 日本語訳について 翻訳に関するご意見は、JF までお願いします。 校正およびご意見を頂いた方々(敬称略 五十音順) : o Seiji Kaneko o Shingo Yamaguchi o Yoshiyuki YAMASHITA