Global Linux-TIA HOWTO Irish v2.0T, 1995/12/16 Shintaro Shito v2.0Tj, 1996/04/01 この文書は Linux システムを他のホストへ TIA (The Internet Adaptor) を 使って接続するための方法について説明しています。この文書に関して筆者は 責任を負いませんが、間違いを見つけたら連絡して下さい。 TIA を使って他 のホストに接続が成功した後何が出来るのかについては、この文書では説明し ません。しかし、それらについては他に数多くの文書が作成されているので、 そちらを参考にしてください。 注意: この文書はかなり以前に書かれたものなので、いまどきの Linux 環境 にはあてはまらない箇所があります。 (JF Project) 1. TIA とは何か? The Internet Adaptor (TIA) は、marketplace.com の人達によって作成され た、シェルアカウントから SLIP 接続をシミュレートするソフトウエァです。 価格は、シングルユーザ用ライセンスが 25 ドル、その他にサイトライセンス も入手可能です。 TIA は標準的な TCP/IP と SLIP が使える OS があれば、 どのようなマシンでもクライアントとして使用できます。 1.1. TIA はどのように動作するか? TIA がどのように動作するか、そしてどのような制限があるのか、という事を 理解しておくのはとても重要なことです。まず第一に、あなたの Linux シス テムに TIA をインストールする必要はないという事に注意して下さい。TIA は、あなたのリモートホスト上でのみ動かせば良いのです。あなたの Linux システム上に必要なのは、 TCP/IP と SLIP がサポートされたカーネル(カー ネルについては後で触れます)と、いくつかのクライアントです。 動作の仕組み: あなたの Linux システムからのコマンドやデータをホストへ送るには、SLIP を使用します。送られたデータは TIA が受け取り、ネットワークへ中継しま す。そして、ネットワーク側から返されてくるデータは一旦リモートホスト上 のあなたのシェルアカウントへ送られ、それを TIA が横取りしてあなたの Linux システムへ SLIP を使って転送します。したがって、ネットワーク側か らはあなたはリモートホスト上で行動しているように見えますが、あなたの Linux システムは実際にネットワークに繋がっているかのように見えるので す。 上記のように多少複雑な手順を踏んでいるため、ネットワーク側から送られて くるデータは時に混乱を招きます。例えば、talk は TIA を通しては使えませ ん。なぜならネットワーク側からやってくる talk のリクエストはリモートホ スト上の talk daemon を動かそうとするからです。 また、本当の SLIP 接続と TIA を使った接続の大きな違いは、独自の IP ア ドレスが無いということです。つまり、何度も言うように TIA はダイアル アップのシェルアカウントを普通の SLIP 接続かの様に見せているだけなので す。 1.2. term との違いは? では結局 term とどう違うのか? 筆者の意見では term を使うのは、ちょう ど昔の自動車みたいにクランクを回してエンジンを始動するようなもので、不 要な努力だけが多い様に思われます。もちろん、何らかの理由であなたの Linux システムへの root でのアクセス権が無く、しかも誰かに SLIP や dip をインストールしてもらうことも出来ない状況なら、仕方がありません。もし term についてもっと詳しく知りたいなら、Sunsiten にある HOWTO ドキュメ ント (日本語訳) を読んで下さい。 1.3. SLiRP との違いは? SLiRP は新しく、しかも GPL 準拠なのでフリーなソフトウエァです。一 方、TIA はフリーではないのですが、そのかわり非常に安価で安定していてサ ポートやドキュメント類も充実しています。もしどうしても SLiRP のほうが 良いと感じるなら使ってみて下さい。これから説明してゆく TIA 用の諸設定 に多少の変更を加えるだけで SLiRP も使えるはずです。ただし SLiRP に関し て筆者は良く知らないので、メールで質問するのは止めて下さい。もちろん筆 者はフリーソフトに対しては好意的ですが、これは TIA に関する文書なので これ以上言及しません。筆者のホストはサイトライセンスを持っているの で、TIA にお金を払ったわけではありませんが、TIA には金額相当かそれ以上 の価値があると確信しています。 前置きはこのくらいにして、セットアップに移りましょう。 2. あなたの Linux システム側での準備 おおまかにいえば、以下のような作業が必要です。これらについては後で詳し く説明します。 o SLIP と TCP/IP がサポートされるようにカーネルを再構築する。 o /etc ディレクトリ以下のいくつかのファイルを編集する。 o dip をインストールし、設定する。 上記のことがらの他に、あなたのリモートホストの OS に合った TIA のバイ ナリをインストール(もちろんリモートホスト上に)する必要があります。これ に関しては、 TIA のホームページに詳しく書いてあります。 注意: TIA 2.0.5 が完成しました。新しいバージョンでは CSLIP と PPP が新にサ ポートされました。CSLIP を使うにはほんの少し設定に変更が必要なのです が、このことについてはあとで触れます。また、PPP については、新しい PPP HOWTO (日本語訳) が完成しつつあるので、そちらを参照して下さい。 では、はじめましょう! 2.1. カーネルの再構築 もしいままでカーネルを再構築したことがないのならば、再構築しなくてはい けません。「再構築」などと言っても、べつにそれほど難しいわけではありま せん。まずFAQ集などをよく読んで、もしそれでも不明な点があればメールを 下さい。 では、かいつまんで説明しましょう。まず「make config」コマンドでセット アップを開始します。最初に「Network Devices」のセクションで、「y」と( もちろん!)答えて下さい。すると、いろいろと詳しい設定を聞かれますの で、 SLIP と TCP/IP のサポートのみ「y」と答え、それ以外の質問には特に 必要のない限り「n」と答えて下さい。ethercard や、SLIP と TCP/IP 以外の プロトコルのサポートが必要な場合は適宜「y」と答えて下さい。( TIA 2.0.5 以上のバージョンを使う人は CSLIP に関しても「y」と答えて下さい) SILP と TCP/IP のサポートがないカーネルでは TIA に接続出来ません!あとは新 しいカーネルをコンパイルして、正しくインストールして下さい。 2.2. /etc 以下のファイルを編集する /etc 以下のファイルで、あなたの Linux システムからリモートホストまでの ルートを設定します。/etc ディレクトリはシステムの諸設定をするためのも のです。以下に挙げる例を参考にして、あなたのシステムに合うようにダブル クオート("")内を書き換えて下さい。(書き換える際にダブルクオートは書く 必要がありません。ダブルクオートは単に書き換える場所を示しているだけで す) TIA を使うためには /etc 以下の3つのファイルを編集する必要がありま す。それら3つのファイルとは、 o /etc/hosts: 127.0.0.1 localhost 192.0.2.1 "your.hostname.domain" "XXX.XXX.XX.XX" "remote.hostname.domain remote" #<- ホストの略称も付記 o /etc/host.conf: order hosts, bind multi on o /etc/resolv.conf: domain "yourdomainhere" nameserver "XXX.XXX.XX.XX" #<- 普通は/etc/hostsのリモートホストと同一 また、NNTP サーバを使う時は、以下を /etc/profile に付け加えて下さい。 export NNTPSERVER="remote.hosts.nntpservername" 2.2.1. Dip について Dip とは、リモートホストへ電話をかけて TIA を起動し、回線を SLIP 接続 にするためのソフトウェアです。Dip は Slackware パッケージの「N」ディス クセットの中に含まれています。「N」ディスクセットにはたくさんのクライ アントやユーティリティが含まれていて、そのなかのいくつかはあなたもイン ストールすることになるでしょう。=) 「N」ディスクセット以外で も、Sunsite で別個に tar された Dip が入手できます。 Dip をインストールしたら、正しく接続するために Dip 用のスクリプトを書 かなければいけません。以下に挙げる例を参考にして、ダブルクオート("")で 囲まれた部分をあなたのシステムに合うように書き換えて下さい。(前章同 様、ダブルクオートをつける必要はありません) ----------CUT HERE-------------------------------- main: get $local "your.hostname.domain" get $remote "remote.hostname.domain" port cua"?" #<-- モデムが繋がっているポート speed 38400 #<-- 新しいカーネルなら57400まで早くする reset # 事が可能です。 init AT "string of commands" #<-- 「AT」の直後にスペースを入れないこと wait OK 5 # このスクリプトではリダイアルをします。もしうまく動かなかったら、wait time # を書き換えてみて下さい。もしそれでもうまく動かないようでしたら、筆者に # メールで質問して下さい。 # また、このスクリプトの最後に注意が書いてあるので、そちらも確認してくださ # い。 dial: dial "phonenumber" print Dialing... if $errlvl != 0 goto error wait BUSY 20 #<-- ここのwait timeをあなたのモデムに合う if $errlvl == 0 goto dial # ように書き換えて下さい。 login: print Connected and Logging in... wait ==> 60 #<-- この部分のwaitとsendは筆者のホストへ接 send 4\n #<-- 続するための設定なので書き換えて下さい wait ogin: 60 if $errlvl != 0 goto login_error1 send "LOGIN"\n wait assword: 60 if $errlvl != 0 goto login_error2 send "PASSWORD"\n loggedin: wait "SYSTEM PROMPT" 60 if $errlvl != 0 goto shell_error send tia\n wait software. 60 if $errlvl != 0 goto tia_error print Starting TIA... get $mtu 296 #<--TIAは1500を推奨しているようですが、この設定のほ default #うがインタラクティヴなセッションは早くなります。 #ただしFTPは遅くなるので、好みで書き換えてください. done: print CONNECTED to $remote with address $rmtip mode SLIP # TIA 2.0.5 を使う人は上記の設定を # 「mode CSLIP」と書き換えて下さい。 goto exit error: print Dialing Error login_error1: print No Login login_error2: print No Password prompt shell_error: print No shell prompt tia_error: There was a problem starting TIA exit: \r #<-- -vオプションをつけて起動するとここの部分でエラー # が出て止まってしまいます。でも普通に起動した場合は # エラーが出ません。 -------------CUT HERE----------------------------- 2.2.2. Dip に関する諸注意 新しいバージョンの Dip は、モデムのステータスコードを文字列(BUSY とか NO CONNECT など)で返さず、数字で返します。下記の一覧を参照して下さい。 0 = OK 1 = CONNECT 2 = ERROR 3 = BUSY 4 = NO CARRIER したがって、新しいバージョンのものを使う場合はサンプル中の「dial」セク ションを下記のように書き換えて下さい。 dial: dial "phonenumber" print Dialing... if $errlvl != 0 goto error wait 1 20 if $errlvl != 1 goto dial この部分はに関しては Lee Olds 氏 (lee@eskimo.com) が指摘してくれまし た。 サンプル中の\n と \r はそれぞれ、\n = newline, \r = carriage return の 意味です。これらのどちらか(または両方)が正しい場所に記述されていなけれ ばいけません。もしサンプル中の \n か \r に問題があるようでしたら、適宜 変更して下さい。 Dip 用のスクリプトを編集したら、そのファイルを(例えば) remote.dip とい うような名前で /root ディレクトリに置いて下さい。そして、root 権限で 「dip remote」とコマンドを打てば、そのスクリプトが実行されます。また、 最初にスクリプトを実行させる時は、-v オプションをつけて(例えば「dip -v remote」というように)起動するとデバッグが可能です。 (スクリプト中のす べてのステップを表示します) Dip は root 権限でのみ実行できます。しかし一般ユーザ権限で実行する方法 もいくつか存在します。もしその方法が知りたければ、直接質問してくださ い。問い合わせが多ければ、その方法を今後この HOWTO ドキュメントに付け 加えるかもしれません。 もし Dip がすぐにエラーで止まってしまう様ならば、# で始まるコメントを 削除してみて下さい。 3. さてこれから... もしすべてがうまく行ったなら、もうあなたの Linux システムはネットワー クに繋がっているはずです。「telnet remote」などのコマンドで確認してみ ましょう。 (前に /etc/hosts を編集した際にリモートホストの略称を付記し たのを覚えてますか?) 正しく接続されていれば、リモートホストのログイン プロンプトがでるはずです。さあ、試してみましょう!これであなたの Linux システムから telnet や ftp を使ってネットワークに接続されているどこの マシンへもアクセス出来るはずです。どんな仕掛けになってるんでしょう?あ なたの Linux システムはリモートホストをネームサーバとして使い、ネット ワークのアドレスを解釈しています。(/etc/resolv.conf で設定しましたよ ね) なにが出来て、なにが出来ないかは自分でいろいろと実験してみて下さ い。 あなたの Linux システム上では、リモートホストが持っていない機能は残念 ながら使えません。例えば、リモートホスト上で telnet が使えないなら、あ なたのシステムでも使えない可能性が高いです。なぜでしょう?それは TIA が単にリダイレクションをしているだけだからです。 3.1. News とメールについて ニュースリーダについては、SLRN というとてもシンプルで簡単に使えるもの があります。SLRN は NNTP を使うニュースリーダなので、あなたの Linux シ ステム上にニュースの配送を受けなくても使えます。(つまり Cnews や INN をインストールする必要がないということです) SLRN を使うには、NNTP サー バへのアクセスが出来なければいけませんが、大抵のプロバイダーは NNTP サーバを用意しているので心配する必要はありません。もし MS Windows用の 「WinVN」などのニュースリーダを使える状況ならば、SLRN も使えるでしょ う。SLRN はテキストベースのニュースリーダですが、カラーで使えてマウス のサポートもあり、rxvt などのウインドゥ上でも快適に使えます。まだ β 版なのですが、筆者のマシンでは現在なんの問題もなく動いています。 メールリーダに関しては、ローカルマシンがどのようなメール配送状態にあっ ても(つまり、メーラーが動作しているかどうかに関係なく)きちんと動作をす る SMTP/POP3 の良いソフトウェアを探しています。Xベースでなければいけ ない訳ではないのですが、X対応だとなお良いです。もしあなたが良いものを 知っていれば、是非メールで教えて下さい。筆者は popclient などには明る いのですが、ちょと扱いにくい気がします。だから、最低でも検索程度のこと が出来るメールリーダを探そうと思っています。 3.2. Mosaic/Netscape について Mosaic/Netscape をつかうにはもちろんXが必要です。でも、Xは ftp から バイナリを拾ってきて、圧縮を解凍してインストールすれば良いだけなので、 心配する必要はありません。 4. その他 筆者がすべて説明し終わって、まだなお質問がある場合はメールを下さい。( 筆者はメールを毎日読んでいます) この文書は定期的にアップデートされる予 定なので、ときどきチェックしてください。(バージョンナンバーを見れば アップデートされたかどうかわかると思います) あなたがいろいろ情報を寄せ てくれれば、この文書ももっと充実したものになるでしょう。だから、ためら わずにどんどん情報を寄せて下さい。 セットアップに関してもしなにかトラブルやわからない事があったら、筆者宛 にメールで質問して下さい。ただし、以下のことがらをメールに明記して下さ い。 1. 3つの/etc 以下のファイルのコピー (hosts, host.conf, resolv.conf) 2. dip -v で得られる、スクリプトの実行結果のコピー(あなたの password は消してから送って下さい。) この文書が本当に役に立っているかどうか知りたいので、たとえなにも協力で きる事がなくても、この文書通りにやって成功したら是非筆者にメールを下さ い 4.1. 参考 Sunsite とは、sunsite.unc.edu にある ftp サーバの事です。Linux 関係の ものならなんでも (FAQ や HOWTO, README ファイルなどを含む)本当に沢山あ ります。 marketplace.com は TIA の販売元で、TIA はここでしか入手出来ません。 SLRN に関してのホームサイトは、space.mit.edu の /pub/davis です。 筆者は Irish です。ネコとじゃれているか子供をあやし ている時以外は Linux に関するコメントを受け付けています。 原著(英語)は以下の場所で入手できます。 http://www.eskimo.com/~irish ftp://ftp.eskimo.com/u/i/irish ftp://sunsite.unc.edu/pub/Linux/docs/HOWTO/mini/TIA 訳者注: SLRN の日本語パッチは、 http://www.eis.or.jp/muse/kikutani/slrn.html にあるので、興味のある方は試してみてください。ただし、このURLは変更さ れている可能性があるので、存在しなかったら hgf03701@niftyserve.or.jp 氏まで問い合わせて下さい。 翻訳に関しての御意見、御質問等は sshito@daniel.drew.edu までお問い合わ せ下さい。